在間 ミツル

エッセイスト。身の回り半径3m以内で起きたこと、感じたこと、考えたことを綴ります。 お…

在間 ミツル

エッセイスト。身の回り半径3m以内で起きたこと、感じたこと、考えたことを綴ります。 お気に入り記事は有料で公開(不定期)。申し訳ありませんが、諸事情により2024年4月以降当面コメント返し出来ません。

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海は必ず凪ぐ

ちょっと前まで、私は夢なんて持っていなかった。この歳で夢を語るなんて、バカげたことだと思っていた。そしてどうやって死にゆくか、いかにこの世に未練なく、きれいさっ…

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なんとかなる人

新人のIさんは無事に出勤してくれて、順調に仕事を覚えてくれていっている。 しかし入社初日にMさんがバリバリに厳しく教えたらしく、翌日私が初めてお目にかかった時はと…

在間 ミツル
19時間前
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チビとノッポ

中学三年生の時の同級生には、下の名前が私と同じ子が二人もいた。当時は女の子の名前に『子』を付けないのが流行ったらしく、同級生にはそういう名前の子が多かったが、全…

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しょうがなく作る

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チマチマムシムシ

器用か不器用か、と訊かれたら即座に『不器用です』と答える自信があるけれど、細かい作業が嫌いかというとそうでもない。むしろ好きである。 料理は私の苦手分野の筆頭だ…

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ファッションショーは鏡の前でどうぞ

ゴールデンウイーク中日の昨日はご来店されるお客様もあまり多くなかったが、一応特売期間になっているので、それ目当てのお客様は結構来られた。 キャリーケースは今買え…

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母と娘

母は今でも時折、私を自分の思い通りに動かそうと、あの手この手で画策してくる。 昔と違うのは、私の方が 「ああ、またやってるな」 と客観的にそういう母の姿を眺められ…

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土禁?

毎度毎度愚痴らせてもらっているが、夫の部屋は部屋というより今や物置になっている。この家で一番広く十畳くらいあるのだが、足の踏み場もない。 通販で買ったものの空き…

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近所のお馴染み犬

我が家がこの家に引っ越してきて早くも三年半ほどになるが、未だにご近所の方々の顔はうろ覚えである。 田舎のように自治会活動が盛んなわけでもないし(なんせ世帯数が半…

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たかがマーチ、されどマーチ

吹奏楽コンクールの課題曲が決まった。今年はマーチだ。 『マーチだと楽で良い』などという人もいるが、楽団員みんながみんな、そう思うわけでもない。 特にクラリネット界…

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小さな家

子供の頃の私は、随分ひなびたところに住んでいた。家から数十メートルも歩けば、一キロ半ばかり先にある小学校が見える。視界を遮る建物など全くなく、周りは全て田圃だっ…

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『ゴールデン』ウイーク

夫は使ったものを全く補充しない人である。 石鹸が少なくなっていようが、シャンプーが空になっていようが、自らが補充するという発想がない。 「ないでー」 とこちらに呼…

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”アンチ”アンチエイジング

『アンチエイジング』という言葉が好きになれない。歳を重ねることに対する恐怖を感じるからだと思う。 時間の経過と共に、万人は等しく歳をとり、やがては天に召される。…

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若い頃の職場の上司に、Kさんという人がいた。内勤の課長補佐で、仕事の出来る人だった。 根っからのスケベで、今だったら完全にセクハラになるような行為を、しょっちゅう…

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ヒロイン気分に夢中

子供の頃過剰に制限されていた反動か、この歳になって漫画を読むのにハマっている。スマホでは沢山の少女漫画(という呼び方が今や正しいかどうか?)が読めるので、楽しみ…

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常に神対応な人々

「もう、あのお客さんなんなの?腹が立っちゃって」 「わかる~何様よねえ」 「ひっどいよねえ」 仕事を終えた後の更衣室では、こんな会話がしょっちゅう聞かれる。愚痴大…

在間 ミツル
2週間前
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海は必ず凪ぐ

海は必ず凪ぐ

ちょっと前まで、私は夢なんて持っていなかった。この歳で夢を語るなんて、バカげたことだと思っていた。そしてどうやって死にゆくか、いかにこの世に未練なく、きれいさっぱり自らの生きた恥ずかしい痕跡を消すか、そんなことばかり考えていた。
世の中は怖くて厳しいもので、生きることは辛く苦しいもの。他人は先ず警戒し、おそれ、避けるべきもの。そんな風に感じていた。
この世は限りなくグレーで、自分はその中で辛うじて

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なんとかなる人

なんとかなる人

新人のIさんは無事に出勤してくれて、順調に仕事を覚えてくれていっている。
しかし入社初日にMさんがバリバリに厳しく教えたらしく、翌日私が初めてお目にかかった時はとても表情が硬かった。よろしくお願いします、という顔も緊張で強張っている。
真面目なMさんは使命感で、いきなりかなりぎゅうぎゅうと仕込んだようだ。
そこで先ずは緊張を取るのが先決かな、と思い、いつもより関西色濃いめで話しかけてみたのだが、戸

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チビとノッポ

チビとノッポ

中学三年生の時の同級生には、下の名前が私と同じ子が二人もいた。当時は女の子の名前に『子』を付けないのが流行ったらしく、同級生にはそういう名前の子が多かったが、全く同じ名前の子はその二人だけだった。
尤も漢字の表記は三人三様だったから、厳密に言えば『音』だけが同じだった、ということになる。
その内の一人がKさんだった。
Kさんは歳の離れたお兄ちゃんと弟に挟まれた真ん中っ子だった。お父さんは早くに病気

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しょうがなく作る

しょうがなく作る

今度、新しい人がウチの売り場に入ってきた。Iさんという、若い方である。
「在間さん、教えてね。連休明けからお願い」
Yさんにいきなりそう言われて、目が点になってしまった。

何を隠そう、私はレジの基本対応を正式に習っていない、売り場で唯一の人間である。
なんでも私の入社当時は超人手不足で、前任の課長が『新人はすぐに現場に出して、慣れさせて覚えさせよう』と言いだし、その無謀な計画が私一人にのみ、適用

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チマチマムシムシ

チマチマムシムシ

器用か不器用か、と訊かれたら即座に『不器用です』と答える自信があるけれど、細かい作業が嫌いかというとそうでもない。むしろ好きである。
料理は私の苦手分野の筆頭だが、豆ごはんを作るために、エンドウ豆の皮を剥いたりするのは好きだ。
餃子を包むのにも夢中になる。
子供の頃はよく蕗の筋取りを手伝わされたが、鼻息をスースー言わせながら、指先を灰汁で真っ黒にして一心不乱にやっていた。
栗の皮むきはちょっとしん

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ファッションショーは鏡の前でどうぞ

ファッションショーは鏡の前でどうぞ

ゴールデンウイーク中日の昨日はご来店されるお客様もあまり多くなかったが、一応特売期間になっているので、それ目当てのお客様は結構来られた。
キャリーケースは今買えば一割引きである。この辺の学校事情はよく知らないが、近々修学旅行がある学校が多いらしい。そんな感じの親子連れが大勢来られた。
少しでも安く準備したい親御さんのお気持ちがよく分かる。この時期は色々お金かかるよねえ、と昔を思い出しながら眺めてい

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母と娘

母と娘

母は今でも時折、私を自分の思い通りに動かそうと、あの手この手で画策してくる。
昔と違うのは、私の方が
「ああ、またやってるな」
と客観的にそういう母の姿を眺められるようになったことと、そういう母を目にしても怒りも悲しみも湧かなくなったことである。
私を支配下に置こうとする母を遠くにただ遠くに在る、自らの人格とは切り離した個の存在として認め、良い意味で冷めた目を以てその行動をじっと眺める。
こう書け

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土禁?

土禁?

毎度毎度愚痴らせてもらっているが、夫の部屋は部屋というより今や物置になっている。この家で一番広く十畳くらいあるのだが、足の踏み場もない。
通販で買ったものの空き箱が転がり、何かわからないもののリモコンが無造作に投げ出され、惜しくもゴミ箱にシュートし損ねた鼻紙が二、三個散っている。その真っただ中に大画面のモニター、両脇にはスピーカー、奥にはピアノ、そして仕事の書類・・・とかなりのカオス状態である。何

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近所のお馴染み犬

近所のお馴染み犬

我が家がこの家に引っ越してきて早くも三年半ほどになるが、未だにご近所の方々の顔はうろ覚えである。
田舎のように自治会活動が盛んなわけでもないし(なんせ世帯数が半端なく多いから無理なんだろう)、学校に行くような子供もいないから、PTAの繋がりなんかもない。隣は何をする人ぞ、状態でずっとやってきている。
最初は少し寂しいような感じもしたが、慣れると妙な近所づきあいをしなくて良いので非常に楽である。年に

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たかがマーチ、されどマーチ

たかがマーチ、されどマーチ

吹奏楽コンクールの課題曲が決まった。今年はマーチだ。
『マーチだと楽で良い』などという人もいるが、楽団員みんながみんな、そう思うわけでもない。
特にクラリネット界隈では『マーチかあ、吹きっぱなしでしんどいなあ』という嘆きの声が聞かれる。

マーチと言えば『星条旗よ永遠なれ』とか『ワシントン・ポスト』(二曲ともJ.P.スーザ作曲)とか『双頭の鷲の旗の下に』(J.F.ワーグナー作曲)等の有名な曲がゴマ

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小さな家

小さな家

子供の頃の私は、随分ひなびたところに住んでいた。家から数十メートルも歩けば、一キロ半ばかり先にある小学校が見える。視界を遮る建物など全くなく、周りは全て田圃だった。
稲が植えてある時期はダメだが、刈り取った後田起こしをするまでの間は、よく田圃を斜めに突っ切って、学校まで近道をして行ったものだった。
子供でも大勢が踏み荒らすとやっぱり田圃にはよくないらしく、時折学校にお百姓さんから苦情がきて、先生か

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『ゴールデン』ウイーク

『ゴールデン』ウイーク

夫は使ったものを全く補充しない人である。
石鹸が少なくなっていようが、シャンプーが空になっていようが、自らが補充するという発想がない。
「ないでー」
とこちらに呼びかけて終了、である。
自分も補充することが出来る、という認識がまるでない。意図的にそうやっているのではなく、そういう思考回路を辿るのが夫にとっては自然で当たり前、なのだ。
恐らくは、小さい頃から母親に『はいはい、お母さんがやってあげよう

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”アンチ”アンチエイジング

”アンチ”アンチエイジング

『アンチエイジング』という言葉が好きになれない。歳を重ねることに対する恐怖を感じるからだと思う。
時間の経過と共に、万人は等しく歳をとり、やがては天に召される。その自然の摂理を抗うことが出来ない、悲しく惨いものと捉えることに抵抗を感じるのだ。
特に美容に関して使われることが多い言葉だが、ある一定程度の年齢になってきた人間(特に女性)は、この言葉を意識しないと、『衰えて汚くなっていくことに無関心な人

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男同士の話

男同士の話

若い頃の職場の上司に、Kさんという人がいた。内勤の課長補佐で、仕事の出来る人だった。
根っからのスケベで、今だったら完全にセクハラになるような行為を、しょっちゅう私達女子行員にやっていた。すれ違いざまに『オハヨ』と言いながらお尻をスルっとなでるのである。近づいて来るとみんないつも身を躱すようにしてすれ違うように心がけていた。
なのに憎まれない、不思議な人だった。

見た目は映画『ツインズ』のダニー

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ヒロイン気分に夢中

ヒロイン気分に夢中

子供の頃過剰に制限されていた反動か、この歳になって漫画を読むのにハマっている。スマホでは沢山の少女漫画(という呼び方が今や正しいかどうか?)が読めるので、楽しみに一話ずつ読んでいる。気に入って購入した話もいくつかある。
いい歳をして「漫画に夢中なんです」などと公言するのは憚られるが、面白いものはしょうがない。ストーリー展開が凝ったものや、絵が綺麗なものがお気に入りである。
いくつも読んでいると、自

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常に神対応な人々

常に神対応な人々

「もう、あのお客さんなんなの?腹が立っちゃって」
「わかる~何様よねえ」
「ひっどいよねえ」
仕事を終えた後の更衣室では、こんな会話がしょっちゅう聞かれる。愚痴大会に参加こそしないが、どこのレジも大変だよなあ、と思いつつ、聞くとはなしに聞いている。
腹を立ててもしょうがないとは言うものの、どうしてもつい同僚に二言三言、こぼしたくなってしまうのだろう。気持ちは分からないでもない。
しかし我が店には一

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