記事一覧
過去のレコ評(2020-2)
(2020年「SOUND DESIGNER」誌に寄稿)
「CEREMONY」King Gnu
東京芸術大学出身という匂いが薄れてきたことを、今は褒め言葉として使いたい。ライブ会場が大きくなり、遠くまでエモーションを届けるためには、コードもリズムもシンプルな音楽が必要だ。そして音色は歪んだ倍音の多いものが必要。何より歌のエモーショナルさが直球で届く。これは、クラシック音楽の歴史においてもワーグナ
過去のレコ評(2020-1)
(2020年「SOUND DESIGNER」誌に寄稿)
「to the MOON e.p.」Yogee New Waves
一聴して、こういう音のバンドだったっけ?と不思議に思い、過去の音も聴いてみた。明らかにこれまでと違う。音の画面が大きくなっている。高い周波数の成分も増えている。以前はもっと中域に寄っていたのだが、明らかに今の時代の「良い」音になっていて、それでも彼ら特有のノスタルジックさ
過去のレコ評(2019-6)
(2019年「SOUND DESIGNER」誌に寄稿)
「2ND GALAXY」Nulbarich
確かに新境地だ。新しいステージに踏み出したという手応えを感じる。昨今のネオソウル・ギターというムーブメントが、ようやく彼らに追いついた感じもある。1トラック目のイントロが唐突に終わり、キャッチーな2曲目へ。ツーコードでこんなに気持ちよくなれるんだという見本である。毎回ミックスの良さに驚かされるが
過去のレコ評(2019-5)
(2019年「SOUND DESIGNER」誌に寄稿)
「Our Secret Spot」the HIATUS
1曲目、JUSTICE「Water of
Nazareth」を思わせるような暴力的な歪みがトラックを支配する。エレキギターをドライブさせフェイザーをかけたもののようだが、その定位が快く耳を刺激すると同時にテンションノートとして機能していて気持ちいい。Bメロは鍵盤のみになるが、1番では
過去のレコ評(2019-4)
(2019年「SOUND DESIGNER」誌に寄稿)
「NO SLEEP TILL TOKYO」Miyavi
世界市場を主眼に作られたアルバムだ。奇を衒わない楽曲構築。世界の中での”TOKYO”というエキゾティズム。アクロバティックなギターテクニックの披露。これら3つは、簡単に言えば「わかりやすさ」だ。世界的なポップスの潮流に耳覚えがあり、かつ初めて彼を知る人が、すんなりと興味を持ち楽しめる
過去のレコ評(2019-3)
(2019年「SOUND DESIGNER」誌に寄稿)
「STORY」never young beach
のっけからスティールパンで緩い空気を醸し出すニューアルバム。はっぴいえんどの後継者とも言われる彼らの曲タイトルは「うつらない」「いつも雨」など、丸いひらがなが多く「春」という単語が2つも使われ、はっぴいえんどを彷彿とさせる。歌詞には「風」という言葉も散見され、確かに松本隆っぽい。音もヨナ抜
過去のレコ評(2019-2)
(2019年「SOUND DESIGNER」誌に寄稿)
「瞬間的シックスセンス」あいみょん
圧倒的な支持率の高さ。その理由が知りたいと以前から思っていた。1曲目のコードはA♭/E♭/B♭/Fm/Cmで構成されている。お互いがE♭スケールの中で、5度離れた関係にある。このシンプルさは最近の世界的傾向。そこにGmではなく、スケールアウトしたGが入ることで一気に日本的な湿度が加わる。2曲目はベースが
過去のレコ評(2019-1)
(2019年「SOUND DESIGNER」誌に寄稿)
「Suspiria (Music for the Luca Guadagnino Film)」トム・ヨーク
重苦しくも美しいトムヨークの新作アルバムは、ホラー映画のサウンドトラック。同じレディオヘッドの中では、ギタリストのジョニーグリーンウッドが着々と映画音楽作家としてのキャリアを積んでいる。ジョニーはポールトーマスアンダーソンのような大
過去のレコ評(2018-11)
(2018年「SOUND DESIGNER」誌に寄稿)
「Sleepless in Brooklyn」[Alexandros]
今更「バンドという形態の定義とは?」などと持ち出すのもナンセンスだが、もはや「数人で生演奏すること」などというのは狭義過ぎる。簡単に言えば「チーム」であること。では、チームであるというのはどういうことか。それは、長い時間軸で互いを必要とすること。そう感じたのは4曲目を
過去のレコ評(2018-10)
(2018年「SOUND DESIGNER」誌に寄稿)
「HOME」ジョン・バトラー・トリオ
P-VINE RECORDS
PCD-18843
ジョン・バトラーといえば、乾いたアコースティックギターを巧みに鳴らした、巻き毛・長髪のイメージ。それはヒッピーやサーファーのように、親しい友人たちと楽しむ音楽。しかし、今回は少し違う。長いリバーブが多い。それは広い場所を意味する。そしてアンプを通したギ