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#読書レビュー
リディア・デイヴィス 『ほとんど記憶のない女』
★★★☆☆
2005年刊行の本書は、リディア・デイヴィスの5冊目の短篇集だが、訳書としては初めてになるらしい。訳者は岸本佐知子。アメリカでは作家としてよりもフランス文学の翻訳家として名が知れていて、フーコー、ブランショ、サルトル、プルーストなどを手がけているそうだ。手がけた著者の名前を見るだけでも、かなりしっかりとした文芸翻訳家であることがうかがえる。
僕はその名をポール・オースターの
吉本ばなな 『「違うこと」をしないこと』
★★☆☆☆
2018年10月刊行の対談&エッセイ&お悩み相談本です。たまたまもらったので読んだ次第です。
吉本ばななの小説は昔まとめて何冊か読みました。直近だと『キッチン』を再読した記憶があります。平易だけれど、フックのある文体、それを支える独自の価値観をしっかり感じさせます。それから、やさしい。これくらいやさしい小説を書く人ってそれほどいない気がします。
小説のことはさておき本書
内田樹 『そのうちなんとかなるだろう』
★★★★★
今年の6月に出た内田樹氏の自叙伝です。
共著も含めると、これまでに100冊(200冊?)以上の著書を出している内田樹さんですが、おそらく自伝的な本はこれが初めてでしょう。
これまで僕も氏の著書を何十冊と読んできましたが——そして、ブログもたくさん拝読してますが——、時系列に沿ってご自身の人生について語っているものは寡聞にして知りません(各エピソードは色々なところで語られて
ハーラン・エリスン 『愛なんてセックスの書き間違い』
★★★★★
今年の5月に刊行されたハーラン・エリスンの初期短篇集です。訳者は若島正と渡辺佐智江。
国書刊行会SFが「未来の文学」と銘打ち、60〜80年代の幻のSF作品を集めてリリースしており、そのシリーズの1冊です。
とはいえ、内容は非SF作品に限定されています。解説によると、エリスンはSF作家として地位を確立する前、様々な媒体に多様な作品を発表していたそうです。そうした作品が集めら
橘玲 『もっと言ってはいけない』
★★★☆☆
ここのところ著書の出版ラッシュが続いている橘玲氏。ベストセラーとなった新書『言ってはいけない』の続編とでもいうべき本書は今年の初めに出た一冊です。内容は前作の補足といったところでしょうか。
前作が、現代社会にまつわる様々な事象を脳科学や進化論といったエビデンスをベースに展開していたのに対し、本書は文化人類学的な内容にけっこうな分量が割かれています。
読後の印象としては、
忌野清志郎 『ロックで独立する方法』
★★★☆☆
今年の四月に新編集版として文庫化された本書は、もともと2009年6月に出版されたもの(つまり、著者が亡くなってすぐに出版されたもの)です。内容自体は雑誌Quick Japanで連載されていたそうです。
正直にいうと、忌野清志郎関連の音楽を、僕はほとんど聴いてないんですよね。RCサクセションのアルバムかベストアルバムみたいなものを聴いた記憶はありますが、あまり印象に残っていま
谷口恵子 『1ヶ月で洋書が読める英語リーディング』
★★☆☆☆
本屋でたまたま目につき、ぱらぱらとめくり、つい買ってしまった一冊。始めてからしばらくして、失敗したかなあ、と思ったものの、もったいないので全部やってみました。うーん、貧乏性。
内容はいたってシンプルです。400〜500ワードの英文を毎日読むだけ。ただ推奨しているやり方が一風変わっています。
同じ英文を合計5回読むのですが、読み方はこうです。
1回目:ふつうに読む。
ジョン・チーヴァー 『巨大なラジオ/泳ぐ人』
黄色い表紙の短篇小説には外れがないという根拠のない信憑があるのですが(とはいえ、他に思いつくのはミランダ・ジュライ『いちばんここに似合う人』くらい)、この本もその例に漏れず、当たりでした。
チーヴァーは40年代から70年代に雑誌ニューヨーカーを中心に活躍した作家で、僕はレイモンド・カーヴァー絡みで名前を知りました。解説にも書いてありましたが、二人ともアルコール中毒になった経験があり、ひと