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エッセイ

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ノンフィクション、実録エピソードです。生きづらさ、自己肯定感、悩みが中心。
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2023年3月の記事一覧

今まで住む場所を選べなかった人へ

今まで住む場所を選べなかった人へ

住みたい場所が選べるなんて、考えもしなかった。
今までの自らが住む場所を選んだ経験は、皆無に近い。

高校卒業まで親と暮らし、大学進学とともに上京。
新卒で就職した銀行では、女子寮に入っていた。

結婚とともに追い出されたが、夫の勤務先が近い場所に住むことになった。
夫は職業柄、職場のすぐ近くに住む必要があったからだ。

そのまま出産し、ネズミのようにポコポコと2歳差で3人が生まれた。
都内のマン

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フランス語を勉強したら、ご褒美にジムへ行く

フランス語を勉強したら、ご褒美にジムへ行く

一月に「今年こそは」と近所のスポーツジム、Kクラブへ入会した。
三月を迎えた今、ジムへは週三程度で足を運んでいる。

こう書くと「あ、自慢ね」「ジム、語学? よくいる意識高い系か」
と思われるかもしれないが、安心して欲しい。
ジムの利用は大浴場とサウナのみ。筋トレエリアには近づいていない。

筋トレのマシンは、初心者の私にとって使い方が難しかった。
トレーナーさんに声をかければ良いのだろうが、面倒

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血と涙と餃子

血と涙と餃子

 好きな店を聞かれて、いつも愕然とする。三十三年の人生で、今まで散々食べ歩いてきたくせに、どこも思い浮かばない。

 現在、住んでいる東京は『世界中の食を堪能できる街』と言われる。確かにイタリアン、フレンチ、中華、変わり種ではベトナム料理やブルガリア料理まで、何でもそろう。そんな東京での生活が十二年目を迎え、他に世界二十五か国も旅してきた。しかし、記憶に残る店がないのだ。

 これではnoteはお

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祖母のハンバーグ

祖母のハンバーグ

「家出してきた」と祖母の家に乗り込んだのは、二月の終わり。暦は春に移ろうとしていたが、高校三年生の私にはその気配がまるでなかった。

「あれ、来たのかね」
「うん。ばあちゃん、元気そうだね」
 そう。七十を過ぎ、青白い、太った女性にしては。
「ママが、こんなのよこしてきた」
 玄関で立ちすくむ祖母に、私は靴も脱がずに手紙を押し付けた。
「『大学受験、ほぼ全滅ね。残るは国立後期。同級生との再会が後ろ

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