マガジンのカバー画像

僕もあなたも知らない国々で

7
「日々」というのは、ぼくたちが住んでいる地域、国以外でも同じようにあります。そのことを知るきっかけになる、かもしれない作品を集めていきます。
運営しているクリエイター

記事一覧

2022年2月24日

少し遅めのお昼休み。ドトールでいつものレタスドッグとコーヒーを頼んで、パーテーションで区切られた席について、Twitterのアプリを開いたら、戦争がはじまっていた。

横断歩道の信号が赤く点滅して青に変わる。また赤に変わる。松屋に吸い込まれていくサラリーマン。ウーバーイーツ。赤信号でスマホに目を落とし、青になって少し来てから歩き出すヒール。マスクとコートと陽の光。交通量調査。窓から見えるものは全然

もっとみる
オランダのレンタサイクル屋さんでシリア人の青年に会った

オランダのレンタサイクル屋さんでシリア人の青年に会った

結婚前に夫とヨーロッパを旅行したときの話。

オランダって自転車が有名ですよね。
ということで、アムステルダムでは絶対、自転車に乗ってみる!と決めていた我々。
フォンデル公園のすぐ近くにあるA-Bikeというレンタサイクル屋さんに行ってみました。

すると、店員さんはアラブ系っぽい顔立ちの方。

夫は、あんまり同郷(国としては違うけど)の人に声をかけるタイプではないんだけど、店員さんが声をかけて来

もっとみる
高校生へのお返事 / ルワンダのゴザから

高校生へのお返事 / ルワンダのゴザから

FMバナナの木陰
このマガジンは、2021年のある秋の日に、日本にお住まいの高校生との間で開催されたオンラインで旅する授業の際にみなさんからいただいた質問をもとに、カンボジアを拠点とする吉川舞とルワンダを拠点にする加藤雅子の2人がそれぞれの暮らしと、目の前にある世界についてお答えしたものです。

あの日の修学旅行の余韻をいまだに引きずって皆さんからのご質問をニヤニヤしながら眺めている大人から、余韻

もっとみる
LGBT禁止ゾーン

LGBT禁止ゾーン

1つのnote記事を教えてもらった。そこに貼られたウェブページの内容があまりにも衝撃的で、もう3時間ぐらいぼんやりしている。英語で書かれた文章で、かなり長い。ざっと目を通して呆然としたあと、今度は翻訳機能を使って日本語でじっくり読んだら、頭が砂漠になってしまった。いまもまだ乾いた砂が舞っている状態で、迷ったけれど紹介したいからここに書くことにする。

その記事はこんな書き出しで始まる。

これはポ

もっとみる
Lost in Alsace

Lost in Alsace

アイコンの謎の生き物の名前は、「きなこ」といいます。

きなこは、妻が大学生になって上京したときに、実家から連れてきたナマケモノのぬいぐるみです。妻は別の黒い猫のぬいぐるみに「佐藤君津(さとうきみつ)」という理解不能な名前を付けるぐらいなので、もはや「きなこ」の由来を尋ねようとも思いません。手のひらより少し大きく、ボサボサの毛がどこか愛らしい、とぼけた顔の小さな友人です。

きなこは、今まで2人で

もっとみる
ナイルの水を飲んだから

ナイルの水を飲んだから

「ナイルの水を飲んだ者はナイルに戻ってくる」
Once you drink from the Nile, you will come back again.

اللي يشرب من النيل لازم يرجع له تاني
読み方:イッリー・イシュラブ・ミン・ニール・ラーズィム・ヤルガア・ラフ・ターニー

エジプトには、
そんなことわざがあります。

実は、エジプトは私の初めての海外

もっとみる
行先表示のないバスに乗っていた、あの日々のこと

行先表示のないバスに乗っていた、あの日々のこと

ある朝、戦争は始まった。いつのまにか、市内を走るバスの行き先表示が、(今ならこの国のどこでも目にする)この戦争の国威発揚スローガンにとって代えられていた。私はそれを痺れた頭でぼんやりと眺め、それから目的の番号を確認してその赤い車体に乗り込んだ。砲撃が始まって、13日めの朝。

9月末の日曜日早朝、長年の係争の土地で戦争が始まった。各種メディアでは前線の様子が盛んに報じられているけれども、戦場は、実

もっとみる