小見山和子

「2分で読める」をモットーに、短編小説やエッセイ、日記など。 気が向いたら写真も。

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「2分で読める」をモットーに、短編小説やエッセイ、日記など。 気が向いたら写真も。

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記事一覧

辺境の惑星

(な、何だこれは……)  ビリーは黄金のビリケン像を眺めて唖然としていた。 なぜなら、少しつり目でユニークな顔をしたその像が、自分にそっくりだったからだ。 上に掲…

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妖(あやかし)

短編ですが2分では読めません。 2013年の第一回『さばえ近松文学賞2013 恋話(KOIBANA)』で、佳作に選んで頂いた作品です。 関係者のみなさま、その節はありがとうござい…

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未来の生、永遠の死

「先生、私たちは生まれ変わったの。この新しい世界で、面白可笑しく生きていきましょうよ」  紅い唇に艶めいた笑みを浮かべ、女は龍之介に体を寄せた。 ***************…

7

苦しみの只中にいる人に

若かりし頃。 人生に絶望し、自分が嫌いで嫌いでどうしようもなかった。 自分をこの世から抹殺すること。 それだけが、自分が世界に対して行える、唯一の貢献だと思ってい…

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+3

2008年2月10日 雪の朝-平城宮跡

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花火と観覧車

 花火は嫌いだ。花火に限らず、夏のイベントには、なるべく関わりたくない。理由は私の二大ストレス源、「暑さ」と「人混み」でヘトヘトになってしまうから。  数える程…

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スロースターター

 あまりにも、トロくてバカな子供だった。ポヤ〜ンとして何も考えていなかった気さえする。私は3月生まれ。物心ついた頃から同級生の中で一番小さく、運動能力や知能やそ…

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幸せのモノサシ

 人が日々、幸せに暮らすためには何が必要不可欠か。 お金、健康、家族、仲間、仕事、自由になる時間、誰かと一緒に過ごす時間……どれも大切だが、絶対とは言い切れない…

16

新緑の浄瑠璃寺

13

桜とキジバト

11
+2

すじ雲3本。キングギドラみたい、と思ってしまった。

2

和傘 - 大原三千院にて

6

源光庵のススキ

9

大原 三千院

7

月虹

11

緋色に染まる

13
辺境の惑星

辺境の惑星

(な、何だこれは……)
 ビリーは黄金のビリケン像を眺めて唖然としていた。
なぜなら、少しつり目でユニークな顔をしたその像が、自分にそっくりだったからだ。
上に掲げてあるプレートの文字を見て、彼はさらに驚いた。
〝幸運の神様〟だって? バカな!

 周りの人々は彼におかまいなく、ビリケン像の足の裏を触ってキャアキャア笑ったり、神妙な顔つきでブツブツつぶやいたりしている。
彼らにはビリーの姿が見えて

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妖(あやかし)

短編ですが2分では読めません。
2013年の第一回『さばえ近松文学賞2013 恋話(KOIBANA)』で、佳作に選んで頂いた作品です。
関係者のみなさま、その節はありがとうございました!

昔々のこと。
河内の村(※)を見下ろす山の中腹に、 齢八百年とも言われる、桜の大木が あったんやと。

満開の花の頃はそりゃあ見事で、この世のものとも思えん美しさに、何やら薄気味悪ささえ、漂うせいやろうか。

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未来の生、永遠の死

未来の生、永遠の死

「先生、私たちは生まれ変わったの。この新しい世界で、面白可笑しく生きていきましょうよ」
 紅い唇に艶めいた笑みを浮かべ、女は龍之介に体を寄せた。

****************************

 1927年7月24日、芥川龍之介は死んだ。そして、2531年5月19日、彼は目覚めた。
 白い壁に囲まれた部屋はとても眩しく、龍之介は天国に来たのかと思った。ある意味、それは真実だった。
 

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苦しみの只中にいる人に

苦しみの只中にいる人に

若かりし頃。
人生に絶望し、自分が嫌いで嫌いでどうしようもなかった。

自分をこの世から抹殺すること。
それだけが、自分が世界に対して行える、唯一の貢献だと思っていた。

そんな時代を通り過ぎ、
今、とてもとても平穏に、日々の暮らしを送っている私が、
苦しみの真っ只中にいる人に、言えることがあるのなら。

生きていれば……
ただ、生きてさえ、いれば。
いつか、きっと、何とかなる。

何ともならずに

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花火と観覧車

花火と観覧車

 花火は嫌いだ。花火に限らず、夏のイベントには、なるべく関わりたくない。理由は私の二大ストレス源、「暑さ」と「人混み」でヘトヘトになってしまうから。
 数える程とは言え、男性から花火見物に誘われたこともある。が、全て即行で断った。55にもなって独り身なのは、それが原因かも知れない。

 こんな私が今日、花火を見に来たのは、80に近い母への、せめてもの親孝行だ。 
 家から車で30分ほどの場所に、大

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スロースターター

スロースターター

 あまりにも、トロくてバカな子供だった。ポヤ〜ンとして何も考えていなかった気さえする。私は3月生まれ。物心ついた頃から同級生の中で一番小さく、運動能力や知能やその他、何もかも周りより遅れていた……というのが、ささやかな言い訳だ。

 中学に入ったばかりの春。生まれて初めて子供だけで、電車に乗って隣町まで出かけることになった。小学校5・6年の時の担任は、若い男の先生で、生徒にとても人気があった。彼を

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幸せのモノサシ

幸せのモノサシ

 人が日々、幸せに暮らすためには何が必要不可欠か。
お金、健康、家族、仲間、仕事、自由になる時間、誰かと一緒に過ごす時間……どれも大切だが、絶対とは言い切れない。人によって求める「幸せの形」は違うし、そもそも「幸せ」とは主観的な観念だからだ。

 大金持ちで美人の奥さんがいて、仕事も順調、子供達はみな優等生、そんな男がいたとしても、彼が幸せかどうかは誰にも分からない。もしかしたら奥さんの浮気が心配

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