Tadashi Kamio/集中治療医

湘南鎌倉総合病院集中治療部 臨床は内科系(血液疾患)重症患者管理が専門で、ICUのシス…

Tadashi Kamio/集中治療医

湘南鎌倉総合病院集中治療部 臨床は内科系(血液疾患)重症患者管理が専門で、ICUのシステム構築や医工連携の推進もライフワークにしています。この国の未来のために出来る事を日々考えていますが、読んだ書籍の備忘録と日々の雑感を時間のある時に記していこうと思います。

記事一覧

世界を変えた薬

世界史を変えた薬 (講談社現代新書) | 佐藤 健太郎 |本 | 通販 | Amazon モルヒネ、キニーネ、サルファ剤、アスピリン、ビタミンC、イベルメクチンなど、世界の歴史に大き…

10年越しの約束

今日は本の紹介とかではなく、自分とある患者さんの話です。 回想録として記したいと思います。 2010年6月。当時26歳で悪性リンパ腫と診断された彼女は、初回の化学療法が…

「ともに食べるということ」

ともに食べるということ―共食にみる日本人の感性 | 福田 育弘 |本 | 通販 | Amazon コロナ禍で黙食・個食がクローズアップされるようになりましたが、それが社会や個人の…

最近の大学病院の問題から学ぶ事

岡山大学や東京女子医科大学の体制を問題視する記事が続いている。 「人手不足で救えない命がある」“経営破綻レベルの病床稼働率”に窮する東京女子医 OG教授の“決死の…

メタバースとスピリチュアルペイン

信仰は人それぞれであるが、日本人の葬儀の多くは未だ仏教である。 終末期に限らず、解決できない個別の人生に関わる苦悩として”スピリチュアルペイン”が存在するが、宗…

湘南鎌倉で感じた事

自治医大さいたま医療センターから派遣され気づいたら5年の月日が経とうとしている。 赴任当時の集中治療部は自分1人で、院内での役割もはっきりしないような状況であった…

現代の医者に必要な事

コロナの波が進むにつれて、医療・介護・救急の現場における無気力感は増している。この背景には高齢化が大きく影響しており、日本が抱える課題の縮図の様相を呈している。…

世界を変えた薬

世界を変えた薬

世界史を変えた薬 (講談社現代新書) | 佐藤 健太郎 |本 | 通販 | Amazon

モルヒネ、キニーネ、サルファ剤、アスピリン、ビタミンC、イベルメクチンなど、世界の歴史に大きな影響を与えた12の薬剤の発見の歴史とその周辺のエピソードを解説した本です。
研究者の方が執筆されていることもあって、基礎的な部分から開発にまつわる話まで非常にわかりやすくかつ読みやすく書かれています。

世間一般の

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10年越しの約束

10年越しの約束

今日は本の紹介とかではなく、自分とある患者さんの話です。
回想録として記したいと思います。

2010年6月。当時26歳で悪性リンパ腫と診断された彼女は、初回の化学療法が奏功し外来で治療を継続していた。

予定されたコースの治療が終わった後のある日、大腿に発疹が出来て救急外来を受診し、その休日当番をしていた自分が診察した。当時化粧品販売員をしていた彼女は、いつものごとくバッチリメイクで受診し、発疹

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「ともに食べるということ」

「ともに食べるということ」

ともに食べるということ―共食にみる日本人の感性 | 福田 育弘 |本 | 通販 | Amazon

コロナ禍で黙食・個食がクローズアップされるようになりましたが、それが社会や個人の価値観にどのような影響を与えていくのかに興味を持っていました。

美食家であったブリア=サヴァランは、美食の喜びを味わう条件として「そこそこに美味しい料理、良いワイン、十分な時間、感じのいい会食者」を上げていますが、「誰

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最近の大学病院の問題から学ぶ事

最近の大学病院の問題から学ぶ事

岡山大学や東京女子医科大学の体制を問題視する記事が続いている。

「人手不足で救えない命がある」“経営破綻レベルの病床稼働率”に窮する東京女子医 OG教授の“決死の訴え”を鼻で笑った経営陣の“特殊な価値観” | 文春オンライン (bunshun.jp)

岡山大学学長、予算2000万円を“趣味の写真”に注ぎ込んでいた!3億円不正経理も責任取らず3月退任で“逃走”(SmartFLASH) - Yah

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メタバースとスピリチュアルペイン

メタバースとスピリチュアルペイン

信仰は人それぞれであるが、日本人の葬儀の多くは未だ仏教である。
終末期に限らず、解決できない個別の人生に関わる苦悩として”スピリチュアルペイン”が存在するが、宗教はこのスピリチュアルペインに対して一定の救いを与えてきた。しかし宗教の本来の目的である、宗派の教えや経典を理解している者はかなり限定的となるのが現状だろう。

当然ながらそこには多くの要因が影響しているが、日本の民俗学者である五来重は『仏

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湘南鎌倉で感じた事

湘南鎌倉で感じた事

自治医大さいたま医療センターから派遣され気づいたら5年の月日が経とうとしている。
赴任当時の集中治療部は自分1人で、院内での役割もはっきりしないような状況であった。今では集中治療部のスタッフが6人となり24時間当直体制も敷けるようになったことなどを考えると、この5年で大きく変える事ができ、それなりにこの病院に貢献してきたと自負している。
しかしこれは当然自分の力のみではなく多くの仲間の支えがあって

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現代の医者に必要な事

現代の医者に必要な事

コロナの波が進むにつれて、医療・介護・救急の現場における無気力感は増している。この背景には高齢化が大きく影響しており、日本が抱える課題の縮図の様相を呈している。少子高齢化、人口減少、地方の過疎化といった課題は誰かの発案によるたった一つのアイデアでどうにかなるものでもなく、一つの分野の専門家で解決できる問題ではない。個人的にはここまで社会に大きな影響を与えたコロナの対応も、もっと幅広い視点からのアプ

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