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隠者の食卓 ヒメジョオンとハルジオンで鶏の水炊きを作る 【週末隠者】
雪解けの始まりからゴールデンウィーク前後にかけての時期、北海道の野山は山菜採りのピークを迎えます。フキノトウから始まり、ギョウジャニンニク、コゴミ(クサソテツ)、タラの芽、ウド、もう少し遅い時期であれば根曲がり竹(チシマザサ)のタケノコといった山菜を目当てに多くの人が山に入り、時にはそういう人たちからお裾分けにあずかることもあります。
北海道で山菜採りの文化が強く根付いている理由はいくつか考え
隠者の竈(かまど) ロケットストーブ製作記(実践編) 【週末隠者】
ロケットストーブ付きの竈は完成しました。道具も(自作や代用品も含め)一通り揃いました。とりあえず準備は完了です。
※ロケットストーブの原理についてはこちら
※竈の作成と必要な道具についてはこちら
ただ、私の庵の周囲はキャンプ場や住宅街のような管理されたスペースではありません。竈そのものは家の横の開けた場所にあり、周囲は溝で囲まれていて火も燃え広がりにくいとはいえ、少し離れればそこはもう雑
隠者の竈(かまど) ロケットストーブ製作記(製作編) 【週末隠者】
前回は「ロケットストーブ」とはどのようなものか、その原理について説明しました。それを踏まえて、いよいよ実際の制作にかかります。以下、自分でもやってみたい読者の方の参考もかねて手順を説明します。
※前回はこちら
まず設計です。どうせならロケットストーブだけではなくいろいろな用途に使えるものをと思い、【図1】のような竈を考えてみました。まずAの部分がロケットストーブの本体で、通常の煮炊きに使い
隠者の竈(かまど) ロケットストーブ製作記(理論編) 【週末隠者】
家を買った当初、暖房用の石油ストーブと屋外設置の灯油タンクは最初から付いていたものの、風呂・給湯用の灯油ボイラーは壊れて動かず、ガスの設備は付いていない状態でした。
最初は頭だけ水で洗ったり5kmほど離れた温泉に車や自転車で通ったりしていましたが、さすがに山仕事や畑仕事の後に汗や汚れを落とせないのは辛く(注1)、自転車での温泉通いも雪が積もる冬にはできない上に帰り道の登り坂で汗だくになって結局
隠者の食卓 野草でプデチゲを作る 【週末隠者】
私が庵を構えるD市は大きな街ではありません。生活に必要な施設は一通り揃っているものの、コンビニや深夜営業のラーメン店を除けば夜遅くまで営業しているお店はほぼ皆無です。当然、例えば夜遅くに車でやって来たような場合、買い物も食事もままなりません。しかも家自体が街の中心部からだいぶ離れた、急の買い物には不便な場所にあります。
いちおう夜中に身一つで到着しても食べる物だけはあるように、レトルト・インス
時事無斎ブックレビュー(12) 私的マンガ・アニメ時評2023
見返してみると、前回のブックレビューからいつの間にか1年が経ってしまったようです。むろんその間何も読んでいなかったわけではなく、いろいろと紹介したい本もあるのですが、今回は前回に続き、2023年に出会った漫画・アニメの中からお奨め(そして関連作品)をピックアップしたいと思います。
※前回はこちら
時事無斎ブックレビュー(11) 私的マンガ時評2021~2022MURA Tadasi (村 正
ティルドラス公は本日も多忙⑤ 嵐の年、国滅ぶ時(20)
第四章 ヒルエンラムの小さな事件(その5)
「なるほど、女の縁で召し抱えられた者か。」嘲るように言ったあと、ユーキンはやや不審げに、ちょうど縛られたまま船から下ろされたケロスたちを振り返る。「時にストークとやら、この者たちは何者だ。アルイズン家の者には見えぬが。」
「ハッシバル領へと向かう絹商人よ。折良く道中の用心棒に雇われる話があったので乗ったのだ。」務めて投げやりな口調でシクハノスは答え
ティルドラス公は本日も多忙⑤ 嵐の年、国滅ぶ時(19)
第四章 ヒルエンラムの小さな事件(その4)
そして決行の当日がやって来る。屋敷を抜け出すのはミレニアの夕食の直後。夕食が終わり彼女が自室に戻れば翌日の起床時まで周囲の者たちによる動静の確認はない。つまり翌日の朝までは屋敷を抜け出したことに気付かれずに済むということである。
事前に申し合わせた通り、早めに夕食を終えたミレニアは「今日は早く休む。」と周囲の者たちに告げて自室に閉じこもる。一方のデ
ティルドラス公は本日も多忙⑤ 嵐の年、国滅ぶ時(18)
第四章 ヒルエンラムの小さな事件(その3)
そして三日後の夕刻、シクハノスは投げ文にあった街外れの廃寺に一人で出向く。
塀の破れ目を乗り越え、地面を覆う枯れ草を踏んで荒れ果てた本堂にたどり着き、壊れかけた扉を開けて中に入ると、頭巾で顔を覆った一人の女性がそこに待っていた。「アルイズン家の遺臣の方でございますか?」シクハノスの姿を認めて女性は口を開く。
「どなたかな? まずは名乗られよ。」油
ティルドラス公は本日も多忙⑤ 嵐の年、国滅ぶ時(17)
第四章 ヒルエンラムの小さな事件(その2)
ミレニアを連れて行在所を抜け出し、二人でハッシバル領を目指すことも考えた。だが、道もろくに知らない女二人連れが案内も護衛もなしに闇雲にハッシバル領に向かったところで、無事にティルドラスのもとにたどり着けるとは思えない。かといって、自分たちに協力してくれるような人間は周囲に一人として見当たらない。
良い考えが浮かばぬまま、ディミティラは荷物をまとめ、
ティルドラス公は本日も多忙⑤ 嵐の年、国滅ぶ時(16)
第四章 ヒルエンラムの小さな事件(その1)
ヒルエンラムはトッツガー家の国都・アシュアッカから南西方向に徒歩で十日ほどの距離にあり、「丘の岬」を意味するその名の通り、海に臨む丘陵に沿って広がる街だった。
ここはトッツガー家発祥の地である。本来トッツガー家はヒルエンラムを中心に小さな勢力を持っていた土豪の家柄で、ミスカムシル最大の勢力を誇る大国となった今も、この地は父祖の地として一族の聖地であ