水草律子

思木町6‐17‐4

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名無しの夏子さんの存在について

名無しの夏子さんという存在について、話したいと思う。 「名無しの夏子さん」「くねくねとした直線」「透明な木の板」「黄色い赤緑」 こういったものを言い表せら…

水草律子
4年前
20

端書

不思議と記憶に残っている風景や情景というものがある。思い出す――というよりも、ふと、あちらから、こちらの方にやってくるような景色だ。その情景が頭に浮かぶとき…

水草律子
4年前
40

思木町6‐17‐4(12終)

  北向き、予見  自分が、香の甘い匂いを嗅いでいることに気が付くと、わたしは目を覚ました。ぼんやり左側の壁にくり抜かれた窓を見ると、まだ光が差している。東側の…

水草律子
4年前
21

ノーミソにひっかかるた(16)

せセロハンのせせらぎ す硯鈴なり 京京よさらば これにておしまい

水草律子
4年前
20

ノーミソにひっかかるた(15)

ゑ絵に書いた絵手紙 ひ百一個めの火鉢 も最寄りのモノリス *

水草律子
4年前
11

ノーミソにひっかかるた(14)

めメダカの目隠し みみんなイルカ し支離滅裂なシシカバブ * イルカが空を飛ぶとき、すべての垣根は取り払われる。

水草律子
4年前
10

車窓

私の人生が、些細ではあるが、ある時を境に変わってしまって、二度と元に戻らなくなった、その出来事を書いて置こうと思う。 今はもう七年も昔になるがその日、私は大…

水草律子
4年前
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ノーミソにひっかかるた(13)

さ殺風景なサイダー き木樹こもごも (喬木灌木曲直交じりあう様) ゆゆくりなく行く春

水草律子
4年前
5

ノーミソにひっかかるた(12)

え柄の無いえのき て手鞠天道虫 あアリスズ・アドヴェンチャーズ・アンダーグラウンド

水草律子
4年前
3

ノーミソにひっかかるた(11)

けケンタウロース ふ吹き寄せる風船 ここごみの言葉 *

水草律子
4年前
3

ノーミソにひっかかるた(10)

く苦しいクロール (水の上を這う) ややんごとなき守宮 ままったりマッシュルーム * イルカとまではいかないけれど、泳ぐことが出来て良かったなあと思う。 み…

水草律子
4年前
4

ノーミソにひっかかるた(9)

ゐゐのししゐるか (いなかにいるか) ののっけからのしもち お大きいお米粒 (蟻の眼) * まるいのが「ゐ」で、尖っているのが「い」? 「いたち」の「い」がど…

水草律子
4年前
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ノーミソにひっかかるた(8)

ら欄間に咲いた一輪の蘭 むムカデむずむず武者震い う浮き世の外郎 * 皆さんの頭に浮かぶのは、どんな外郎か。

水草律子
4年前
2

ノーミソにひっかかるた(7)改訂

つつくりおきのつま先 ね寝鼠寝猫 (平和・安穏) な名無しの夏子さん * 初めに掲載した「つ」が少し理屈っぽく、読点があるのも気になるので、改訂します。こちら…

水草律子
4年前
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思木町6‐17‐4(11)

  北向き、ファウル・トラベリング  屑葉の上で目を覚ますと、まだ辺りは暗かった。朝になっていないのだろうかと、毛皮に包まれたまま考えていると、雨の音がしていた…

水草律子
4年前
6

「死者の書」読み方指南

漫画化もされている、折口信夫の短編小説「死者の書」について話します。 「死者の書」作:折口信夫 「死者の書」漫画:近藤ようこ まずは本記事の題名を。読み方…

水草律子
4年前
11

名無しの夏子さんの存在について

名無しの夏子さんという存在について、話したいと思う。

「名無しの夏子さん」「くねくねとした直線」「透明な木の板」「黄色い赤緑」

こういったものを言い表せられるのが、言葉の強さであり、また脆さでもあるだろう。それがどれだけ矛盾を含み、実存を許されないものだとしても、書き記し、言い切ることが出来る。

勿論それらの言葉に身は無く、実感は湧かないのだから、心無いものと言えるかもしれな

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端書

不思議と記憶に残っている風景や情景というものがある。思い出す――というよりも、ふと、あちらから、こちらの方にやってくるような景色だ。その情景が頭に浮かぶときはいつも、うっとりするような、まるでわたしが今もまだそこに居るような気持がする。
 そういった風景は、鮮烈で、人生の中の特別な出来事――というわけでは必ずしもない。そういう記憶はこちらから、意味を辿って思い出せるだろう。その場面を言葉に

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思木町6‐17‐4(12終)

  北向き、予見

 自分が、香の甘い匂いを嗅いでいることに気が付くと、わたしは目を覚ました。ぼんやり左側の壁にくり抜かれた窓を見ると、まだ光が差している。東側の壁――うとうととしていたのは、それほど長い時間ではなかったらしい。
 わたしはもたれかかっている脇息から肘を離し、座り直した。ショウジンたちが外の木を切り、わたしのために新しく作ってくれたこの脇息は、頬杖をつくのにも、体を寄り掛からせるの

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ノーミソにひっかかるた(14)

ノーミソにひっかかるた(14)

めメダカの目隠し

みみんなイルカ

し支離滅裂なシシカバブ



イルカが空を飛ぶとき、すべての垣根は取り払われる。

車窓

私の人生が、些細ではあるが、ある時を境に変わってしまって、二度と元に戻らなくなった、その出来事を書いて置こうと思う。
今はもう七年も昔になるがその日、私は大多数の人がそうするのと同じく、列車に乗って、会社から家に帰るところだった。ロングシートに座っている私の右斜め前に、三十前後の女が立っていた。私は二つ、訝しんだ。一つ、私はその日、体をずらすのも億劫で、左端から二番目の席に座り、両隣が空い

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ノーミソにひっかかるた(10)

ノーミソにひっかかるた(10)

く苦しいクロール
(水の上を這う)

ややんごとなき守宮

ままったりマッシュルーム



イルカとまではいかないけれど、泳ぐことが出来て良かったなあと思う。

みんなのフォトギャラリーから、Blue Watersさんの画像を使わせていただいた。アドリアナ ヴァレジョンを思い出した。画集は持っているが、2007年の原美術館の展覧会を見れなかったのは残念だ。

ノーミソにひっかかるた(9)

ノーミソにひっかかるた(9)

ゐゐのししゐるか
(いなかにいるか)

ののっけからのしもち

お大きいお米粒
(蟻の眼)



まるいのが「ゐ」で、尖っているのが「い」?

「いたち」の「い」がどちらなのか知りたい。

ノーミソにひっかかるた(8)

ノーミソにひっかかるた(8)

ら欄間に咲いた一輪の蘭

むムカデむずむず武者震い

う浮き世の外郎



皆さんの頭に浮かぶのは、どんな外郎か。

ノーミソにひっかかるた(7)改訂

ノーミソにひっかかるた(7)改訂

つつくりおきのつま先

ね寝鼠寝猫
(平和・安穏)

な名無しの夏子さん



初めに掲載した「つ」が少し理屈っぽく、読点があるのも気になるので、改訂します。こちらの方がよりノーミソにひっかかるのではないかと。

思木町6‐17‐4(11)

  北向き、ファウル・トラベリング

 屑葉の上で目を覚ますと、まだ辺りは暗かった。朝になっていないのだろうかと、毛皮に包まれたまま考えていると、雨の音がしていた。横になったままウロのなかを眺めていると、蔦や蔓の輪郭がぼんやりと浮かんできた。わたしは窓の方を見た。雨が降り続けているが、夜は明けたらしい。寝返りを打って出入口の方を見ると、セレンが横になっていた。毛布がたゆたい、規則正しく呼吸をしてい

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「死者の書」読み方指南

「死者の書」読み方指南

漫画化もされている、折口信夫の短編小説「死者の書」について話します。

「死者の書」作:折口信夫

「死者の書」漫画:近藤ようこ

まずは本記事の題名を。読み方指南なんて、おもいっきり上段に構えましたが、竹刀は持っていません。おまけに胴を着けるのも面倒くさく、小手ぐらいははめているでしょうか。そんな適当な状態で、いったい何がしたいのかというと、わたしが歴史の知識も特になく、古典にもさほど

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