尋稀

ことばを使った作品を創作しています。

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  • ことば

    最近の作品をまとめています。

  • ことば 00's

    2000年以降の過去作品です。

  • ことば 90's /state

    1990年代にstateというユニットで千葉宏樹名義で活動していた頃の作品たち。 若気の至り。

記事一覧

ひかりの環

伝播する恐怖 乗じる憎悪 踏みつけにされるささやかな過ち 粉々に砕けてちりと化すまで だれもが意識を失い 昏倒し そこは無意識の帝国となる われ先に群がる人の波が うね…

尋稀
4年前
2

殘形の身體

どんなに強く求めても わたしはわたしを手に入れることはできない なぜならわたしの内側は常に空っぽだから だからわたしは うつろな自分にぴったりの 美しい時計仕掛けの…

尋稀
5年前
3

こども王国

裁判 こどもは勉強しないのが一番だ なのにおとなはやれやれ言って ごほうびもくれない そんなことやるわけないでしょ ふつう 皿洗いの刑 こどもと遊べの刑 こどもにテレビ…

尋稀
5年前
1

重ね合わせ(Work in progress.)

第一段階 凪 誰かに内側からずっと見られている感覚 少しずつ自分が透明になっていく 失うのではなく透き通っていく 逆相位のホワイトノイズ 知っていることすべて 感じた…

尋稀
5年前
2

overwriting.

ことばで世界を上書きする あったことをなかったことにするんじゃなくて あったことの意味そのものをあるがままの形にするために 閉じた理解をもういちど僕たちの手元に引…

尋稀
5年前
2

Ghosts of Mars.

ぼくらの目にする、通りのあちこちにこびりついている残像は、目の錯覚なんかじゃなく実体があって、それがエネルギーの残滓で出来ている以上、ぼくらの存在と同じくらいに…

尋稀
5年前
1

ことば for 3331

2012千代田芸術祭「3331 アンデパンダン」にて 千葉弘美と共同で作成・出品したインスタレーションの映像パート 生活の場でもある東池袋再開発地域での2007年と2012年の記…

尋稀
5年前

瘋狂 Part1

1 この宇宙のほとんどは、わたしのいない時間でできている かつて、わたしの生きていた時間があったと もはや過去のこととして、いまそう断言したっていい 全てのものに終…

尋稀
5年前
2

2011年2月10日。

乾いた瞳 襲いかかる日々の光景に 無防備にさらされて 指先で神経をなぞられるような 吐き気のする外の寒さに放り込まれて 生きることそのものが 執拗な痛みを伴う様にな…

尋稀
5年前
3

2010年8月19日。

1 さざなみひとつ立てない頑なな水面 いつだって流動的だと思っているようだけど液体にだって言い分はある 今日は何があったってぜったいに揺れないと決めた 無為無謬 内側…

尋稀
5年前
1

★AUSTRALIA 「カンガルーと稲妻」劇中詩

★AUSTRALIA オン★サンデイ★モーニング カーテン越しに乱反射する春の太陽 腰のあたりをくすぐる温もり 目を醒ますのは とても簡単なことだ まぶたを開いて 差…

尋稀
5年前
1

MUD. /state1998

このままもう少し眠っていたい 燃えつきて何年も放ったらかしになっている テクノロジーが僕らを孤独にしたのだと 明け方のテレビがいっていた その一方で テクノロジ…

尋稀
5年前
3

生成1 /state1998

弱い者にはどこまでも強く 尊大さを努力の結晶とみなし チャンスさえあれば足元をすくい ひとの思いやりには感情を交えず 受け取るものは受け取り 加味すべきでないも…

尋稀
5年前
2

irf. /state1998

横暴な世界のおきて 目の前に飛び込んだ置き手紙 ・・・約束しない    約束事なんてないのだから 日付変わって金曜日 例えば夜で池袋で それは味覚に対する挑戦か…

尋稀
5年前

haveagoodsummer. /state1998

*都市の病巣のすぐ側に暮らす *貧血ぎみだ *ハヴァグッドサマー *封じ込められた怒り *心を慰めようにも心が見あたらない *彼女の指さすものがわたしには見えない * …

尋稀
5年前

STATE/ami(e) /state1998

》 自由の上に立ってそこから飛び上がる ひとは自由になるのではない またひとつ自分が自由であることに気付いてしまうだけなのだ 否応なしに自分が自由であることに気…

尋稀
5年前

ひかりの環

伝播する恐怖
乗じる憎悪
踏みつけにされるささやかな過ち
粉々に砕けてちりと化すまで
だれもが意識を失い
昏倒し
そこは無意識の帝国となる
われ先に群がる人の波が
うねるたびに間違った方向へと現象を導いて
あたりまえだったことたちは
いつだって顧みられることはなく
もちろんいまでも
・・・
目を覚ませ
踏みとどまれ
ぬるぬるとすり抜けろ
騒乱の中からひとつのちいさな声をさがして
耳をかたむけ
そこ

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殘形の身體

どんなに強く求めても
わたしはわたしを手に入れることはできない
なぜならわたしの内側は常に空っぽだから
だからわたしは
うつろな自分にぴったりの
美しい時計仕掛けの身体を手に入れる
がらんどうの身体で空っぽの心をしっかりと包み込む
つるりと透明感のある無垢の外観と
たくさんのぴかぴかな歯車
内側はフラクタルな装飾で隅々まで埋め尽くされている
あなたからは見えないわたしのがらんどう
空っぽな心の代替

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こども王国

裁判
こどもは勉強しないのが一番だ
なのにおとなはやれやれ言って
ごほうびもくれない
そんなことやるわけないでしょ
ふつう
皿洗いの刑
こどもと遊べの刑
こどもにテレビをずっとみさせろ
あとゲームをずっとやらせろ
これはお話じゃないよ
ほんとにあるんだよこども王国
おとなが来たらザッと矢をむける

重ね合わせ(Work in progress.)

第一段階

誰かに内側からずっと見られている感覚
少しずつ自分が透明になっていく
失うのではなく透き通っていく
逆相位のホワイトノイズ
知っていることすべて
感じたことすべてが
見えない光がゆっくり射してきて
みな透き通っていく
透明になることに恐怖し
飛び降りて死のうとした男は
飛び降りていく自分を上から眺めている自分に気づき
気がついたらその上から眺めている自分になり
飛び降りた「かも」しれ

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overwriting.

ことばで世界を上書きする
あったことをなかったことにするんじゃなくて
あったことの意味そのものをあるがままの形にするために
閉じた理解をもういちど僕たちの手元に引き寄せて
それがまだ生きてるってことをたしかめて
神経をつなぎ直し
呼吸がしやすいように胸元のボタンをひとつ外して
そうすればきっとまた
きみは光を身にまとい
過去も未来も引き連れて違う姿で現れる
ことばは壁じゃなく
皮膚に沿って走る皮膜

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Ghosts of Mars.

ぼくらの目にする、通りのあちこちにこびりついている残像は、目の錯覚なんかじゃなく実体があって、それがエネルギーの残滓で出来ている以上、ぼくらの存在と同じくらいにはリアルで、どちらも常に過去に捉われ、未来に置き去りにされていて、結局のところどちらにもたいした差は無い・気がつけば簡単にすりかわってしまうほどに希薄な意思・どうやらぼくらははじめから記憶の中にだけ存在するみたいだ・もっと計り知れなく恐ろし

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ことば for 3331

2012千代田芸術祭「3331 アンデパンダン」にて
千葉弘美と共同で作成・出品したインスタレーションの映像パート

生活の場でもある東池袋再開発地域での2007年と2012年の記録
及び
そこかしこにこびりつき、漂うことばたちの収集

3331/2012;おのれが誇らしげに提示した仮説に溺れるおまえ

・最近、わたしの周りでは毎日の様に風景が変わる
・昨日あったはずの建物が速やかに解体され、

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瘋狂 Part1


この宇宙のほとんどは、わたしのいない時間でできている
かつて、わたしの生きていた時間があったと
もはや過去のこととして、いまそう断言したっていい
全てのものに終わりがあるとしたら
全てのことはどこかでもうとっくに終わっているのだ
わたしたちは皆、そこに向かう
なにもかも約束の下に束ねられ
なにもかもがたったひとつの言葉からできていて
なにもかもがその変奏である
その限りにおいて
この宇宙はたっ

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2011年2月10日。

乾いた瞳
襲いかかる日々の光景に
無防備にさらされて

指先で神経をなぞられるような
吐き気のする外の寒さに放り込まれて

生きることそのものが
執拗な痛みを伴う様になって

悲しみが
もはや激しい感情を伴わなくなって

懐かしい全てのものが
腐れ落ちて

息ができない

自分がかつてなりたかったものが
なれなかったものに変わって

思うままに言葉を発したり
形づくったりすることすら規制されて

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2010年8月19日。

1
さざなみひとつ立てない頑なな水面
いつだって流動的だと思っているようだけど液体にだって言い分はある
今日は何があったってぜったいに揺れないと決めた
無為無謬
内側でどんなに渦巻いたって
たちまち逆向きにねじれて
ぜんぶ無かったことにしてしまう
心を動かしたり何かを感じ取ったりすることに
そうたいした意味があるとは思えない
意図が読みきれないって察しの通りそれは意図が無いって事
今日いちにちは何

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★AUSTRALIA 「カンガルーと稲妻」劇中詩



★AUSTRALIA

オン★サンデイ★モーニング

カーテン越しに乱反射する春の太陽

腰のあたりをくすぐる温もり

目を醒ますのは

とても簡単なことだ

まぶたを開いて

差し込む強い光を受け入れ

スポイト一滴分の頭痛に耐える勇気があればよい

一日はもう勝手に始まっている、と考えてみよ

しっかり見てはいけない

ぼんやり捉えて

すばやく引き上げろ

そして出会うのは

手をついて

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MUD. /state1998

このままもう少し眠っていたい

燃えつきて何年も放ったらかしになっている

テクノロジーが僕らを孤独にしたのだと

明け方のテレビがいっていた

その一方で

テクノロジーこそ僕らをつなぐ最後の手段だと

夜更けのテレビでいっている

それはもう現実離れした現実

疲れているから

望んでもいない記憶ばかりが目の前で踊る

聞きたくもない歌

どうでもいい出来事

退屈でどうしようもない記憶の数々

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生成1 /state1998

弱い者にはどこまでも強く

尊大さを努力の結晶とみなし

チャンスさえあれば足元をすくい

ひとの思いやりには感情を交えず

受け取るものは受け取り

加味すべきでないものは加味せず

原因は探らず

問いかけは愚かさの象徴であると肝に銘じ

信じることを止め

疑うことを禁じ

酸欠に耐えうるだけの大きな肺と

考えすぎることのない脳を持ち

アクションに対していちいちリアクションを伴わず

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irf. /state1998

横暴な世界のおきて

目の前に飛び込んだ置き手紙

・・・約束しない

   約束事なんてないのだから

日付変わって金曜日

例えば夜で池袋で

それは味覚に対する挑戦か

迷走する豚のように彼女たちは叫び声をあげる

ときどきそれは呪いのように耳に飛び込む

手当たり次第に感動を漁る

あるもので満足しなければならないということばは

いつの時代にも囁かれ続ける

今僕に必要なことは何だろう

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haveagoodsummer. /state1998

*都市の病巣のすぐ側に暮らす

*貧血ぎみだ

*ハヴァグッドサマー

*封じ込められた怒り

*心を慰めようにも心が見あたらない

*彼女の指さすものがわたしには見えない

*

*やや青みがかった灰色の午後

*オフィスビルの窓際に立つ僕は

*外の熱から見放され

*細かい汗の粒を浮かべる

*

*ほとんど完璧なまでに役に立たなかったあの旅

*いずれ到着の案内もなしに山手線がホームに滑り

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STATE/ami(e) /state1998

》 自由の上に立ってそこから飛び上がる

ひとは自由になるのではない

またひとつ自分が自由であることに気付いてしまうだけなのだ

否応なしに自分が自由であることに気付いてしまう

全ての出来事が、ひとをそうした方向に仕向けている

だから、大切なことは、自由を求めることではなく

自由の上に立って、では何を始めるかという事だ

全てのプランは役に立たない

その上に立ったときに初めて考えを持つこ

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