ミヤチ
心に留まった写真の、向こうに透けて見えた物語をつづります。
では、語ろうか 遥か昔に月に重ねた 遠い故郷のことを 里を失くした童の話を
私が世界について思うとき そこにはいつも空白があった 地平線へと没する荒野 雲流るる果てな…
暴風雨に狼の遠吠えを聞く 孤独が狡猾な蛇のごとく這い寄り 冷気となって五臓六腑を締め上げる…
このまま微睡みに身を任せようか 誰もいないこの公園で あてどなく空想の世界を彷徨う 途切…
白き地平線に没する 遠ざかってゆく君の背は 彼方の白に溶けてゆく 届かない白の風景 響き…
もやと山の間に心を預けて 移ろう景色に思考を投げる 脳内に広がる青い透明で ずっと「もし…
その海に彼は生まれた。 島影も見えない、ただ水平線のみが真っ直ぐに天地を裂く静かな場…
「なあ、兄ちゃん」 少年は男の数歩先で反転し、男に向き直った。 「今晩はどこへ行くんだい…
彼の肩から荷物が滑り落ちた。足下の砂利とぶつかり合い、ざわついた音を立てる。 木立を…
荷が揺れる。左に大きく重心を取られて、彼はあわててハンドルを戻した。 つんと澄ました…
五月雨が微かに吹き込む軒 水を含んだ冷風 身体の熱が僅かに冷える 緩やかな風にそよぐ髪の先…
体に纏わり付いた鎖の数を数えて 自分の形を探していた 感覚だけが切り離されて 宙を漂う そ…
遠くに見えたぬばたまの闇は そのほとりに立つと じんわりと蒼く滲む ひかりに目が眩んでいた…
鳥の翼が梢を叩いて飛び立っていく音で、彼は夢ともつかぬまどろみから現実へと引き戻された…
月が呼ぶ 森へおいで、と 夜風に揺れる梢も 森の奥へとぼくを手招く 月明かりが道を照らし …
男は傍らの大木の幹に手を掛け、息をついた。 降りかかる木漏れ日が風に揺れる。……その…
ちゃぽん。 苔色に濁った水面が波紋を描く。 池端に据えられた、本来持っていたはずの…