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[書評] フルフォード氏の近著
フルフォード氏の近著(2024)
2024年3月時点の地政学的分析
毎週フルフォード氏の英文による地政学レポート(Weekly Geo-Political News and Analysis)を読んでいる人でも、世界各地の個別事象の背後にある事情や日本との関りなどについては、足をとめてじっくり考える時間がないかもしれない。本書はそういう人のためにも、考察の糧を与える書といえる。
個々の事象を
[書評] 歌わないキビタキ
梨木香歩『歌わないキビタキ 山庭の自然誌』(毎日新聞出版、2023)
自然観察に共感しつつも人事観察には諸手を挙げかねる
2020年6月から2023年3月にかけて書かれた最新エッセイ集。
梨木香歩は小説とエッセイとでは違う反応を読者から引出しかねない。小説の愛読者ではあっても、エッセイには反感を覚えることがあり得る。
小説は、小説というフィクショナルな時空を拵え、読者もそういうものとして読
[書評] ライロニア国物語
レシェク・コワコフスキ『ライロニア国物語』(国書刊行会、1995)
ポーランドの哲学者による奇想天外な短篇集
ポーランドの哲学者/作家レシェク・コワコフスキの短篇集(1963)。
原題は '13 bajek z królestwa Lailonii dla dużych i małych'(大人と子供のための13のおとぎ話)。1989年に英訳が 'Tales from the Kingdom
[書評] 超訳 古事記
鎌田東二『超訳 古事記』(ミシマ社、2009)
古事記を口承の物語として記憶にとどめる
これほど記憶に残る古事記は初めてだ。
もともと口承の物語だった古事記を宗教学者が語り直し、それを編集者が文字起こしし、整えてできたのが本書だ。記憶の中から語り、それを聞いた人が書きとめるという、古事記成立と同じプロセスを現代においてやったわけだ。
そういう本書だから、読む/聴く人の記憶に残るのは当然と言
[書評] 魔法の言葉88
矢作直樹『魔法の言葉88』(ワニブックス、2022)
猫のように自分軸を持って生きる
と、言われても、やや困る。よくわからない。
著者はさっそく助け舟をだす。
〈泰然自若として空を見上げている猫の姿〉を思い浮かべてもらえばいいと。
こんな感じか。(下)
「自分軸」に近いところにいるときの自分が自分らしさということだという。
そのときに大事なのは、〈自分にも周りにも感謝を持って眺めた「
[書評] 文藝春秋 2024年4月号
「文藝春秋」2024年4月号(文藝春秋、2024)
峯澤典子「仲見世」を読む
詩誌でなく、めずらしく総合誌に掲載された峯澤典子氏の詩「仲見世」をまず読む(89頁)。
氏にしては短い10行の詩だが、他の人のエセーの頁の真ん中に挿入される形だから10行以内というような制限があるのだろう。
詩は次のように始まる。
花の雑踏で 別れ
ふたたびめぐる はるのはじめの仲見世で
なごりの ゆき か 花
[書評] 世界を統べる者
矢作 直樹、宮澤 信一『世界を統べる者——「日米同盟」とはどれほど固い絆なのか?』(ワニブックス、2022)
エネルギーと食糧は極論すれば日本はやがて自立できる
日米安保の背後にあるMSA協定(Mutual Security Act)について知りたい人にはおそらく必読書。(誤植をもう少し減らせば)日本人の必読書にもなり得る書。
矢作直樹(東京大学名誉教授)と宮澤信一(国際実務家)の両氏が戦後
[書評] 自分を休ませる練習
矢作直樹『自分を休ませる練習』(文響社、2017)
マインドフルネスは中今そのもの
一見、外国産にみえる「マインドフルネス」は、〈ずっと昔から日本人がやってきていたこと〉と著者は述べる。それを表す言葉が神道でいう「中今」であると。
「中今」は〈今を生き切ることこそ大切という意味を持つ言葉〉だが、〈マインドフルネスは中今そのもの〉であると著者は言う。
「マインドフルネス」は新しいことでなく、