紅兎〜決意編〜楽園

『お久しぶりね、名無しさん。』

三年少し前…

小渕町町長恵三の裏切りで、愛を素兎にせざるを得なくなった頃…

あの日、彼女は私の顔を見るなり、陽気な笑みを浮かべて声を掛けてきた。

『軽信房江…いや、孫維世と呼んだ方が良いかな。』

『どちらでも、お好きな方で。私達にとって、名前も出自も、さほどの意味はないわ。同じ革命の志を抱く同士である事が大事なの。最も…ここの人達は、同士と呼び合うより、同

もっとみる

紅兎~決意編~楽園

『お久しぶりね、名無しさん。』

三年少し前…

小渕町町長恵三の裏切りで、愛を素兎にせざるを得なくなった頃…

あの日、彼女は私の顔を見るなり、陽気な笑みを浮かべて声を掛けてきた。

『軽信房江…いや、孫維世と呼んだ方が良いかな。』

『どちらでも、お好きな方で。私達にとって、名前も出自も、さほどの意味はないわ。同じ革命の志を抱く同士である事が大事なの。最も…ここの人達は、同士と呼び合うより、同

もっとみる

母子草の賦(連載第9回)

幼い姫がお家再興を目指す和風ファンタジーです。ヤングアダルト向けっぽい感じでしょうか。今回で完結いたしました。〈全文無料公開〉

   第七章  神殿  
      1
 勘吾が亡くなってから二日間、楓はずっと泣き続けていた。
 もちろん女子でも武士の子、城主の姫として楓も幼い時から、人前で泣くものではないと教えられて育ってきている。
 だが、勘吾は楓をかばって死んだのだ。それはどんなに言葉を取

もっとみる
ありがとうございます!あなたの「スキ」が励みになります!
5

紅兎〜決意編〜掛声

社裏手の片隅に、小さな祠がある。何を祀る為に建てられたか、誰も知らない。 

社の伝承にも、何も記されてはいない。

そもそも…

忘れ去られた、この祠の存在も、殆ど知るものはいないのだ。

前の宮司と神職者達も、知らなかった。いや、何となく目にはしていたかも知れないが、関心がなかった為に、存在を認知してなかったのかも知れない。

白兎達も、祠の事を知らなかった。

知っているのは、黒兎達だけであ

もっとみる

紅兎〜決意編〜掛声

社裏手の片隅に、小さな祠がある。何を祀る為に建てられたか、誰も知らない。

社の伝承にも、何も記されてはいない。

そもそも…

忘れ去られた、この祠の存在も、殆ど知るものはいないのだ。

前の宮司と神職者達も、知らなかった。いや、何となく目にはしていたかも知れないが、関心がなかった為に、存在を認知してなかったのかも知れない。

白兎達も、祠の事を知らなかった。

知っているのは、黒兎達だけであっ

もっとみる

異世界冒険記 SENGOKU!

『異世界』

俺達の住む世界とは違った文化、生態系をもつ別の次元。死んで生まれ変わった際に元の世界ではなく、異世界で生まれ変わることを『異世界転生』と呼ばれる。

そう、俺もその『異世界転生者』になっちまったようだ。タカワラの領主の第三子として生まれ変わった「タカワラ・ヨシザネ」であるおれは13の生誕日に唐突に前世の記憶を思い出した。

...エッ?なんか名前が日本人ぽいって?

そうなんだ、俺の

もっとみる
アリガトゴザイマス!
4

おまえによく似た獣の名

前 目次


〈生生世世・歌方永久〉
と或る朝



 心の臓が鳴っている。
 薄ら目を開けたのは、おのが主に名を呼ばれた気がしたためであった。其の声に返事をしようとした唇はしかして動かず、端の方から小さなあぶくが漏れるのみ。少しばかり視線を動かしてみれば、大きく穴の空いた自身の左胸から赤黒い靄が揺蕩うように上っていった。目を瞑る。思うほど、死はにおいを感じさせないものであった。濁った水の中で

もっとみる