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短編小説

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記事一覧

【短編小説】薬・裏

【短編小説】薬・裏

いとしくて
たいせつで

あいしているから
あいをあげたくて

きれいな花をみるたびにもっとと思う
きれいな花をさかせるには何が必要だろう

きっと気に入る肥料と
何を言う必要もないと注ぐ水
そこに織り交ぜる、愛という名の特別な薬

少しずつ変わる反応
まだ足りないみたいだ、もっと薬を増やさなくちゃ

アレ好きでしょ、見に行こう
コレ気になってるって言ってたよね

好きよ、でも今はいらないかな

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【短編小説】薬

【短編小説】薬

いとしくて
くるしくて

あいしてたくて
あいをてばなして

きれいな花をみるたびにつらくなる
きれいな花をさかせられなくてごめん

良かれと撒かれた肥料と
何も言われぬまに注がれた水
そこに混じる、愛という名の特別な薬(毒)

思う通りになれなくてごめん
だからお願いもうその薬(毒)をやめてほしいの

アレ好きでしょ、見に行こう
コレ気になってるって言ってたよね

好きよ、でも今はいらないかな

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【短編小説】思いの重さ

【短編小説】思いの重さ

いつも食べてたパン

当たり前になってたコーヒー

大事に大事に抱え持った色ちのカップを煽る

雨が降って延ばした予定

絶対その日って言ったのに

結局行けなかったんだよね

少しずつ増えてたインテリア

いつからか景色は変わらなくなった

お気に入りのペンギンがしょんぼりしてる

色ちのカップはどこに行ったんだっけ?

そうだ片方落として割れたんだった

行きたかった場所は違う建物になってた

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【短編小説】『頭の付箋紙(メモ)』(歌詞風オリジナル)

【短編小説】『頭の付箋紙(メモ)』(歌詞風オリジナル)

付箋紙オッケー?!
さあいくよ!

鳴り響くアラーム 手探りで止めて
眠い目擦って慌てて止める 起きたの偉すぎ
付箋紙の1番 完了のチェック

レンジに冷たいご飯を任せて
ポットがパチンてお湯のお知らせ
2番の朝食完璧じゃない?

なかなか慣れないスーツを着たら
鏡の前でコスメと格闘
上横下から要チェック
3番おしまいよしよし順調!

大好きな曲をお供にテンション上げつつ揺られてく
今日の付箋紙は

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初めて音声投稿をしてみます。

https://note.com/kitty_lucky_111/n/nc3e989f457cc
こちらの記事に書いた、短編小説を、朗読、というか、ボイスドラマ風に読んでみました。
今後も、他の短編小説を、朗読できたらと思っています。
読み上げるの、楽しいですね。

【短編小説】「私のこと好き?」

【短編小説】「私のこと好き?」

「私のこと好き?」

 何度も聞いてしまい、そのたびに言わなきゃよかったと後悔する言葉。
 思う通りの答えをもらえる事は殆どなくて、さらりと言われて終わってしまう。
「そりゃあね。じゃなきゃ結婚してないよ」
 そうなんでしょうね。
 でもね、そうじゃないの。
 『好き』という言葉を、あなたの口から言われたいの。
 『好きだよ』って、あなたの柔らかくて温かくて幸せなトーンで言われる言葉を、あなたが甘

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【短編小説】言の葉の本

【短編小説】言の葉の本

足元の水面に浮かぶ言の葉

色とりどりの落ち葉が撒かれてる

そこから耳ざわりの良い、好みの色のものだけを

すくい上げて自分という本に挟んでいく

こころに響くひとひらは実は沢山あるはずなのに

えり好みしているうちにどうでもいい言葉の森に紛れ込み

雑踏の沼へ消えていく

時にしおりになり

時に押し葉になる言の葉たち

積み重なったページはいつしか本となり、心の棚に好きな色が集められた、あな

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【短編小説】いつかその日まで・歌詞風オリジナル

【短編小説】いつかその日まで・歌詞風オリジナル

聞こえる声に耳をすます
耳障りのいいトーンと
気持ちのよいテンポ

誰だって好きになる
彼らはとても人気者

それだけじゃない、センスの良さ
おもいがけないアイデアが光って

スポットライトの下でキラキラ輝く彼は素敵
次の(作品)モノを楽しみなファンもキラキラしてる

いいな、素敵、いつか、いやいや

彼は彼だからそこにいる

澄まさなくたって耳にはいる
覚えてしまった声音と
妙にイラつくテンポ

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【短編小説】両片思い・歌詞風オリジナル

【短編小説】両片思い・歌詞風オリジナル

大空を快適に飛んで

雲も山も追い越してく

あなたの視線は釘付け

攫われたコを助けるため

すぐに駆け出す男の子

大変だけどそれがいいみたい

きりりとつり上がった眉も

きゅっと引き結ばれた唇も

今はあのコに注がれてる

ちらっと君の顔を横目に見て

ここにいるよってサインを送る

時々カツンってテーブルにカップを置いて

空想の世界に浸る振りしながら君を待つ

じっと見つめる文字の海

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【短編小説】小さくて大きくて・歌詞風オリジナル

【短編小説】小さくて大きくて・歌詞風オリジナル

あなたが柔らかく笑うと

冬でもほわっとあったかくなって

ふんわりと包み込んでくれていた

目を向ければいつでもそこにいて

なんにもいわずに抱きついても

すぐにぎゅっと抱きしめてくれたね

大きな手じゃなくてごめんって

いつか言われたっけ

私の方が大きいからって

少し悲しそうにしてた

でもね、そんなあなたの手がいいの

他の誰でもだめ

少し小さいあなたの手じゃなきゃ

きゅってにぎ

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青い空と白い雲と白い画面・【短編小説】歌詞風オリジナル

青い空と白い雲と白い画面・【短編小説】歌詞風オリジナル

青い空に白い雲

窓の向こうは抜けるような快晴

きっとこんな日は

かき氷を食べて頭が痛くなったり

海へ行って背中が赤くなったり

かと思ったらカフェで涼んで一休み

気持ちの良い一日を過ごしてるんだろうな

ぼんやりして

過ぎてゆく時も

夢中になって

過ぎてゆく時も

同じ時なのにこんなに違う

アイスティーを飲むぼくと

アイスカフェラテを君は頼むかな

反対だよねっていつも笑って

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【短編小説】歌詞風オリジナル・sounds

【短編小説】歌詞風オリジナル・sounds

カチコチカチコチ

頭の隅で聞こえてる

布団を抜け出し

お気に入りの色をまとって

口を動かすうちに頭が動き始める

そのうちに聞こえだす

チクタクチクタク

いつでも聞こえる微かな音

ホームに並んで

波の合間をあるきながら

今日は何をという時に一番聞こえる

カチリ、離れてくれない

ふっと息を抜いたタイミング

鼻をかすめる香りにお腹が返事

そんな時にもチクタクカチコチ

あぁ、

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【短編小説】歌詞風オリジナル・ラテとシフォンとガトーショコラ

【短編小説】歌詞風オリジナル・ラテとシフォンとガトーショコラ

ラテを一杯

それにシフォン

いつもお決まりのコース

朝一のシフトは

キライじゃない

寝ぼけ顔のあなたに会えるから

ラテが日替わりに

シフォンもなし

変わったルーティンが示すもの

夕方のシフトで

気がついた

手をつなぐ二人がそこにいた

ラテを一杯

シフォンもつけて

いつもの、にプラス赤い目元

シフトどおりなのに

見なかったあなた

任せてうんと甘いのを作るよ

大きな

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【短編小説】歌詞風オリジナル・ないてわらって

【短編小説】歌詞風オリジナル・ないてわらって

ないてわらって

鳩時計が鳴かなくなった
元気に鳴いて
鳴き声より歯車の音がうるさくて
でも愛おしいその鳴き声が聞こえない

いつからあったっけ
あなたの記念日からだね

優しくて
きびしくて
そしてとってもオシャレ

いつも突然やってくるから
会えたり会えなかったりして
会えた時には通る声で名前を呼んでくれる

名前を呼ばれる事がこんなに嬉しいんだって
幸せな気持ちを教えてくれた

鳩が鳴く度に

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