壁の前に立っている ぴったりと背中をつけると 背中から熱が奪われていく 陽は西から当たり むしろ背後には 途方もない空間が広がっているようだ 陽はわたしを暖めるが わ…
私は恥辱の果実の先端となり 手のひらに包まれ 持ち上げ 握り潰されて 想いの彼方 恣意の働かないところで 「こと」が進んでいる証となる 多くの場合それは身体の中での…
拒絶するように描かれた 白線の横断歩道を渡って 道の向こうへ渡ろうとしている 信号が変わるのを待っている 底には川が流れているだろ 人の血も どっくんどっくん 電車の…
一日が滑り去った後 私たちは戻って行く 星のように 風のように 人が直線を作る悲しみを 記憶の化石にするならば 「同時」という不可思議や 施した悪や罪のため 全ての母…
冷めたコーヒーを 電子レンジに入れ 30秒ほどあたためる デジタルの数字が 減っていくのを見詰めている 小さな事でいい わたしには 何故?と問うための時間が必要 たとえ…
例えば 道で人とすれ違う時 相手を見てしまうと そこにドラマが生まれる 心が引きづり出されてしまうような それは とても疲れてしまうので やはり 顔を上げられない …
わたしの投擲した 心臓ほどの大きさの石が 今 水底へ向けて 音もなく沈んでゆく 静寂のなかに 沈黙の逃走を準備して 訳知り顔で振り返ると 死んでしまった言葉の遺体が …
石井裕子 小笠原聡 立花里奈 雨の日は傘が必要でしょうか しかし そうとも限らない 松田皐月 石渡修 あと ひとり だけ 少年少女 そのことの脅威 誰でもない共犯者とし…
しわだらけの欲が歩いている 凍える寒さに吐き出された息の中を 噂話で満ちた外耳道の淵を ときどき よろけたりもして グレーの濃い部分があり 光のかげんによっては白く…
犬たちがとまどっている 同じような音声を発する 動物を見るが その姿形はまるで違う それぞれが異なる図体 異なる体毛の色 異なる足の長さや尾の長さで 各々が鳴いてみて…
乳白色の薄膜に 光を当て、 砂時計の中のつむじ風と 波頭の爪弾きのリズムで集う時 幾千日の眼底の鼓動音さえ これを懲らしめるための頬のふくらみ 血のような 潮のような …
恋愛論も感情論も 当たり障りのない脳の洪水 首を絞めてみて 手でよりも その紐で 上手くいったら 声高にあやとりしてる 紐の行方を追いかけて はずした時間 私が 指先で…
清澄白河から歩いた 高い天井の建物から出て 街のラーメン屋でも探そうかと 晴天の休日 妻と 東京にも 興味深い地名が多くある 「清澄白河」、 「箱崎」や 日本橋でも「…
風が吹くことも 風が吹いていることも あたりまえのことだった 長さの異なる金属片が 規則性に沿って並べられた 突起により弾かれる 祈りの声は届くのか 祈っていなくとも…
ある種のハチドリの中には その体長にくらべ 極端に長い嘴を持つものもいる 長い舌を隠し持ち それで食物を摂取するわけだが いかにも効率の悪いその生き方が 羨ましく思え…
眼の見えない聴衆がいる 耳の聞こえない見物人がいる 遥か近くの彼方を見るために 何かになろうとする 何一つ備わっていない私は つまらない人間となる 生まれて生きてい…
ささき にと
2024年5月3日 16:51
壁の前に立っているぴったりと背中をつけると背中から熱が奪われていく陽は西から当たりむしろ背後には途方もない空間が広がっているようだ陽はわたしを暖めるがわたしは暖まらず行き場のない空間は恐怖で満ちる壁からは小さな欠片がカラカラとしずくのように落ちてくるかすかな大勢の声助走のように奪われたのは人間としての穴という穴隣には気配があった影かもしれない余命のように
2024年4月24日 20:51
私は恥辱の果実の先端となり手のひらに包まれ持ち上げ 握り潰されて想いの彼方 恣意の働かないところで「こと」が進んでいる証となる多くの場合それは身体の中でのことであり多くの場合それは私からは遠く離れている波を探しに渚に向かう受信するだけになってしまった携帯電話を練り込まれた悲報の理由にするべきだったあなたの涙のように枯れ果てるまでは言葉の湿度に頼れたかもしれないけれど波
2024年4月14日 16:56
拒絶するように描かれた白線の横断歩道を渡って道の向こうへ渡ろうとしている信号が変わるのを待っている底には川が流れているだろ人の血もどっくんどっくん電車のドアには確かに書いてある「引き込まれないよう ご注意ください」誰だって逃げ出したい今という待ち時間から引き込まれないように 注意深くそんなものがないことにすぐに気づくだから ないものをねだることもあり過ぎて嫌なことも
2024年3月27日 08:57
一日が滑り去った後私たちは戻って行く星のように風のように人が直線を作る悲しみを記憶の化石にするならば「同時」という不可思議や施した悪や罪のため全ての母の羊水の漏れ出た先の残滓に過ぎないそのことを嘆いても悲しみは喜ばないだろう葉の裏側を見せるために風が吹く永遠を遠ざけるために星が瞬くそのことは私たちの希望でもあり絶望でもあったわたしがわたしの外に出るまで
2024年3月20日 09:10
冷めたコーヒーを電子レンジに入れ30秒ほどあたためるデジタルの数字が減っていくのを見詰めている小さな事でいいわたしには何故?と問うための時間が必要たとえ その答えがなくとも自らが問いとなる時間がその時になって やっと人生が一瞬だったと確信できるあえて焦点を合わせずに惚けたように時を過ごしたまま風の行先を追うわたしと交換できる時間はそんなに多くなくて良い
2024年3月14日 20:18
例えば 道で人とすれ違う時相手を見てしまうとそこにドラマが生まれる心が引きづり出されてしまうようなそれは とても疲れてしまうのでやはり 顔を上げられない「この黒は白だ」と言ったり「この白は黒だ」と言ったりして多くのドラマは始まるわけだがわたしの白は黒ではなく黒も白ではなかったずっとドラマでないドラマの中で過ごしているひとりの罪の中「ありがとう」という拒絶の言葉に
2024年3月9日 21:16
わたしの投擲した心臓ほどの大きさの石が今 水底へ向けて音もなく沈んでゆく静寂のなかに沈黙の逃走を準備して訳知り顔で振り返ると死んでしまった言葉の遺体がそこかしこに転がっているわたしは海の名前を呼んだり空や風の名前を呼んだりして消えて無くなってしまわない言葉や初めから存在しない言葉を使ってみたくなる白い画面の滲んだ黒いシミのようなものか空気を震わす振動なのか表
2024年3月5日 21:37
石井裕子小笠原聡立花里奈雨の日は傘が必要でしょうかしかしそうとも限らない松田皐月石渡修あとひとりだけ少年少女 そのことの脅威誰でもない共犯者としてボカロが歌うわらべ唄どこでもないここそしてリゾームのようなものスマホの中の見えない空間あとひとりだけそんなふうに消えてゆく匿名の彼らは濃密な花束のように群れあい 離れあうそれぞれに違う秘密を持ち同じ
2024年2月28日 22:08
しわだらけの欲が歩いている凍える寒さに吐き出された息の中を噂話で満ちた外耳道の淵をときどき よろけたりもしてグレーの濃い部分があり光のかげんによっては白く見えるところもある時に見失うこともあるのだが小さな眼を光らせて十年前の古びたドライフラワーのようでいじましくも見えそれは妄想と似ているため10の下に赤い9が来てそこで初めて10が黒と知る空に浮かぶ下弦の月のもと攻撃的に
2024年2月22日 21:16
犬たちがとまどっている同じような音声を発する動物を見るがその姿形はまるで違うそれぞれが異なる図体 異なる体毛の色異なる足の長さや尾の長さで各々が鳴いてみて通じるのかその声には反応するこんなに違っているのに同じ「犬」と呼ばれこんなに違った人生なのに散歩の途中なのだどんな風に嗅ぎ合えば知り合えるのか訝しげに振る舞う術もしかし真実とは程遠い容赦ない姿だ姿形がどれほ
2024年2月2日 21:13
乳白色の薄膜に光を当て、砂時計の中のつむじ風と波頭の爪弾きのリズムで集う時幾千日の眼底の鼓動音さえこれを懲らしめるための頬のふくらみ血のような潮のような生臭さの育たない地平の午後落涙のため費やした時間を何度も生え替わる剛毛や卵の殻の無数の見えない気孔のその数だけを数える日々瞼の裏で濡れるのは植物園の夕暮れいや 黎明であろうかしっかりとしたジャンプのための出来損な
2024年1月26日 21:48
恋愛論も感情論も当たり障りのない脳の洪水首を絞めてみて手でよりもその紐で上手くいったら声高にあやとりしてる紐の行方を追いかけてはずした時間私が指先で押したあなたの頬は思っていたよりも柔らかかった窪みの中に人間探しを準備して彷徨って嘘のように思えて仕方がないくせに信じ続けているのは一人ではなく二人、あるいはそれ以上に多く見えてる、ここにいるから自らの存
2023年12月26日 21:18
清澄白河から歩いた高い天井の建物から出て街のラーメン屋でも探そうかと晴天の休日妻と東京にも興味深い地名が多くある「清澄白河」、「箱崎」や日本橋でも「蛎殻町」「小網町」「小舟町」…「虎ノ門」や「神谷町」…ここはもう、地じゃないから地名はないと妻は言うかもしれないいつしか隅田川に出て河岸を下った特別なことがあったわけでもないのに記憶に残る時間青空と風と
2023年12月19日 21:36
風が吹くことも風が吹いていることもあたりまえのことだった長さの異なる金属片が規則性に沿って並べられた突起により弾かれる祈りの声は届くのか祈っていなくとも声を聞くものはいるのか想いは金属ではなく光と闇の破片であろう近づく力と遠ざかる力が同時にだから聞こえる耐え難い日常と耐え続ける日常魔法という小箱には魔法はなく響くさきに答えを追い曖昧な根拠を問う奏でられるのは
2023年12月6日 21:48
ある種のハチドリの中にはその体長にくらべ極端に長い嘴を持つものもいる長い舌を隠し持ちそれで食物を摂取するわけだがいかにも効率の悪いその生き方が羨ましく思えたりネパールにはグルン族という民族がいて彼女はそこからやってきて今、ファミマでバイトしている「おはようございます。元気ですか」と日本語の勉強をするだけの挨拶で一日幸福と思えるお前のそういうところが嫌いだ職場のある渋谷
2023年12月3日 14:52
眼の見えない聴衆がいる耳の聞こえない見物人がいる遥か近くの彼方を見るために何かになろうとする何一つ備わっていない私はつまらない人間となる生まれて生きていることが存在の傷であるように言葉が去ってゆく何故、常識的に過ごそうとしてしまうのかそうじゃないほうが楽しいに決まってるのに今に近い時間から始めて死に近づきやすいように言葉はいつも死と共にあって私から去ってゆくば