マガジンのカバー画像

みえないひかりがみてみたくて

17
探してもいなかった。でも真夜中に突然の光が見えたかのように現れた女の子。その心が欲しくて、男は寿命を失う。でも本当は遠い昔から決まっていた。二人が出会い恋に落ちることは。二人に残… もっと読む
運営しているクリエイター

記事一覧

心が欲しくて#01

片道、4時間の時間旅行。

その先に彼女はいる。
いつだって僕を待っていてくれる。
そこでしか会えない。というわけではない。
でも僕はそこへ行く。
こんなに一つの場所へ思いを巡らせ
往復したのは彼女のいるその場所だけだ。
綺麗にレイアウトされた
ギターが並ぶ店でもなく
そこの一冊にどれだけの思いが詰まったか
わからない本達が並ぶ場所でもなく
友達の溜まり場になっている場所でもなく
どこでもない、そ

もっとみる

こころの行方#02

その話を半信半疑で聞いて
ほどなく本当に現れた。
僕の元に。
この人の心を知りたい。
この人の心が欲しい。
僕だけを想って欲しい。

僕のことを好いてくれるわけがない。
もし、万が一そんなことがあっても
僕のことだ。
愛想を尽かされて
すぐに終わりがやってくるだろう。

僕は気がつくと車に乗り
あの店へと向かった。
そう心を渡して心が手に入る店だ。

まるで悪魔との契約だ。
自分の心を対価と

もっとみる

神か悪魔か偶然か運命か#03

いまから会いにいってもいいかな?
とメールを打ちかけたがやめた。
突然会いに行ってみたら
どんな反応をするのか
見てみたかった。
心がたしかに僕のものになっているなら
きっと喜んでくれるだろう。
そう思いながら車を走らせた。
車内のラジオからなにか
懐かしいメロディーが流れていたりしたような気もする。
でもその時の僕は彼女の心のコンパスが
どこに向いているのか。
それだけしか考えてなかったのか

もっとみる

あの日の白いワンピース#04

彼女と知り合ったキッカケは
大学の音楽サークルだった。
僕はギターを弾く時間に費やしたり
未来について深く考えもせずに
高校生活を過ごしてしまったため
大学に進学する道を選択した。
音楽サークルはいくつかあったが
上半期、下半期とバンドを組まなきゃ
いけない決まりがあるサークルだったり
ある程度の制約があったりした
そういうのは御免だった。
15歳でギターを始め、バンドを組んだりもした。方向性の違

もっとみる

土曜の2限#05

はじめての二人きりの時間。
この大学を選んだ理由や
好きな音楽の話や
お互いに知らない学生時代の話。
そこで大きな共通点が見つかった。
彼女も好きな、ではなく
尊敬しているアーティストはと言い
それが僕と同じだった。
宇多田ヒカルとX JAPAN。
尊敬している理由もふたりとも
よく似ていた。
日本人でありながら
英詞なども使い、世界的に知られていて
心に染み入り、頭の中で何度もリフレインするメロ

もっとみる

恋するピアノ#06

正直な気持ちで言うと
どんな大学生活における日々や
どんな授業よりも土曜の2限の
ひかるとの時間は
僕の楽しみになっていた。
いつも僕よりも先にそこにいて
決まってピアノの前に座っている。
だけど彼女のピアノは聴いたことがなかった。入る前に聴こえてくることもなかった。
音楽はやりたいときに好きなように自由に
それがいちばんの音楽の魅力だと楽しさだと
思っていたから、弾いてほしいと
僕から言うことも

もっとみる

当たり前の大切さ#07

降りしきる雨の中、
サークルへと顔を出した。
けど彼女はそこにいなかった。
初めてのことだったので戸惑った。
いつからかもうこの時間は当たり前に
なっていたからだろう。
おもむろに煙草に火をつけた。
煙草の吸殻が足元に溜まっていく。
空虚なこの時間をどうにか埋めたかった。
しかしいくら待っても
その日、結局彼女はそこに現れなかった。
会えない時間が愛を育てる。
という言葉を耳にしたことがある。

もっとみる

苦味と甘味#08

いつもどちらもなくまたねなんて言葉もなく解散するのだが、この日は違った。
「ちひろこのあと時間ある?」
久々に会えたこと、そして僕はこの後
もし予定があったとしても彼女には
それを言わなかっただろう。
純粋に嬉しかった。
「うん、あるけど、どうして?」
「んー、一緒にほろ苦い思い出を作りにいきたいなーと思いまして。」
「ほろ苦い思い出?」とおうむ返しをしてしまったが、
すぐに脳裏を過ったのはまた会

もっとみる

悪夢からの救済#09

僕はよく悪夢をよくみる。
それはそれはとてもつらい。
誰だってそうだ。見たくないような夢を見るときくらいある。
それに反して、幸せとまでは言えないけれど、それに近い夢やなんでもない夢をみるときもある。
ほぼ365日、眠りつくと目を覚ますその時まで夢を見ている。
いつもの使い古された僕にとってはすごく心地の良い薄いブルーの毛布の感触を確かめて
それが夢だったと気づく。
ものすごく現実に近いような夢か

もっとみる

わたしをえらんで#10

いつもの時間、二人きりの時間。
僕は抱いていた疑問を素直に聞いてみた。
「いつも嫌な夢見た時、真っ先にひかるが浮かんですぐにメールするんだけど、すぐに返ってくるのはどうして?」
ふふふ、と笑みを浮かべて
「内緒にしたかったけど言っちゃおうかな。寝る前には携帯の着信音を最大にして、いつちひろから連絡が来ても気づくようにしてあるんだ。」
「眠りを妨げられて、大丈夫?きつくない?」
「それが私が嫌な夢を

もっとみる

僕が選ばれた理由#11

いつもの奥のテーブルに座る。
いつものコーヒーを注文する。
どうして僕がギターを選ばなくちゃ
いけなかったのか。嫌だったわけではない。
彼女にとっては僕の音は特別な音として
響いたのだろうか。
適当な理由で選んだ訳じゃない。
そう言っていた。
人思う故に我あり。
これは僕の座右の銘のひとつだ。
座右の銘なんだからひとつでなくてはならないなんて決まり文句は聞き飽きた。
幾つあったっていいじゃないか。

もっとみる

ファーストラブとキャンディータフト#12

それから一ヶ月としないうちに
彼女はもうある程度好きなように
ギターが鳴らせるようになっていた。
いつもの珈琲屋に僕らはいた。
「あのね、なんかメロディーが降ってくる時があるんだけど忘れちゃったり、たいしていいメロディーでもないなあとか思ったり。難しいね曲作りって。ちひろどうやって作ってる?」

「僕は歌詞と同時に歌詞にメロディーもついてるからそれにギター当ててく感じ。」
「そっか、自然に降りてく

もっとみる

7thコードのリフレイン#13

休みの日に僕の携帯が鳴った。
僕はどうしてもすぐに出て欲しい時は
7コール鳴らすようにしている。
鳴らして折り返しを待つ時は3コール。
7コール鳴ったので出てみた。
彼女は少し興奮している感じで
「できた!できたよ!一曲できたの!」
「ほんと?よかったね!」
と返すと
「聴きたくないの?」ときた。
そりゃ聴きたいに決まってる。
「それは愚問だろう。」と、返すと
「はっきり言ってよー!遠回しなの嫌だ

もっとみる

哀しい調べが向かう先には#14

それから
音楽について、オリジナル曲について
話し込みすぎて結局ひかるの家に
泊まることになってしまった。
見覚えのない天井と部屋を包む甘い香りで
そういえば泊まったんだっけと目を覚まして気づく。
ローソファーで眠ったが
有意義な話がたくさんできたおかげか
寝覚めはよかった。
それともひかるが近くにいるから?
すごく気持ちのいい朝だった。
どこからともなく鳥のさえずりが
聞こえてくる。
携帯に目

もっとみる