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掃き溜めに醜いアヒルの子

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いつかきっと白鳥になることなんてない、アヒルの子のはなし。
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喫茶店にて

わたしはコーヒーのことがよくわからない。よい香りがして、美味しい。砂糖とミルクは入れないで、できれば苦味は抑え目であっさりした味の、どちらかといえば冷たい方が好き。それだけである。

苦味がどうとか酸味がどうとか、味だけならまだしも、浅煎り、深煎り、水出し、ペーパー、ネル、サイフォン…。ひとによっては淹れる機械のメーカーにもこだわっていたり、トルコでは砂糖と一緒に淹れるとか、どこかの国では紅茶のよ

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頬の星座

以前Twitterに載せたものがほとんどですが、短歌をいくつかまとめました。

吾の髪を乾かす指はきらめいて 頬の星座になにを願おう

僕たちの邪魔するやつは許さない たとえばきみの口内炎とか

解凍のお肉でいいよ安いからあの子のことははやく忘れて

どうしたの?優しい顔で抱き寄せて聞けば答えぬわたしの所為だね

おいしいと思う味より少し濃くしたのは君に好かれたいから

豆苗はまるで育たずそこに在

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「汚い女」と太宰治の自意識

以下の文章はわたしが18歳の頃、大学の基礎ゼミでレポートの練習として書いたものです。拙いながらも、当時のまだ希望に溢れている感じが青臭くてなんだか人に読んでもらいたくなりnoteに載せました。2020.5.6.追記

 太宰の特徴的な作風に「女性独白体」というのが挙げられることは周知の事実であるが、『皮膚と心』もまた女性の一人語りの形式で書かれている。
 主人公の「私」は二十八歳の主婦である。つい

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