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君から僕へ

君から僕へ

noteを書き続けてる理由は、一つの後悔と自己中心的な欲望のせいだ。

話すこと以外の言語の使い方に疎い自分に、ある種の呪いをかけていた。

伝わるわけがない。

読んでくれるわけがない。

でももしかしたら。

そんな厚さ40ミクロンにも満たないわずかな可能性にかけて、言葉を残していた。

修復不可能な時計をなおしているような感覚だ。

どこをなおそうとしても壊れていく一方だった。

“後悔”は

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4/4

4/4

テレキャスターの飾られた店でハンバーガーを食べていた。

これが連休最後の晩餐になりそうだ。

外に出たいとあれだけ強く決意したものの、朝起きてから数時間は外に出る目的をずっと考えていた。

見つからない。

そうして午前中が終わっていく。

このまま午後もずるずる終わっていくのかと、既に連休に別れを告げようと思っていた。

なんかしない?

突然友人からLINEが送られてきた。

神かと思ったが

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3/4

3/4

来週には満開とキャスターは笑った。

でもその1週間後の今日は、外には出ずに終わりそうだ。

寝る前に充電していたカメラのバッテリーも、今日は休むと言わんばかりに充電中の光がまだ点滅している。

虚しい1日の始まりだ。

布団から出ることを後回しにして、頭上に転がるスマホを開いた。

目覚ましの音楽はまだ鳴っている。

確かこの曲は、向暑はるが高校生の時に一つ上の先輩たちがコピーしていた。

今日

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2/4

2/4

昨日のキャスターも雨が降ると言った。

でも今日は青色の空さえ見えている。

晴れたからといって特に予定はないので、毎週土曜日恒例の掃除から1日を始める。

大学生のときからずっと続けていることだけど、ゴミ箱に捨てる時の埃や塵の多さに毎度驚いている。

ほとんど家を空けているはずなのに、この埃や塵はどこからやってくるのだろうか。

向暑はるが家を空けている間にアリエッティたちが遊んでるに違いない。

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1/4

1/4

明日は雨だとキャスターは言っていた。

せっかくの連休初日が雨なのはちょっぴり悲しくなる。

休日の日数が割に合わなくなってきたので、向暑はるは有給を取った。

脳は平日だと勘違いしてたようで、いつも通りの時間に起きてしまった。

カーテンを開けると曇天が広がっている。

キャスターの予想通りにはいかなかったらしい。

身支度を整えて外に出た。

スーツ姿にせかせかと歩く社会人の集団に紛れ込んだ。

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性格悪く、頭良く

性格悪く、頭良く

女子高生四人が電車に乗ってきた。

電車が発車するや否や、三人が教科書を広げて勉強を始める。

一人はスマホを構いながら音楽を聴いていた。

教科書担当の一人がこう言う。

頭がいい人はいいよね。勉強しなくてもいいもん。

ずる賢い人を性格が悪いと表現するなら、たぶん向暑はるは性格が悪い。

学校では授業中以外、勉強する姿を見せてこなかった。

だって勉強熱心って思われちゃうでしょ。

でも授業中

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社会の中で話すのは向いてないんだろな

社会の中で話すのは向いてないんだろな

覚えた言葉だけでは自分のことを表現できない。

語彙力の乏しさに嫌になることがある。

友達と話す時は口が止まらないくらいに饒舌になるのに、

それ以外の場では、人が変わったように言葉が出ずに、気持ちの悪い間がその空間を支配する。

緊張とかそういうものではない。

単純に”大人としての”語彙力が足りないのだ。

向暑はるは今日も何度か言葉が詰まった。

言いたいことは頭の中では整理できているのに

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パン屋とカフェは朝が早い

パン屋とカフェは朝が早い

向暑はるは朝が弱い。

平日は社会の圧力に無理やり起こされてしまうけど、

何もなければ正直いつだって寝ていられる。

大学生の頃は、”朝に起こされる”ことなんてなかったから、目覚ましもかけなかったし、1限も取らなかった。

だからと言って寝るのが遅いわけでもなくて、日が回る前に寝たとしても結局朝は起きれないのである。

そんな人間も社会の圧力に慣れてしまったのか、休日の朝早くに目を覚ましてしまっ

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何かが足りないと思える時間が一番幸せ

何かが足りないと思える時間が一番幸せ

倦怠期に入ったカップルは口を揃えてこう言う。

片想いの時期が一番幸せだったと。

足りないものが満たされた時から、情熱や自尊心というのはどこかに置いてきてしまう。

付き合うことに情熱を注いでたあの頃の彼らはもういない。

ゴールをもっと先で考えてれば、今でも彼らは仲良く過ごしているのかもしれない。

ドーム規模の会場でライブができたあのミュージシャンは、

その頃から彼の書く新譜が暇潰しのよう

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背中を押されても頑張れない

背中を押されても頑張れない

応援することを、背中を押すと言う。

でも向暑はるは背中を押されることは好きじゃない。

だって貧弱なこの身体が、みんなに背中なんて押されてしまったらコケてしまう。

それに、目の前の道が平坦とは言えない疎らな道だとしたら、背中を押されてもその勢いで逃げ出してしまう。

だったら、一緒に横に立って手を引っ張ってくれるような応援があったっていい。

手を引っ張ってくれるもの。

向暑はるにとってそれ

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オールドレンズにまた恋をした

オールドレンズにまた恋をした

向暑はるは急いでいる。

2年も待たせたくせに急いでいる。

早く取りに来てと言われなければ、死ぬまで気づかずに過ごしていたかもしれない。

全く覚えていなかったのに、それが自分の物だと自覚した瞬間、急に愛が芽生えて会いたくなる。

待たせた相手が”人”じゃなくて良かったと思う。

2年前に修理に出していたカメラのレンズがそのまま放置されているらしい。

高校の時の後輩が働いているカメラ屋に、修理

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変化の中で生きるエンドロール

変化の中で生きるエンドロール

結局、帰りも家の近くまで送ってもらってしまった。

気づけば0時を回っていて、いつもの向暑はるなら夢を見ている時間である。

まだ心の中はふわふわとしていて、頭の中にはずっとソラニンが流れている。

ここまで送ってもらった彼に感謝の意を込めて、コンビニのカフェオレを奢った。

メガサイズはやりすぎたかもしれない。

自分の分も買って、コンビニの前で一息つくことにした。

カフェオレを口につけて、顎

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住み慣れた部屋はもう誰かのものになっていた

住み慣れた部屋はもう誰かのものになっていた

とりあえず大学を車で一周した。

見た目も雰囲気も何も変わっていなかった。

でももうこの”中”に入ることはないだろうし、ここの住人ではないことの現実を突きつけられた気がした。

たった4年間。だけど4年間。

時間の隙間を埋めてくれる場所だったと改めて知る。

正門を通ったけど、そこは何も感じなかった。

向暑はるの家は正反対にあったから、正門を潜って大学に行くことは一度もなかった。

今考える

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ただのドライブ、されどドライブ

ただのドライブ、されどドライブ

コンビニの駐車場に「わ」と書かれたナンバープレートが見えたので、すぐにこれが彼の車だと分かった。

やっぱり今日はこの言葉に縁があるらしい。

同時にコンビニの目の前で一服している彼が見えたので、大きく手を振った。

よく考えれば、彼と二人きりで会うというのは初めてな気がした。

友達になったきっかけが特殊な故に。

大学3年生の時、バイトの友達と焼肉に行く約束をしていた。

だけど、その友達は別

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