沢田眉香子

編集・著述業。[エルマガジン]編集長を経てフリー。『京都うつわさんぽ』(光村推古書院)…

沢田眉香子

編集・著述業。[エルマガジン]編集長を経てフリー。『京都うつわさんぽ』(光村推古書院)、『バイリンガル茶の湯BOOK』(淡交社)他。『世界に教えたい日本のごはんWASHOKU』(淡交社)でグルマン世界料理本グランプリ受賞。京都新聞美術展評、NHK関西ラジオワイド「アート情報」担当

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記事一覧

そう来たか!の衝撃が走った、「シン 東洋陶磁」展

陶芸の話を振ると「やきものって解んないんですー」と逃げようとする人がほとんどだ。逆に「李朝がわかる女になりたいんです」と意識の異様に高い女性も少数いるが。 両方…

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村上隆を「嫌い」と言うことで、「良きアートファン」の顔する人が多いのが問題じゃね?

村上隆のことを「嫌い」「俺は認めない」などと言っておけば、アートがわかったような、「良識ある」アート好きであるかのような格好がつく、そんな空気はある。 私も漫然…

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「伝統」がしんどい

「縮小社会の文化創造」(思文閣出版 山田奨治編)に寄稿したコラムを加筆。日文研の同研究会に参加(ぶっちゃけお邪魔)させていただきました。 「伝統工芸品を使いまし…

沢田眉香子
3週間前
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さくらいともか展「はりこのほとけ」の、厳粛さとユーモア

京都新聞2024年3月30日掲載 郷土玩具でおなじみの張子人形は、粘土などでつくった型に紙を貼り付けて固め、割って中の型を抜いて着色してつくる。軽くて中身は空っぽ。「…

沢田眉香子
1か月前
2

The World of Kyoto-Sushi, Where Pre-Nigiri Traditions Live On

Have you ever heard of the "edible craft" of sushi called "kyo-sushi(Kyoto sushi)" ? "Izuju" is located under the stone steps of Yasaka Shrine in Gion, Kyoto. …

沢田眉香子
1か月前
2

「京都」が生き続けている小宇宙、京寿司

何度書いても書き足りないね、京寿司のことは。 「外資系」(京都では、東京資本のこともこう呼ぶ)に住、食環境をアミューズメントパークにされて、ヘトヘトな京都だが、…

沢田眉香子
1か月前
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MtK「旅と夢」展。旅情なき「遠くへ行きたい」

京都新聞 2024年3月9日掲載 小さなモニタにうつる映像。そこに鳥が横切ると、センサーが反応し、レトロなおもちゃのピアノが鳴る。サウンド・アーティスト、すずえりの作…

沢田眉香子
1か月前
2

「出してくれ」と暴れる物語を心のクローゼットから命がけで世に出してきた。ゲイの文化継承を綴る6時間の舞台『インヘリタンス…

80年代以降の現代アメリカのゲイたちとその社会を描いた群像劇「インヘリタンス」を見る。 一部、二部で上演時間は6時間半。それでも、もっとみていたいと感じるほど中身…

沢田眉香子
2か月前
8

登録100万人のYouTuber、りおなちゃんは、実写版:奈良美智の女の子みたいだ

「ワタシのこと、お前っていうのやめてよ」。 お父さんをこき下ろす言動が話題の、6歳のユーチューバー、りおなちゃん。チャンネル登録者が100万人を超える大人気だ。 勧…

沢田眉香子
2か月前
3

おじさん向けに、忖度ないアートフェアの記事を書く

JBpressに、アートフェア東京、ディレクターの北島輝一さんから伺った「アートと金(投資)」の話を寄稿。さすがに元金融マン「アートフェア=株式市場」という見立てが明…

沢田眉香子
2か月前
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海外で、日本の若手の抽象画がキテるとか

京都新聞 2024年2月17日掲載 2月は芸術系大学の卒業制作展、3月は「アーティスツフェア京都」が開催され、若手作家にスポットが当たる。この時期にあわせて、抽象画を手…

沢田眉香子
2か月前
6

作品か、製品か、創造か、産業か。その全てである「陶」に歩み寄る梅津庸一展「ひげさん」。

京都新聞 2024年1月27日掲載  美術家の梅津庸一と信楽の丸倍製陶所の神崎倍充の2 人展。梅津の作品は、混沌とした色彩の絵画と、それを立体化した遊具のような陶オブジ…

沢田眉香子
3か月前
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ミルクマン斉藤さんと、試写室でふたりウケした映画、『フェティッシュ』

情報誌時代にすんごくお世話になった、ミルクマン斉藤さん(斉の字、なんども間違ってすいませんでした)が急逝された。 いつもにこやかで面白い方でしたが、映画にぶさい…

沢田眉香子
4か月前
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「ミニマル美術」展で、シンプルでいられない世界のことを考えた

京都新聞 2023年12月23日朝刊に掲載 ミニマルアートとは、幾何学的なパターンや素材の物質性をシンプルに際立たせて、説明や主観的な感情をそぎ落とした表現。1960年代後…

沢田眉香子
4か月前
8

バングラで聞いた「10年後、僕が日本を助けます」を、ラグジュアリーホテルで思い出した

新しくオープンしたラグジュアリーホテルにご招待を受けた。 チェックインしようとしたらフロントデスクにはインド映画に出てきそうな髭のダンディ、部屋の案内をしてくれ…

沢田眉香子
5か月前
6

「アートか工芸か」なんて悩んでいた陶芸。忘れていたのは、「無用の好奇心」だ

京セラギャラリー「無用の好奇心」展 京都新聞 2023年12月2日掲載原稿をリライト 釉薬が流れ散り不規則な凹凸をつけられたタイル、陶土で描いた絵、ランダムな柄が描かれ…

沢田眉香子
5か月前
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そう来たか!の衝撃が走った、「シン 東洋陶磁」展

そう来たか!の衝撃が走った、「シン 東洋陶磁」展

陶芸の話を振ると「やきものって解んないんですー」と逃げようとする人がほとんどだ。逆に「李朝がわかる女になりたいんです」と意識の異様に高い女性も少数いるが。
両方のやきもの反応について、必ずおすすめしていることがある。「大阪市立東洋陶磁美術館に行くしかないでしょう」

20年前にうつわの記事を書くことになり、勉強のためにワタシがまず取った行動が、ここの会員になって、時間を見つけて通うことだった。誰か

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村上隆を「嫌い」と言うことで、「良きアートファン」の顔する人が多いのが問題じゃね?

村上隆を「嫌い」と言うことで、「良きアートファン」の顔する人が多いのが問題じゃね?

村上隆のことを「嫌い」「俺は認めない」などと言っておけば、アートがわかったような、「良識ある」アート好きであるかのような格好がつく、そんな空気はある。
私も漫然とその空気の中にいた。

自分の展覧会の開会挨拶でカネの話に終始する、そして「ワタシは世界で評価されているのに、日本では嫌われている」と、面白くないネタを繰り返す村上さんも村上さんだが、ワタシには、村上さんにそう言わせている「空気」の方が大

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「伝統」がしんどい

「伝統」がしんどい

「縮小社会の文化創造」(思文閣出版 山田奨治編)に寄稿したコラムを加筆。日文研の同研究会に参加(ぶっちゃけお邪魔)させていただきました。

「伝統工芸品を使いましょう」という「お願い」

二〇二二年一〇月十九日の日経新聞の記事に、「伝統的工芸品産業振興議員連盟」が全国の二百品目以上を伝統的工芸品に指定し、展示や販促などを後押ししてゆくとあった。議連の会長の逢沢一郎氏は「各省庁に向けて、海外に行くと

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さくらいともか展「はりこのほとけ」の、厳粛さとユーモア

さくらいともか展「はりこのほとけ」の、厳粛さとユーモア

京都新聞2024年3月30日掲載

郷土玩具でおなじみの張子人形は、粘土などでつくった型に紙を貼り付けて固め、割って中の型を抜いて着色してつくる。軽くて中身は空っぽ。「張子の虎」は、見掛け倒しのたとえでもある。

さくらいともかの展覧会「はりこのほとけ」に並ぶのは、持仏のような小さなサイズのものや、顔や頭部がない不完全な姿、欠けた部分の像。のっぺりとして衣紋も単純化され、印を結んだ手は、緊張感より

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The World of Kyoto-Sushi, Where Pre-Nigiri Traditions Live On

The World of Kyoto-Sushi, Where Pre-Nigiri Traditions Live On

Have you ever heard of the "edible craft" of sushi called "kyo-sushi(Kyoto sushi)" ?

"Izuju" is located under the stone steps of Yasaka Shrine in Gion, Kyoto. As soon as the restaurant opens, custome

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「京都」が生き続けている小宇宙、京寿司

「京都」が生き続けている小宇宙、京寿司

何度書いても書き足りないね、京寿司のことは。
「外資系」(京都では、東京資本のこともこう呼ぶ)に住、食環境をアミューズメントパークにされて、ヘトヘトな京都だが、京寿司には、折り詰めというタイムカプセルに護られた「ちょっと前の京都」がある。

ひとつひとつのネタに注がれる、気の遠くなるような細やかな手間。映えより滋味を最優先する料理であり、派手さのないルックスと味ながら、手間は省けないので、お値段は

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MtK「旅と夢」展。旅情なき「遠くへ行きたい」

MtK「旅と夢」展。旅情なき「遠くへ行きたい」

京都新聞 2024年3月9日掲載
小さなモニタにうつる映像。そこに鳥が横切ると、センサーが反応し、レトロなおもちゃのピアノが鳴る。サウンド・アーティスト、すずえりの作品だ。時空を超え、メディアと現実の間をまたいでインタラクションが生じ、懐かしい音が響く。

大和田俊は、石灰石にクエン酸を染み込ませ、鉱物が溶ける音を増幅させ、いま我々が立つ大地とそれが結晶した時間を音として感じさせる。小林椋は、SF

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「出してくれ」と暴れる物語を心のクローゼットから命がけで世に出してきた。ゲイの文化継承を綴る6時間の舞台『インヘリタンス』

「出してくれ」と暴れる物語を心のクローゼットから命がけで世に出してきた。ゲイの文化継承を綴る6時間の舞台『インヘリタンス』

80年代以降の現代アメリカのゲイたちとその社会を描いた群像劇「インヘリタンス」を見る。

一部、二部で上演時間は6時間半。それでも、もっとみていたいと感じるほど中身の濃い脚本であった。
軸となっているのは、3世代のゲイの作家、劇作家たちが葛藤してきた「自身のセクシャリティをどう物語るのか」。

自己防衛のためにクローゼットに隠れることを余儀なくされていた世代と、エイズ禍、ゲイリブの時代を経て、さま

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登録100万人のYouTuber、りおなちゃんは、実写版:奈良美智の女の子みたいだ

登録100万人のYouTuber、りおなちゃんは、実写版:奈良美智の女の子みたいだ

「ワタシのこと、お前っていうのやめてよ」。

お父さんをこき下ろす言動が話題の、6歳のユーチューバー、りおなちゃん。チャンネル登録者が100万人を超える大人気だ。
勧められて見てみたら、なんか見覚えが、、、どこでお見かけしましたっけ?と思ったら、奈良美智の絵ではないですか。

奈良さんの絵の女の子の多くは、下ぶくれの赤ちゃん顔で、不機嫌な表情をしている。いろんな解釈はできるが、か弱い者の声がスルー

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おじさん向けに、忖度ないアートフェアの記事を書く

おじさん向けに、忖度ないアートフェアの記事を書く

JBpressに、アートフェア東京、ディレクターの北島輝一さんから伺った「アートと金(投資)」の話を寄稿。さすがに元金融マン「アートフェア=株式市場」という見立てが明快。アートフェアってなんやねん? な人の目からウロコが落ちるといいな。
北島さんには以前にクオリティ誌(笑)で取材させていただいたのだが、一般誌に掲載されるアート記事って、知的(風)シュガーコートと幻想盛りがデフォルトゆえ、肝心の「眼

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海外で、日本の若手の抽象画がキテるとか

海外で、日本の若手の抽象画がキテるとか

京都新聞 2024年2月17日掲載

2月は芸術系大学の卒業制作展、3月は「アーティスツフェア京都」が開催され、若手作家にスポットが当たる。この時期にあわせて、抽象画を手がける3人の展覧会が開催されている。

竹林玲香(1998年生まれ)の作品は、灰色がかったブルー、ピンク、薄紫のグラデーションの上に線描がリズミカルに描かれる。黄色いドットに覆われた作品もある。陶のような異素材もペインティングの素

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作品か、製品か、創造か、産業か。その全てである「陶」に歩み寄る梅津庸一展「ひげさん」。

作品か、製品か、創造か、産業か。その全てである「陶」に歩み寄る梅津庸一展「ひげさん」。

京都新聞 2024年1月27日掲載

 美術家の梅津庸一と信楽の丸倍製陶所の神崎倍充の2 人展。梅津の作品は、混沌とした色彩の絵画と、それを立体化した遊具のような陶オブジェ。神崎は自社製品の傘立てや花器を出品。陶の「作品」と「製品」が並ぶ違和感に戸惑った。

梅津は日本のアートを問う評論活動も行っており、今展は2021年から神崎の製陶所を借りて作陶する中で立てた論点にもとづいている。展覧会タイトル

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ミルクマン斉藤さんと、試写室でふたりウケした映画、『フェティッシュ』

ミルクマン斉藤さんと、試写室でふたりウケした映画、『フェティッシュ』

情報誌時代にすんごくお世話になった、ミルクマン斉藤さん(斉の字、なんども間違ってすいませんでした)が急逝された。
いつもにこやかで面白い方でしたが、映画にぶさいくなヒロインが出てる時だけは、目が三角になって怒ってらした(笑)。

実は、ミルクマンさんとは、映画評論家としての活動のはるか以前に(そしてワタシは高校生時代に)、同じ場所に何度もいたことがある。「オルフェの袋小路」という映画サークルが主催

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「ミニマル美術」展で、シンプルでいられない世界のことを考えた

「ミニマル美術」展で、シンプルでいられない世界のことを考えた

京都新聞 2023年12月23日朝刊に掲載

ミニマルアートとは、幾何学的なパターンや素材の物質性をシンプルに際立たせて、説明や主観的な感情をそぎ落とした表現。1960年代後半に、アートのトレンドとなった。このグループ展では、コンセプチュアルな作品を制作する若手作家が、ミニマルアートのスタイルを借りて競作する。

木のフレーム、電気ストーブの形をした光のオブジェは松井沙都子、オブラートにシルクスク

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バングラで聞いた「10年後、僕が日本を助けます」を、ラグジュアリーホテルで思い出した

バングラで聞いた「10年後、僕が日本を助けます」を、ラグジュアリーホテルで思い出した

新しくオープンしたラグジュアリーホテルにご招待を受けた。
チェックインしようとしたらフロントデスクにはインド映画に出てきそうな髭のダンディ、部屋の案内をしてくれたのは、チャイナドレスやアオザイが似合いそうなアジア系の若い女性ではないですか。客室のシンプルで広々したデザインもあいまって、日本のホテルにいる感じがしない。
いやはや日本の人手不足、ここまできたかと驚いた。

しかし、改めて驚いたのが、そ

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「アートか工芸か」なんて悩んでいた陶芸。忘れていたのは、「無用の好奇心」だ

「アートか工芸か」なんて悩んでいた陶芸。忘れていたのは、「無用の好奇心」だ

京セラギャラリー「無用の好奇心」展
京都新聞 2023年12月2日掲載原稿をリライト

釉薬が流れ散り不規則な凹凸をつけられたタイル、陶土で描いた絵、ランダムな柄が描かれたコンプラ瓶(江戸時代の輸出用の醤油瓶)など、一見して陶芸家の作品でなさそうなやきもの。京都芸術大学「表現研究」の成果作品だ。

陶芸家の福本双紅が総合ディレクターをつとめ、異なる領域の学生たちが初めて陶芸を体験。作家である指導教

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