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読んでない本の書評

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表紙見て、あとがき読んで、数行目を通したら、だいたいわかる気がしてきた。 より深く理解するために、重さも測ることにする。
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#SF

133「華氏451度」レイ・ブラッドベリ

133「華氏451度」レイ・ブラッドベリ

168グラム。近未来、思想管理のために本が禁制となった国だ。民家に隠された本があると消防士の恰好をしたファイアマンがやってきて燃やしていくディストピア。ファイアマンっていうのだから火を消すんじゃなくて、つける仕事に決まってる、というブラッドベリの出オチギャグが響き渡る。

 いろいろと鼻に付くのではある。
 ざっくり言うと「本を読まないと馬鹿になるよ」というメッセージがうるさい。
 ええい、本を読

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読んでない本の書評73「星を継ぐもの」

読んでない本の書評73「星を継ぐもの」

177グラム。SFファンたちのひとかたならぬ熱い支持を信じて頑張った。苦労したからこそ、カタルシス倍増というタイプの読書もたまにはいい。

 基本的にはSFはあまり得意じゃない。なんというか、全般にボキャブラリーが固そうではないか。
メカメカしいとか、すごく大きいとか、すごく遠い、とか。見たこともない何かについてのスペックがやけに細かいとか。そうなってくるとストーリーに関係なく集中力を保つのが、

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読んでない本の書評63「2001年宇宙の旅」

読んでない本の書評63「2001年宇宙の旅」

210グラム。201グラムだったらタイトルと語呂が合うみたいでうれしいなあ、という期待を抱いたのであるが、宇宙的意志は安直な迎合はしないものである。

 例の、『2001年宇宙の旅』である。困ったことだ。
 キューブリックの映画はおそらく三回以上は見ている。意味が分からないけど、みんなが名作だっていうから分かるまで見るしかあるまい、と思ったせいだ。わたしは、そういうところは真面目なのだ。
 もう少

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読んでない本の書評58「縮みゆく男」

読んでない本の書評58「縮みゆく男」

衝撃の217グラム。男が縮む、テーマは膨らむ。

男が船に乗っている。むこうからぐんぐん迫ってくる不吉な霧にすっぽり包まれる。ずぶぬれになった身体にぴりぴりする刺激がある。

身体を拭くと、その感覚もほぼ消えた。男はキャビンに入って兄を起こし、船をかすめていった海霧のことを話した。
 それが発端だった。

わずか1ページしかない第一章、ことの起こりである。これ以上の説明は何もない。めちゃめちゃかっ

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読んでない本の書評51「夏への扉」

読んでない本の書評51「夏への扉」

188グラム。もちろん中を読まずに、表紙の猫の後頭部を見つめる用途専用に使うのにも適している。

 自動掃除ロボットのルンバを見かけると、なんとなくいちおう値段をチェックしてしまう。購入を検討したことこそないが、「自分では買わないが、誰かが急にくれたらはしゃぐ」系家電のトップ10に入るのではないか。

 我が家は猫が二匹暮らしている都合上、とにかく掃除機をかけるのに手間がかからない部屋になってる。

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読んでない本の書評39「宇宙戦争」

読んでない本の書評39「宇宙戦争」

141グラム。ただし地球の重力で。

「火星探査機もさんざん着陸する時代になってから読むタコ型火星人の襲来物語、とほほ…」と言うつもりで読んでたら普通に面白い。人類が想定する地球外生命体の形って科学の発展に伴ってしかるべく変わっていくのだろうけど、人類のパニックの起こりかたは100年変わってないらしいところがいい。

 最近、少し大きな地震があって三日間停電した。たったそれだけのことで、思いがけな

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読んでない本の書評32「ソラリスの陽のもとに」

読んでない本の書評32「ソラリスの陽のもとに」

170グラム。見た目の印象より30グラムほど重い。心当たりのない記憶が芋づる式に載っているせいだろう。

 名画座にタルコフスキーの映画「惑星ソラリス」を見に行ったのが最初の出会いだった。
 とにかく寒い日だったが、これほど古い映画をスクリーンで見られる機会はそうないだろうし、見逃せば一生見ないまま終わってしまうかもしれない、と思ったので足を運んだ。
 暖かく居心地の良い劇場で、「ソラリス」は始ま

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読んでない本の書評9「山椒魚戦争」

読んでない本の書評9「山椒魚戦争」

 1970年の版である。今の文庫本では考えられないほど小さい文字をぎゅうぎゅうに詰め込んでの172グラム。文学に見る山椒魚というのは、狭いところに押し込められがちな傾向があるようだ。

  地方都市とはいえ、それなりの規模の市街地で育った。ゆえに里山をかけまわるような子ども時代は過ごしていないが、山椒魚を飼ったことはある。

 家族で山菜取りに行った山中で卵を見つけたのだ。今思えば、あれをどうやっ

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