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作詞じゃないもの

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記事一覧

【エッセイ】寧静

【エッセイ】寧静

一人になりたいけど独りになりたいわけじゃない。

そんなとき、いつも私が行く場所がある。
JR浜松町の北口を出るとビルとビルの間、あたたかい色にライトアップされた東京タワーが見える。

東京の人は東京タワーに行く機会がほとんどないらしい。
少し寂しい気持ちになるが、今はそれがありがたい。

忙しないオフィス街を抜けて増上寺の横のゆるい坂道を上る。
気がつけば東京タワーの足もと。
しばらく気の済むま

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【エッセイ】「そんなことないよ」待ち?

【エッセイ】「そんなことないよ」待ち?

 最近、耳にする言葉がある。
『「そんなことないよ」待ち』とか『「そんなことないよ」カツアゲ』。
「自分〇〇だから…」
に対して
「そんなことないよ。」
と意図的に言わせることだそう。
私は言わせてしまったことも、言わされたこともあり、耳が痛い言葉だ。
身に覚えが全くない人はいるだろうか。

私が以前、キックボクシングのジムに通っていたときの話だ。
そのジムで、会うと挨拶したりレッスン開始までの時

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【エッセイ】限界超えたら楽になる?

【エッセイ】限界超えたら楽になる?

 あれはたしか中学時代の体力測定での出来事だ。
持久走の測定で1kmを走る。
当時運動部に所属していた私は、絶対に学年上位に入りたくてスタートの合図と同時に飛ばした。
部活動のトレーニングではいつも1km以上を走っていたので、普段よりハイペースでも順調に進むことができた。
もっと行ける。
段々と速くなる足。ぶっちぎりで先頭を走っていた。

残り200mくらいだろうか。
急に電池が切れたように首から

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【エッセイ】乾杯

【エッセイ】乾杯

 乾杯、という言葉で思い出すことはなんだろうか。
私は高校の卒業前に学年主任の先生が歌ってくれた長渕剛さんの『乾杯』だ。

 この秋、高校の同窓会が大々的に開かれるらしい。当時の生徒、担任の先生、当時の校長や関わってくれた先生方にも声をかけ、学年全体で集まるとのことだ。
こんな風に集まるのは成人式のとき以来である。
同窓会、それこそ二十歳のころは割と頻繁に耳にした気がする。
小学校卒業以来初めて会

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夢のなかの学校

夢のなかの学校

なつやすみ。
ここはゆめのなか。

「ねえ。算数のドリルやってきた?3問目がどうしても分からないんだけど。」
後ろの席の親友、ゆうちゃんが宿題についてきいてきた。
「私も分からないところあるから一緒にやろう。」

私は夢のなかの学校に通っている。
一週間前、おやすみなさいと布団に入って目を閉じると、そこは見慣れた校舎の前で、見慣れたともだちがいた。それからまいばん夢のなかの学校に通っている。

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【お題】noteのつづけ方

【お題】noteのつづけ方

・5の倍数の日に歌詞を投稿する
・1フレーズでも自分が「好き」と思えるものを投稿する
・スキしない
以上を自分との約束とし、その約束を守ること。

私なりのこれまでのnoteのつづけ方。書き始めたら長くなってしまったので、先に簡単にまとめてしまった。このマイルールというか自分との約束を守ることで、今まで続けることができたのかなと感じている。

まず投稿ペースを決めたことについて。
せっかく歌詞を

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【ショートストーリー】

【ショートストーリー】

入学式が終わって、しばらく経った梅雨に入る少し前の季節だった。
その日の授業が全て終わり、部活にも入っていなかった僕はそのまま帰っても良かったのだけど、なんとなく屋上へと向かっていた。
僕の通う高校は屋上には入ってはいけないことになっている。
一度は屋上で青春というものを感じたい。でも、目立たずに平穏に高校生活を送りたい気持ちも強かったので、行くだけ行って「やっぱり鍵かかってるか」なんて独り言を言

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【エッセイ】日常生活リハビリ中

【エッセイ】日常生活リハビリ中

 久しぶりに電車に乗った。
空いていた座席に座ったけれど、先に座っていた隣の人との間になんだか気まず~い空気が流れて降車駅が待ち遠しかった。

 久しぶりに買い物に出かけた。
新作の洋服やコスメ、雑貨や本、買いたい物はたくさん。「買うぞ~」と意気揚々と出かけたのだけれど、結局見るだけで楽しくなってしまって、何も買わずに満足して帰宅した。

 久しぶりに友達と遊べた。
 会話の途中の沈黙も懐かしかっ

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【エッセイ】誕生日プレゼントと苦い思い出

【エッセイ】誕生日プレゼントと苦い思い出

 誕生日プレゼントや贈りものは、事前に「コレ!」と決めて買いに行くより、色やモチーフなどある程度だけ考えて買い物しながらその時の出合いを求める派だ。
しかし、ここ数か月そうもいかない期間が続いている。
この春にプレゼントを贈りたい人が何人かいた。いつものようにじっくり買い物はできない。「なにがいいかなー。」ネットの情報を見つめながら、かつて自分がもらった誕生日プレゼントを思い出していた。
たくさん

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【エッセイ】横顔、撮らないで

【エッセイ】横顔、撮らないで

 横顔ブスつらい。
私の数あるコンプレックスの中のひとつ。横顔。
全体的にひらべったいくせに口元は出ているし、おでこと目元に落差はなく、鼻のはじまりも低いから目玉がギョロっと見える。小さいあごは少しでも引こうものならたちまち二重あごである。数えたらもっと出てきそうだが、もう自分の横顔をじっと見ていたくない。
10代の頃、何の気なしに撮った写真。初めて見た自分の真横顔に唖然とした。衝撃。正直もっと整

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【エッセイ】非日常のなかで思い返すこと

【エッセイ】非日常のなかで思い返すこと

 私の通っていた高校は熱心なミッションスクール(キリスト教の学校)だった。
帰りのHRでは終礼があり、毎日一人ずつ生徒が自分で読む聖書の箇所を決め、その聖書に書かれた言葉に合った自分のエピソードや、初めてその言葉に触れた時に思ったことなどを話す時間なのだが、クラスメイトの意外な一面を知ることができたりして私は好きな時間だった。
正直なところ、誰がどんな話をしたかとか自分がどんな話をしたかといった細

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【エッセイ】警戒すること。警戒されること。

【エッセイ】警戒すること。警戒されること。

 父がひたすらに犬を飼いたがる。
犬を飼いたいという大きな理由のひとつに私には思い浮かばなかった理由があった。
「ただ運動で散歩しているだけなのに、警戒されるのが辛い。」
まだ我が家に愛犬がいた頃、その愛犬を連れての散歩だと警戒されることはあまり無かったらしい。その理由を聞いた時は、少し父がかわいそうに思えた。

つい最近の出来事だ。平日のもうすぐ日が傾き始めるかなという時間帯。私はその日、早く予

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【エッセイ】鼻くそニキビ

【エッセイ】鼻くそニキビ

 久しぶりに鼻くそニキビができた。しかも特大サイズの。ショックである。ショックであるが昔のことを思い出してこそばゆい気持ちにもなっている。
 鼻くそニキビ、というのは、私が勝手に使っている言葉で、鼻のあなの周りにできてしまった膿んだニキビのことだ。所謂黄ニキビのことだが、鼻のあなの周りにできたことで、鼻くそに見えなくもないことからそう呼んでいる。
この鼻くそニキビという言葉は、高校時代に初めて知っ

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