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タクシー運転手が体験した○○な話

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タクシー運転手が体験したエピソードを集めたマガジン。 タクシーでは様々な出会い、出来事がある。 ちょっとエッチな話から、変な話、ビックリな話まで盛りだくさん。 それらをのぞき見し… もっと読む
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#短編小説

新幹線で田舎へ帰るおじいちゃんと、会えない寂しさを隠すお孫さんの、別れる数分前の車内の話。完結

新幹線で田舎へ帰るおじいちゃんと、会えない寂しさを隠すお孫さんの、別れる数分前の車内の話。完結

こちらの続きです。

ーーー

ただ一人、その状況に感極まっていた。

東京駅に近づくにつれて
だんだん素っ気なくなっていく裕太君
おじいちゃんと離れる寂しさを見せないためになのか、
ずっと明るいみさきちゃん
この時間も思い出に変えたいおじいちゃん。

三人の空気を感じ、一瞬、
私が小さかったころのおばあちゃんとの想い出もフラッシュバックする。

センチメンタルになりながら、ハンドルをしっかりと握

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コンプレックスは牙へと変わるなーと思った話。後編

コンプレックスは牙へと変わるなーと思った話。後編

『運転手さん、あそこ東京駅の豊洲口いう場所やろ?』

(前編はコチラ)

(中編はコチラ)

「東京駅の豊洲口?・・・あ!八重洲口のことですか!?」

『八重洲かい!』

鋭い速さで言葉が返ってくる。
まさに関西人のツッコミだ。

お客様は“東京駅の八重洲口”を“豊洲口”と勘違いしていた。

似てなくもなくもない。

本当に感覚として、“似てなくもない”ではなくて
“似てなくもなくもない”と感じる

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コンプレックスは牙へと変わるなーと思ったお客様との話。中編

コンプレックスは牙へと変わるなーと思ったお客様との話。中編

なんとなく嫌な予感がする。

(前編はコチラ)

嫌な予感というより、“やっぱりか”という感情。

豊洲に向かってはいたが、僕の心は灰色の雲が空全体を覆うように
疑いが晴れていなかった。

豊洲に向かいながら会話もしていたが、同時にスマホで何度も調べていた。

豊洲に東横インはあるのか、東横インのサイトで豊洲の店舗があるのか、
豊洲に高島屋はあるのか、高島屋のサイトで豊洲の店舗があるのか。
豊洲に

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コンプレックスは牙へと変わるなーと思ったお客様との話。前編

コンプレックスは牙へと変わるなーと思ったお客様との話。前編

『豊洲の東横イン行ってくれる?』

「豊洲の東横インですか?」

男二人が乗ってきた。

“失われた30年”と言われる「平成」が終わり、
鋭い早さで変化していく世で、
いつも変わらず賑やかな銀座の平日の夜。

着物である以外の共通点が見つけられないほど個性を表す着物姿のママや
違いがあるのは分かるがドレスアップというだけで
全てが同じに見えるホステス。

各業界のドンや上場企業の役員を送るためのス

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