Hiromi Nakagawa

本の編集者。おいしいものが大好きで、忙しくなるとたくさん食べます。担当した本は『FAC…

Hiromi Nakagawa

本の編集者。おいしいものが大好きで、忙しくなるとたくさん食べます。担当した本は『FACTFULNESS』『メルカリ』『HARD THINGS』『ジェフ・ベゾス 果てなき野望』『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン』『フェイスブック 若き天才の野望』『電話はなぜつながるのか』など。

記事一覧

稀代の装丁家、坂川栄治さんに教えてもらったこと

 日本を代表する本の装丁家、坂川栄治さんが急逝されたのは2020年の夏。装丁家をされているお嬢さんの朱音さんが、これまで手がけた本の一部を年代別にまとめた図録をつく…

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ハリウッドのジェダイマスターから、交渉力チームづくりも学べる本

こんにちは、本の編集者の中川ヒロミです。 8月の担当本は、ハリウッドのスーパーエージェント、マイケル・オービッツさんの自伝『LEGEND』です。この本、濃くて熱くて厚…

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『ファクトフルネス』のファクト

12月に入って『ファクトフルネス』の発行部数が50万部を超えました!わお。こんなに売れると思わなかったなあ。いやあ、うれしい。 取次の日販調べによると、2019年のビジ…

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父と数学

88歳の父が亡くなった。 高校生の私は反抗期で父とほとんど口をきかなかったし、あれこれ言われてうっとうしいと思っていた。私は2人の兄たちとは10歳前後離れた遅くでき…

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金沢のありえないレストラン

2019年10月、金沢にすごいレストランがオープンする。その名は、A_RESTAURANT。 つくったのは、金沢在住の起業家、宮田人司さんが率いるOPENSAUCE(オープンソース)とい…

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カバーデザインはこうして決まった(2) 赤と青とどっち?『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』編集つぶやき

さて、前回に続いて『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』のカバーデザインはどう決まったのかをご紹介します。装丁家のtobufune小口さんからいただいた5つの案のうち、D案…

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カバーデザインはこうして決まった(1)『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』編集つぶやき

こんにちは、『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』の担当編集者、中川ヒロミです。『ファクトフルネス』の判型(本のサイズ)について前回書きました。https://comemo.nikk

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四六かA5か、それが問題だ 『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』編集つぶやき

こんにちは、『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』の担当編集者、中川ヒロミです。『ファクトフルネス』の編集過程について、これからnoteに何回か記事を書いていきます。 …

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さよならスズ

うちの猫は17年前、飛行機に乗ってやってきた。 耳が垂れているスコティッシュホールドという品種の猫がどうしても飼いたいと言っていたら、ブリーダーに詳しい友人がここ…

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ハードとソフトのエンジニアはわかりあえるのか?

https://note.mu/tuttlemori/n/n18aad1e0d871 私が編集を担当した『スタートアップ・ウェイ』では、GEのエンジン開発者がシリコンバレーからやってきたソフトウェア系起業…

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『スタートアップ・ウェイ』で新しい本の読み方を試してみた

編集を担当した『スタートアップ・ウェイ』本が、まもなく発売になる。この本は、うまくいったスタートアップが規模が大きくなると保守的なイケてない組織になったり、成功…

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トヨタに欠けていたものースタートアップ・ウェイ

© hiromi 私が今まさに追い込みの編集作業をしているのが、『スタートアップ・ウェイ』という本です。スタートアップ・ウェイというのは、著者であるエリック・リース…

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うちのネコ、スズ

Hiromi Nakagawa
10年前
7
稀代の装丁家、坂川栄治さんに教えてもらったこと

稀代の装丁家、坂川栄治さんに教えてもらったこと

 日本を代表する本の装丁家、坂川栄治さんが急逝されたのは2020年の夏。装丁家をされているお嬢さんの朱音さんが、これまで手がけた本の一部を年代別にまとめた図録をつくられました。以下の文章は、その3番目の図録に私が寄稿させていただいたものです。

 坂川栄治さんが装丁を手がけたのは、村上春樹、カズオ・イシグロ、ハリー・ポッターシリーズなど小説から、『だるまさん』シリーズなどの絵本まで約6500冊にも

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ハリウッドのジェダイマスターから、交渉力チームづくりも学べる本

ハリウッドのジェダイマスターから、交渉力チームづくりも学べる本

こんにちは、本の編集者の中川ヒロミです。

8月の担当本は、ハリウッドのスーパーエージェント、マイケル・オービッツさんの自伝『LEGEND』です。この本、濃くて熱くて厚くて迫力満点!装丁も、tobufune小口さんに重厚感あふれるかっこいいデザインにしてもらいました。うっとり。

オービッツを初めて知ったのは、『HARD THINGS』を編集したとき。著者のベン・ホロウィッツは倒産の危機を救うため

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『ファクトフルネス』のファクト

『ファクトフルネス』のファクト

12月に入って『ファクトフルネス』の発行部数が50万部を超えました!わお。こんなに売れると思わなかったなあ。いやあ、うれしい。

取次の日販調べによると、2019年のビジネス書では『メモの魔力』に次いで2位となりましたが、ビジネス翻訳書では1位。楽天KoboやBookLive!など電子書籍ストアのビジネス書では1位となりました。

私はビジネス書の編集をはじめて14年になりましたが、50万部を超え

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父と数学

父と数学

88歳の父が亡くなった。

高校生の私は反抗期で父とほとんど口をきかなかったし、あれこれ言われてうっとうしいと思っていた。私は2人の兄たちとは10歳前後離れた遅くできた女の子だったから、父も色々言いたくなったんだろうと今では思う。それに反抗していたわけだけれど、それでもやっぱり私は、父から大きな影響を受けた。

父は昭和ひとケタ生まれながらも、女の子の教育については先進的だった。

「ずっと仕事を

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金沢のありえないレストラン

金沢のありえないレストラン

2019年10月、金沢にすごいレストランがオープンする。その名は、A_RESTAURANT。

つくったのは、金沢在住の起業家、宮田人司さんが率いるOPENSAUCE(オープンソース)というスタートアップだ。宮田さんはだいぶ前にiモードの着メロで大成功したり、iPhoneのアプリストアが登場した早々に「memory tree」などのアプリをつくったりという連続起業家で、とにかく面白い人だ。宮田さん

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カバーデザインはこうして決まった(2) 赤と青とどっち?『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』編集つぶやき

カバーデザインはこうして決まった(2) 赤と青とどっち?『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』編集つぶやき

さて、前回に続いて『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』のカバーデザインはどう決まったのかをご紹介します。装丁家のtobufune小口さんからいただいた5つの案のうち、D案で行くことに決めました。

ここから微調整を始めます。コピーを再検討したり、色味を考えたりしていきます。最初に悩んだのは、タイトルを赤文字で行くか、青文字で行くかーー。本屋さんの店頭での目立ちやすさを考えたら、やっぱり赤

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カバーデザインはこうして決まった(1)『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』編集つぶやき

カバーデザインはこうして決まった(1)『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』編集つぶやき

こんにちは、『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』の担当編集者、中川ヒロミです。『ファクトフルネス』の判型(本のサイズ)について前回書きました。https://comemo.nikkei.com/n/nf551eedddb47 今回はカバーデザインを決めた過程をご紹介します。

本にとっていちばん大事なのは、当然ながら中身です。でも、同じくらい大事なのが、「装丁」(そうてい)です。装丁とい

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四六かA5か、それが問題だ
『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』編集つぶやき

四六かA5か、それが問題だ 『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』編集つぶやき

こんにちは、『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』の担当編集者、中川ヒロミです。『ファクトフルネス』の編集過程について、これからnoteに何回か記事を書いていきます。

この記事を書くきっかけは、共訳者の上杉周作さんが書かれた「『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』の翻訳本ができるまで」という記事の反響に驚いたこと。

Twitterなどでこの記事を読み、「ここまで手間をかけて真剣

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さよならスズ

さよならスズ

うちの猫は17年前、飛行機に乗ってやってきた。

耳が垂れているスコティッシュホールドという品種の猫がどうしても飼いたいと言っていたら、ブリーダーに詳しい友人がここがいいと教えてくれたのが大阪・岸和田のブリーダーだった。そこで最初はキジトラの子を譲ってもらうはずが、その子は病気がちということで、何度も引き渡しが延期になった。病気がちの子を渡すと猫も飼い主も苦労する。そのブリーダーが「この子なら丈夫

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ハードとソフトのエンジニアはわかりあえるのか?

https://note.mu/tuttlemori/n/n18aad1e0d871

私が編集を担当した『スタートアップ・ウェイ』では、GEのエンジン開発者がシリコンバレーからやってきたソフトウェア系起業家の著者にくってかかる場面があります。

ソフトウェアは一日に何回も改修できる、だからお気軽に「失敗しよう」なんて言える。でも、ハードウェアはそうはいかない。ただ、著者であるエリック・リースさん

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『スタートアップ・ウェイ』で新しい本の読み方を試してみた

『スタートアップ・ウェイ』で新しい本の読み方を試してみた

編集を担当した『スタートアップ・ウェイ』本が、まもなく発売になる。この本は、うまくいったスタートアップが規模が大きくなると保守的なイケてない組織になったり、成功した大企業がイノベーションを起こせなくなったりするという課題に、答える本だ。

© hiromi

著者のエリック・リース氏は本の最初に、イケてない「古くさい企業」と成長し続ける「先進企業」という言い方で、両者を対比させている。その中の一説

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トヨタに欠けていたものースタートアップ・ウェイ

トヨタに欠けていたものースタートアップ・ウェイ



© hiromi

私が今まさに追い込みの編集作業をしているのが、『スタートアップ・ウェイ』という本です。スタートアップ・ウェイというのは、著者であるエリック・リース氏が提唱するメソッド「リーン・スタートアップ」をスタートアップだけでなく、伝統ある企業、大きな企業に導入するための方法論です。

変化がどんどん激しくなり、予測不可能になっている今、これまでのやり方ではもはや新しいものは生み出せな

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