記事一覧
なぜいま『やまゆり園』なのか?
2020年3月16日、植松聖被告に死刑判決が言い渡された。「計画的かつ強烈な殺意に貫かれた犯行であり」「動機の形成過程を踏まえても酌量の余地は全くなく」「死刑をもって臨むほかないと判断」された。
19の命を奪った者に対する判決としては、現行の刑法上これ以外の判決はあり得ないだろう。裁判で議論された責任能力についても、疑いなく「あった」のであり、被告当人もそう判断されることを望んでいた。
「頭がお
条件のスケッチとは?企画の経緯と現在
人間の条件は「条件のスケッチ 2023」というイベントを11月11日(土)、11/12(日)に開催します。
人間の条件として、初めて行う「イベント」です。
それってつまり、何をやるのか。そもそも、なぜ今「イベント」をやるのか。このnoteでは、そういった疑問を整理し、条件のスケッチが目指す体験を伝えるべく、本企画の経緯と、コンセプト、そして開演1週間前の現状を書いていこうと思います。
書き手は
『桜の森の満開の下』演出に臨んで(書き手:ZR)
美しいものは、恐ろしい。
この命題は、その意味を理解するのが簡単な一方で、それを現実のものとするのは全く簡単ではないと思います。
しかし、僕はこれを見てみたい。
今回の『桜の森の満開の下』では、舞台の上にこの風景が現れることを目指します。
この作品での「美しいもの」とは桜のことです。ただし、原作では「桜の森は涯てがなくて恐ろしい」ということは繰り返し語られますが、直接的に「桜は美しい、それゆえ
新作試演会『桜の森の満開の下』出演者コラム / 黒橋拓
同じく桜がモチーフになっている作品に、梶井基次郎の『桜の樹の下には』という短編があるのですが、僕はこれを大変気に入っています。
どう気に入っているかというと、とにかく口に出して読むのが気持ちいいんです。演劇を始めて少し経った頃に出会って、それから事ある発声練習の度にこの作品をそらんじています。「桜の樹の下には屍体が埋まっている!」という書き出しからもう最高です。
すぐ読めるしネットにあるのでぜ
新作試演会『桜の森の満開の下』出演者コラム / 樽見啓
脚本を読むと映像のイメージが頭に湧き、大体それは自分が見たことのある映画、劇、何かの光景だったりがベースになっているので、ならば、と見てきたいろんなシーンをもっと思い出してイメージを具体的にします。
思いだしたおもしろい映画を今自分が向かっている劇にくっつけてくっつけて、どんどん名作で補強して、そしたら「これは面白い!」、「これは良いねえ!」と傑作が出来上がり、ひと段落して、タバコに火をつけて息
新作試演会『桜の森の満開の下』出演者コラム / 野田恵梨香
長生きしたい派の野田恵梨香です。
長生きしたいと思うのを、生への前向きさがいいねと言ってもらえたこともあるけど、
純粋にそれだけじゃなくて、何も為さずに死ぬのが怖いから生きたいという負の感情もあったりします。
どうすれば立ち向かえるかなと考えたりして、人生の目標を最近2つ決めました。
一つ目は、何歳になっても、できるだけずっと俳優を続けていくことです。
とある90代の俳優の方が、「この歳になって
『四谷心中』解題(条件の演劇祭vol.1-Kabuki『四谷心中』にむけて)
『四谷心中』は、実はすでに二度上演されています。
一度目は僕が所属していた劇場創造アカデミーの成果発表として座・高円寺地下の稽古場にて、二度目は昨年11月に行ったワーク・イン・プログレスとして東大駒場キャンパスの路上にて。
昨年11月にワーク・イン・プログレスを行ったのは、劇団にとって大きな意味を持つ今回の演劇祭の準備を早いうちに始め、後悔の無い作品を上演せねばならないと考えたからです。
しか
歌舞伎について(条件の演劇祭vol.1-Kabuki『四谷心中』にむけて)
高校生の頃に何の知識も持たずテレビで見た歌舞伎は、言葉もよくわからないし話し方もゆっくりすぎてあまり聞いていられないし、自分が作る演劇とは遥か遠くにあるもの、「格式」を持った「伝統芸能」ととらえていました。ある意味で、美術館、あるいは博物館の中で鑑賞するようなものとして考えていたのです。
時が経って、いくつかのリアルな(生活に近い)言葉と体で構成された作品を作っていったのち、どこか行き詰まり
人間の条件 母の誤謬シリーズ「巣」について 劇作家・演出家・俳優 樽見啓さんへの公開書簡(書き手:重信臣聡)
拝啓 樽見 啓様
初めまして、劇作家の重信臣聡と申します。
主宰のZR氏から劇を観て何か文章を書いて欲しいと頼まれました。 感想でも劇評でも形式は問わないということでしたので、今回は樽見さんに宛てた手紙という形で文章を書こうと思います。
人間の条件 母の誤謬シリーズ「巣」拝見しました。
小劇場ではほぼお目にかかることがないくらい非常に完成度の高い演劇作品だったと思います。三年後、東京芸術劇場でこ
ビニールシートに促される観劇態度:人間の条件『絶触』評(書き手:岩下拓海)
人間の条件番外公演Vol.1「絶触」を拝見した。
滑り落ちそうな傾きの階段を気をつけて20数段降ると、暗くてジメジメした場所に辿り着く。その地下劇場は、地上の光と音から隔絶された場所にあって、ほの明るい照明が照らすのみだ。受付で靴を脱ぐよう指示され、涼しい足で席に座る。
「絶触」は、人間の条件の番外公演として位置づけられた公演で、恋人を失った男が黄泉の国まで追いかけて彼女に会いに行くという物語
真情あふるる軽薄さのために(番外公演Vol.1『絶触』に向けて)
いつも人間の条件の活動を気にかけてくださり、ありがとうございます。主宰のZRです。このnoteでお伝えしたいのは「次回公演では作り方を変えてみる」ということです。具体的には、「稽古開始時点であえて脚本を用意しない。その代わりに音楽のプレイリストから劇を作り始めてみる」ということです。このような作り方を取るのは演劇というもの、そして演技というものについて私が以下のように考えるからです。少し長めの文
もっとみる概念子(第二回公演『リトル・ブリーチ』に向けて)
私は昔からとても怖がりです。
実家は田舎の一軒家、
古風というほどではないけど新しくはなく、両親共働きで手入れが行き届かずいつも少し埃っぽくて、廊下の突き当たりはものがたくさん積んであっていつも見通しが悪いし、やたら広いので電気をつけてもどこかが暗がりになって闇に溶け込んでる。
家族の寝室が二階にあったのですが、その寝室もふすまに畳でなんとなく怖いし、幼い私は寝室に行くのが嫌でした。
寝室の前の