マガジンのカバー画像

Roger Scruton

14
運営しているクリエイター

記事一覧

固定された記事
【翻訳】私が保守主義者になった理由/ロジャー・スクルートン

【翻訳】私が保守主義者になった理由/ロジャー・スクルートン

 私が育った時代は、国政選挙で英国民の半数が保守党に投票し、英知識人のほとんどが「保守主義」という言葉を罵倒語とみなしていた時代であった。
 保守主義とは、若さと対立する年寄り、未来に抗う過去、革新に反動する権威、自発性や生活に反する「構造」の側に位置するものだと言われていた。
 このことを理解した上で、自由な発想を持つ知識人としては、保守主義を否定する以外に選択肢がないことを認識すれば良いとされ

もっとみる
【翻訳】"大学の終焉" / Roger Scruton

【翻訳】"大学の終焉" / Roger Scruton

1.『大学と人文学の歴史と意義』

 大学は、私たちの生活に必要な知識・技術・文化を学生に提供すると同時に、私たちの知的資本を高めるために存在しているが、明らかに、この二つの目的はそれぞれ異なるものである。
 一つは個人の成長と関係しているが、もう一つは知識を求めるという、人間に共通の欲求に起因している。

 しかし、これらは相互に絡み合っているので、一方の目的に害を与えると他方の目的にも害を与え

もっとみる
【翻訳】「民主主義から自由を守る」/ロジャー・スクルートン

【翻訳】「民主主義から自由を守る」/ロジャー・スクルートン

 古代の政治学者は、強力な対抗勢力がなければ民主主義はいつ暴徒の支配に陥るかわからないという理由で、純粋な民主主義の憲法を推奨することはほとんどなかった。
 この議論は後の思想家たちによって洗練され、特に19世紀にはアレクシ・ド・トクヴィルやジョン・スチュアート・ミルが「多数派の専制」に警鐘を鳴らした。

 憲法が個人や少数派の権利や自由を守らなければ、民主的な選択はヒトラーのドイツで起きたように

もっとみる
【翻訳】"自由の限界"/Roger Scruton

【翻訳】"自由の限界"/Roger Scruton

 この1年間に掲載された「個人の自由の未来」に関するTHE AMERICAN SPECTATOR'S ESSAYSは、自由が依然として現代政治の決定的な問題の1つであり、国内の論争、外交関係、そして現代の広範なイデオロギーの動きの中で危機に瀕していることを再認識させてくれた。
 リベラリズムと保守主義の対立、学校や大学における政治的正しさをめぐる論争、宗教的自由の新たな問題、憲法をめぐる戦い、EU

もっとみる

【翻訳】単にアカデミックなだけでなく/ロジャー・スクルートン

 メディアも大学も学校も、異論を許さないソフトな左翼主義の正統派を採用している。
 保守的な社会観の基盤となっている基本的な価値観、すなわち国家主権、社会的継続性、政治的自由、キリスト教的遺産は、ヨーロッパの各機関によって非難され、ある意味では犯罪化されているが、わが国の政治家は微塵も抵抗していない。
 こうした政治家たちが、私たちの生活様式に違反し、恣意的な変更を加える権利を持っている。
 国境

もっとみる
【翻訳】欧州は共産主義から教訓を得られるか?/ロジャー・スクルートン

【翻訳】欧州は共産主義から教訓を得られるか?/ロジャー・スクルートン

 私たち(保守主義者)が実際に正しかったという事実は、批判者たちにはほとんど気づかれることがなかった。
 我々のお優しい同僚たちは、自分の優しさをアピールするために、私たちの"悪意"に対して怒りをあらわにすることを繰り返すことで保守主義者の生活を困難なものにした。
 その頃、私は「優しさ」がいかに厄介なものであるかを学んだ。
 1980年に、社会主義の正統派に対抗して保守的な価値観の擁護者であるこ

もっとみる
【翻訳】大学による事実に仇なす戦争/Roger Scruton

【翻訳】大学による事実に仇なす戦争/Roger Scruton

 最近の若い人たちは、何かが確実であると決めつけることに非常に消極的で、その消極性は彼らの言葉に表れている。
 意見の相違がありそうな場合には、文末にクエスチョンマークを付けたり、中立的な立場を強調するために「like」をはじめとする免責事項としての言葉を挿入する。
 あなたは地球が"球体である"と断言することだろう。しかし、若者たちは代わりに地球が「球体のようなもの?」と表現するだろう。

 こ

もっとみる
【翻訳】知識人の反逆/Roger Scruton, The American Conservative

【翻訳】知識人の反逆/Roger Scruton, The American Conservative

 T.S.エリオットが創刊・編集したロンドンのジャーナルにちなんで名づけられた「ニュークライテリオン」は、20年にわたり、私たちの文化的・芸術的遺産を守るために勇敢で必要とされる活動を続けてきた。
 ヒルトン・クレイマーが創刊したこの雑誌には、現代の最も優れた保守的知性を持つ人々が多く参加しており、この最新の瞑想録にもそのような人々が含まれている。

 文化をめぐる戦いは、私たちが今戦わなければな

もっとみる
【翻訳】希望が真実を踏みにじるとき/Roger Scruton

【翻訳】希望が真実を踏みにじるとき/Roger Scruton

 アポロはトロイの神官カサンドラに予言の能力を与えたが、彼女がアポロの誘いに抵抗したため、アポロは彼女を罰し、彼女の言うことを誰も信じないようにした。

悲観主義者の運命は、いつの時代もこのようなものである。
 誰もが同意していることが、実はひどく間違っているかもしれないという考えで仲間の陽気さを妨げる人たちは、狂人として排除されるか、愚か者として非難される。

 第一次世界大戦を引き起こした

もっとみる
【翻訳】魔女狩り文化/Roger Scruton

【翻訳】魔女狩り文化/Roger Scruton

 政治的正しさ(ポリティカル・コレクトネス)は、表面的には、女性、マイノリティ、ゲイ、トランス・セクシュアルといった被害者のために立ち上がる方法のように見えるが、実際には被害者を作り出すためのものである。

 政治的正しさは、私たちの伝統的な生活様式に組み込まれた階層や区別を否定しようとするものである。
 政治的正しさに囚われた人々は、周囲に感じられる憎しみや拒絶の種を撒いた者を探し求めるようにな

もっとみる
【翻訳】現代の男らしさ/Roger Scruton

【翻訳】現代の男らしさ/Roger Scruton

 フェミニストたちは現代社会における女性の立場について口を酸っぱくして語ってきたが、男性の場合はどうだろうか。
 性的倫理、雇用形態、家庭生活の急激な変化は、彼らの生活をひっくり返してしまった。
 男性は今、女性を「弱い性」としてではなく、かつては男性が主導権を握っていた公共の場において対等な競争相手として出会っている。
 そして、古代の分業体制が敷かれていたプライベートな領域では、どのような戦略

もっとみる
【翻訳】"大学を完全に廃止しよう": Sir Roger Scruton/Human Events

【翻訳】"大学を完全に廃止しよう": Sir Roger Scruton/Human Events

 「まるで大学は完全にコントロールできなくなったかのようだ 」と、保守主義の哲学者であるロジャー・スクルートン卿は、今日、ロンドンで開かれたクロスロード会議で欧州人らを前に語った。
 ロジャー卿 --最近、本物の保守主義者である罪で英国の保守党主導の政府から解雇された --は、同誌の日曜夜の会員制Discordチャットで、ヒューマン・イベントのウィル・チェンバレンが行ったコメントとほぼ同じ内容のコ

もっとみる
【翻訳】"言論の自由と大学"/Roger Scruton

【翻訳】"言論の自由と大学"/Roger Scruton

 大学での言論の自由とは、議会や国会での言論の自由、報道の自由、街頭での言論の自由とは全く異なるものである。
 それぞれの環境にはそれぞれの慣習や伝統があり、それぞれがそれぞれの目的と特定の利益のために、自由を守らなければならない。

 日常会話にて、質問のすべての側面を公然と議論するのは原則として望ましいことではなく、名誉毀損、公序良俗、扇動などの法律が、人々を傷つける言葉や挑発的な言葉から保護

もっとみる
【翻訳】"大いなる詐欺"/Roger Scruton

【翻訳】"大いなる詐欺"/Roger Scruton

 上位文化(high culture)とは、社会の自己意識である。それは、教育を受けた人々の間で共有された参照の枠組みを確立する芸術・文学・学術・哲学の作品を含んでいる。

 上位文化は不安定な成果であり、それが伝統の感覚に支えられ、周囲の社会規範の広範な支持に支えられている場合にのみ存続する。
 そういったものが蒸発すると、必然的に起こるように、上位文化は偽物の文化に取って代わられることになる。

もっとみる