芦田央(DJ GANDHI)

フリーライター / 映画好き / ノンフィクションとドキュメンタリー愛好家 / 札幌出…

芦田央(DJ GANDHI)

フリーライター / 映画好き / ノンフィクションとドキュメンタリー愛好家 / 札幌出身・東京在住・古今東西の映画を貪るように日々是鑑賞 / 映画の記事がメインですが、好奇心丸出しの「レア職業図鑑」という連載もしています

マガジン

  • ドキュメンタリーのススメ

    「事実は小説より奇なり」とはよく言ったもんで、ドキュメンタリー映画はオールジャンルで、玉石混淆で、予測不可能で面白い。周知の事実にすら新しい視点を与える、そんなジャンルです。個人的にグッと来た、そんなドキュメンタリー映画をご紹介します。

  • レア職業図鑑

    珍しい職業、何やってるか分からない職業、そもそも存在の知られていない職業。そんなお仕事の業界知識と現場の声を発信し「世界は誰かの仕事でできている」を地で行こうという連載です。さらには日本の伝統文化に関わる職業にもフォーカスし、それらを保存・アーカイブしていきます。

記事一覧

固定された記事

みなさん、映画の”エンドロール”観てますか?その歴史と最新事情

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ロシアによるウクライナ侵攻後の『マリウポリの20日間』

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毎日新聞「ひとシネマ」に『オッペンハイマー』原作読者目線の記事を寄稿しました

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エルヴィス・プレスリーの曲が流れない『プリシラ』ソフィア・コッポラの選曲

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『アインシュタインと原爆』~映画「オッペンハイマー」のお供に

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映画『オッペンハイマー』の登場人物・歴史背景ガイド

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ガザ、パレスチナ、イスラエルのことを知るのに観たい映画

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『DUNE/デューン 砂の惑星』は映画の見比べと小説の読み比べが面白い

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『デューン 砂の惑星PART2』が公開された。PART1でアカデミー賞の美術・撮影・視覚効果賞などを獲得したように、PART2でも世界観や映像美が素晴…

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「アカデミー賞とは何か」をあらためて、選考基準や投票方法

世界で最も注目される映画賞の一つ、アカデミー賞。素晴らしい映画作品や俳優にオスカー像を贈るというざっくりしたイメージは多くの方がお持ちだろうが、もう少し解像度を…

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『アメリカン・フィクション』に見た「人種差別」の描き方の変化

映画の中で「人種差別」が描かれる時、良くも悪くも作品が撮られた時代における理解度が反映されることが多い。 不朽の名作と言われる『風と共に去りぬ』(1939年)さえも…

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『ネクスト・ゴール・ウィンズ』に学ぶサモア文化:第三の性”ファファフィネ”

アート系の良質な映画を製作・配給することで知られるサーチライトピクチャーズから、新作『ネクスト・ゴール・ウィンズ』が公開された。この映画の予告編を観た時に、私は…

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口腔保健センター退職後に開業、地域の一般歯科でも「障がい者歯科」の提供へ

地域の歯科医院にとって、なかなかその参入ハードルが高い「障がい者歯科」。今後の普及へ向けてさまざまな課題がある中、2023年、「障がい者歯科」を専門とする都立の口腔…

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「障がい者歯科」に取り組む歯科医院、安定経営の実現で業界のロールモデルへ

地域の歯科医院にとって、なかなかその参入ハードルが高い「障がい者歯科」。今後の普及へ向けてさまざまな課題がある中、2023年、「障がい者歯科」を専門とする都立の口腔…

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『哀れなるものたち』ポスターデザインに見た「博士の異常な愛情」のパブロ・フェロ

ヨルゴス・ランティモス監督『哀れなるものたち』のポスターデザインのフォントを見て、グラフィックデザイナーのパブロ・フェロを感じた。 パブロ・フェロとは、キューバ…

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A24の手で40年ぶりの復活『ストップ・メイキング・センス 4Kレストア』

1983年にハリウッドのパンテージ・シアターで催されたトーキング・ヘッズのLIVEの模様を、後のアカデミー賞作品『羊たちの沈黙』のジョナサン・デミ監督が収めたドキュメン…

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みなさん、映画の”エンドロール”観てますか?その歴史と最新事情

みなさん、映画の”エンドロール”観てますか?その歴史と最新事情

一度は話題になったことがあるのではないでしょうか、映画で”エンドロール”観るのか観ないのか問題。

もちろんそれは個人の自由ですが、私は必ず観ますし、また他の方にも”エンドロール”を楽しんで欲しいと思っています。なぜなら映画の本編にこだわって製作してきた監督をはじめ映画製作陣が、最後の最後であるエンドロールにこだわらない訳ないだろうと、思うからです。曲とか、フォントとか、順番とか。

という事で今

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海外へ向けて説明したい『君たちはどう生きるか』のポイント

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とあるご縁から、海外向けに『君たちはどう生きるか』の記事を書くことになった。バイリンガルの翻訳家と一緒に映画を鑑賞し、どんなポイントが海外の方にとって伝わりづらいかを話し合ったのだが、いつもと違う視点と考え方で、新鮮かつ非常に面白い。

そこで英語に翻訳される前の日本語記事(少し日本用に整えたもの)を下記に掲載してみた。日本人による日本の解説は「当たり前」と思われる部分もあるかもしれないが、本来は

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ロシアによるウクライナ侵攻後の『マリウポリの20日間』

ロシアによるウクライナ侵攻後の『マリウポリの20日間』

第96回アカデミー賞で長編ドキュメンタリー賞を獲得した『マリウポリの20日間』が公開された。この映画はウクライナ史上初めてオスカーを獲得した作品となったにもかかわらず、監督のミスティスラフ・チェルノフはアカデミー賞受賞式の壇上で「この映画が作られなければよかった」と語っている。

この監督はAP通信の記者であり、自身の祖国であるウクライナへ取材チームと共に入った1時間後に戦争が開始、そこから20日

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毎日新聞「ひとシネマ」に『オッペンハイマー』原作読者目線の記事を寄稿しました

毎日新聞「ひとシネマ」に『オッペンハイマー』原作読者目線の記事を寄稿しました

上中下とボリュームたっぷりな原作『オッペンハイマー』。この記事では、映画との相違点から見える、クリストファー・ノーラン監督はこれを言いたかったのではないか、これを強調したかったのではないかというポイントについて書きました。

映画から何かを感じたという方、原作も気になっているという方はぜひご一読いただけると嬉しいです。

▼記事はこちらから

エルヴィス・プレスリーの曲が流れない『プリシラ』ソフィア・コッポラの選曲

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「ソフィア・コッポラ監督の作品はサウンドトラックが良い」という筆者の個人的な考えは、新作『プリシラ』でも実証された。

『プリシラ』はエルヴィス・プレスリーの元妻、プリシラ・プレスリーによる回想録「私のエルヴィス(原題:Elvis and Me)」を原作とし、本人もエグゼクティブ・プロデューサーとして製作に参加した作品だ。

プリシラが軍の将校である父の赴任先ドイツで、従軍してきたエルヴィスに初め

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『アインシュタインと原爆』~映画「オッペンハイマー」のお供に

『アインシュタインと原爆』~映画「オッペンハイマー」のお供に

映画『オッペンハイマー』において、登場シーンは少ないものの極めて重要な存在なのが「一般相対性理論」の提唱者、理論物理学者のアインシュタインだ。

原子力委員会による聴聞会へ参加するオッペンハイマーに対して、アインシュタインが話しかける。自分は国から逃げてきた身だが、オッペンハイマーは国に尽くしてきた。そんな君に対する国の仕打ちがこれかと。

アインシュタインはドイツ生まれのユダヤ人で、1933年に

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映画『オッペンハイマー』の登場人物・歴史背景ガイド

映画『オッペンハイマー』の登場人物・歴史背景ガイド

「原爆の父」であるロバート・オッペンハイマーを描いたクリストファー・ノーラン監督の『オッペンハイマー』が公開。

時間のギミックや物理現象などを作品に取り入れ「難解」と言われることも多いノーラン映画だが、『オッペンハイマー』も主人公が物理学者であることに加え、物語が複数の時間軸で進むなど、例に漏れずかんたんとは言えない。

しかし今作の難易度を上げているのは、時間や物理の要素ではなく登場人物の多さ

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ガザ、パレスチナ、イスラエルのことを知るのに観たい映画

ガザ、パレスチナ、イスラエルのことを知るのに観たい映画

先日とあるTV番組で、ガザ、イスラエル、パレスチナなどのキーワードが、ネットで全く検索されなくなっており、それが興味・関心が薄れている証拠だとコメンテーターが言っていた。Googleトレンドで見てみると確かにその通りである。

ハマース主導による越境攻撃が去年の10月7日、その直後と比較すると2024年3月現在では約50分の1程度まで、検索数は激減している。

人の関心を集め続けることは、この情報

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『DUNE/デューン 砂の惑星』は映画の見比べと小説の読み比べが面白い

『DUNE/デューン 砂の惑星』は映画の見比べと小説の読み比べが面白い

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『デューン 砂の惑星PART2』が公開された。PART1でアカデミー賞の美術・撮影・視覚効果賞などを獲得したように、PART2でも世界観や映像美が素晴らしいことは説明の必要がないだろう。

PART1の公開時には原作小説の新訳版を読んでみたが、今回はそれをそのまま読み返すのでなく、趣向を変えて、昭和62年に改訂版六刷の発行された矢野徹さんによる翻訳版を読んでみた。

あく

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「アカデミー賞とは何か」をあらためて、選考基準や投票方法

「アカデミー賞とは何か」をあらためて、選考基準や投票方法

世界で最も注目される映画賞の一つ、アカデミー賞。素晴らしい映画作品や俳優にオスカー像を贈るというざっくりしたイメージは多くの方がお持ちだろうが、もう少し解像度を上げていただくと、アカデミー賞を、映画を、より楽しめると思うので、かんたんにご紹介したい。

オスカーとは

主催団体は「映画芸術科学アカデミー(Academy of Motion Picture Arts and Sciences:AMP

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『アメリカン・フィクション』に見た「人種差別」の描き方の変化

『アメリカン・フィクション』に見た「人種差別」の描き方の変化

映画の中で「人種差別」が描かれる時、良くも悪くも作品が撮られた時代における理解度が反映されることが多い。

不朽の名作と言われる『風と共に去りぬ』(1939年)さえも、「奴隷制を肯定的に描いている」としてBlack Lives Matter運動が盛んな時期にストリーミングサービスの配信ラインナップから削除されたことがある。仕方がないとかんたんに済ませてはいけないが、なにしろ80年以上も前の作品だ。

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『ネクスト・ゴール・ウィンズ』に学ぶサモア文化:第三の性”ファファフィネ”

『ネクスト・ゴール・ウィンズ』に学ぶサモア文化:第三の性”ファファフィネ”

アート系の良質な映画を製作・配給することで知られるサーチライトピクチャーズから、新作『ネクスト・ゴール・ウィンズ』が公開された。この映画の予告編を観た時に、私は(無知により失礼ながら)トランスジェンダーの登場人物がいる映画なのだな、と思った。

0-31という歴史的な大敗を喫し、FIFAランキングが万年最下位であるアメリカ領サモアのサッカー男子代表。このチームの再建を図るという事実を基にした映画な

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口腔保健センター退職後に開業、地域の一般歯科でも「障がい者歯科」の提供へ

口腔保健センター退職後に開業、地域の一般歯科でも「障がい者歯科」の提供へ

地域の歯科医院にとって、なかなかその参入ハードルが高い「障がい者歯科」。今後の普及へ向けてさまざまな課題がある中、2023年、「障がい者歯科」を専門とする都立の口腔保健センターに20年勤めた関野仁氏が、歯科医院「オーラルヘルスサポート歯科すみだ」を東京都墨田区の東向島に開業。

今回は関野氏に、古巣である口腔保健センターについてや、「障がい者歯科」分野における歴史や現状について、詳しくお話をうかが

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「障がい者歯科」に取り組む歯科医院、安定経営の実現で業界のロールモデルへ

「障がい者歯科」に取り組む歯科医院、安定経営の実現で業界のロールモデルへ

地域の歯科医院にとって、なかなかその参入ハードルが高い「障がい者歯科」。今後の普及へ向けてさまざまな課題がある中、2023年、「障がい者歯科」を専門とする都立の口腔保健センターに20年勤めた関野仁氏が、歯科医院「オーラルヘルスサポート歯科すみだ」を東京都墨田区の東向島に開業。

今回は関野氏に、歯科医院の開業についてや、一般の歯科医院と比べてどのような工夫がなされているかなど、詳しくお話をうかがっ

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『哀れなるものたち』ポスターデザインに見た「博士の異常な愛情」のパブロ・フェロ

『哀れなるものたち』ポスターデザインに見た「博士の異常な愛情」のパブロ・フェロ

ヨルゴス・ランティモス監督『哀れなるものたち』のポスターデザインのフォントを見て、グラフィックデザイナーのパブロ・フェロを感じた。

パブロ・フェロとは、キューバ系アメリカ人の著名なグラフィックデザイナーである。彼の代表作としてよく語られるのが、スタンリー・キューブリック監督の『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』だ。

このように『博士の異常な愛情

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A24の手で40年ぶりの復活『ストップ・メイキング・センス 4Kレストア』

A24の手で40年ぶりの復活『ストップ・メイキング・センス 4Kレストア』

1983年にハリウッドのパンテージ・シアターで催されたトーキング・ヘッズのLIVEの模様を、後のアカデミー賞作品『羊たちの沈黙』のジョナサン・デミ監督が収めたドキュメンタリー映画、『ストップ・メイキング・センス』の4Kレストア版が公開された。

数年前にトーキング・ヘッズのフロントマン、デヴィッド・バーンのLIVE映画『アメリカン・ユートピア』(2020年)が注目を集めたばかりだが、40年も前の映

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