認知機能よ、さようなら
最近、認知機能の低下が著しく進んでいる。
特に記憶に関しては、驚くほどに脳内アクセスが出来なくなった。
一昨年まで、サクサクこなせていたことができない。
ゆるやかな絶望すら感じている。
それで、認知機能の低下と双極性障害の関連性について調べた。
以前、双極性障害は、「うつ病エピソード」と「躁病エピソード」の時期は大変だったが、その合間の「通常気分モード」の時期は、病気の無い人となんら変わらない病気と考えられていた。
しかし、現在では通常気分(ニュートラル)の時期にも認知機能障害が残存し、それによる困難は気分症状が残ることよりも、日常の生活機能や社会機能への影響が大きいとされている。
躁うつ人よ、思い当たることはないだろうか?
気分は落ち着いていて、落ち込みも高揚感も無いのに、なぜか病気以前の自分と比べて、
「考えがスムーズにまとまらない」
「日常の活動や仕事の作業がうまく行えない」
などと。
それには、認知機能障害が影響しているのかもしれない。
私はそう思っている一人だ。
✔認知機能とは
「認知機能」とは、記憶、思考、理解、計算、学習、言語、判断などの様々な知的な能力のことを指す。
私たちは普段意識していないが、これらの認知機能を駆使して、物事を考え、状況を判断し、適切な行動をとることができる。
また、認知機能障害と聞くと、「認知症」を思い浮かべる方が多いと思うが、認知機能が損なわれる精神疾患は多数ある。
先天的には「自閉スペクトラム症」「知的能力障害」、頭部の外傷などによる「高次脳機能障害」、精神疾患では「統合失調症」「不安障害」「うつ病」そして「双極性障害」が代表的な病気である。
✔双極性障害の認知機能障害の特徴は?
双極性障害では、記憶、注意、処理速度、実行機能の低下が主に見られる認知機能障害である。
中でも、記憶と実行機能は仕事における能力に大きく影響する。
ある病院で双極性障害の患者を、認知機能障害の強い方から3グループに分けると以下のような割合になったとされる。
12〜40%の患者・・・いくつかの認知機能にわたる全体的な認知機能障害がある
29〜40%の患者・・・注意と精神運動速度がとくに障害されている
(※精神運動速度の障害:明らかな運動障害が無いのに、課題で反応に時間がかかる)
32〜48%の患者・・・正常と比べて比較的認知機能が維持されている
参考:臨床精神薬理 vol.22,No.1 Jan. 2019
✔双極性障害の認知機能障害
① 認知機能障害は初回の躁病エピソード時から認める
② 病気にかかっているトータルの期間が長いほど、年齢が上なほど、認知機能障害は大きい
③ 躁病エピソードを繰り返すと次第に悪化し、躁病エピソードの回数が多いほど認知機能障害は大きい
④ 同じ気分症状であれば、認知機能障害がより強い患者さんの方が、生活の質が低く、ストレスを感じやすく、仕事上の能力も低下する
参考:臨床精神薬理 vol.22,No.1 Jan. 2019
記事の序盤にも書いたが、病相の繰り返しが認知機能には悪影響で、躁病エピソードの回数がうつ病エピソードの回数よりも認知機能に影響するようだ。
やはり、軽躁・躁状態への移行を安易に望まず、しっかり気分変動の兆候をつかみ対処行動をとるほうが大事だ。(個人的にラミクタールの微増によって軽躁状態になることは少なくなった)
✔認知機能障害の回復は可能なのか?
さて、すでに通常気分モードの時期にも認知機能障害を感じている方は、その回復が可能かどうか、気になるところだろう。
残念ながら、現時点で双極性障害の認知機能障害に効果があり、実際の診察の場面で使える治療法は確立していないようだ。
いくつかの薬物と心理学的介入が有望視されており、その研究が進められている段階とあった。
治療法が確立するのを待たず実践できることは、認知症の予防・進行対策と同様に、十分な睡眠を取ることと、定期的に運動をすることくらいだ。
これらは当事者として、また一般論として至極当然のことであり、なにも認知症に限ったことではない。
結局のところ、ただただ認知機能が下がり続けることを受け入れていくしかない、ということだ。
双極性障害の認知機能障害として起こる「記憶障害」は、病気以前の過去にさかのぼって記憶がすっかり無くなるといった性質のものではない。
病気にかかった後の、情報を頭に書きこむ力・それを保持する力・思い出す力が落ちているというものだ。
なので、仕事の作業能率や家事能力などに影響が出る。
正直、自分の記憶障害の原因は分からない。
ただ、現在できることは、記憶が無いことにフォーカスし過ぎず、
「今のままで十分」
と、受け入れることだけだ。
✔大先生マダオとは
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