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STORY

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不慣れながらも 少しずつ書いていく予定の 小説(主に短編)のために作りました。
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記事一覧

大切な鏡 :夏ピリカ応募

大切な鏡 :夏ピリカ応募

「その鏡、すごい年季入ってるね。
それほど大切なものなの?」

会社内の化粧室でメイクを直していると、同期が興味津々で尋ねる。

「まぁ、そんなとこかな」

恵理子は、一言だけ答えると鏡を大切そうにポーチにしまった。

この鏡については秘密。

この同期に限らず、他の誰であっても話すつもりはない。

あの夏の夜の、恵理子の大切な思い出だからだ。



中学2年の夏だった。

恵理子は友人たち大勢

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創作大賞応募:弾ける海で泳ぎたい

創作大賞応募:弾ける海で泳ぎたい

【1】私はきっと沈んでしまう気づくと、コップの中身は空になっていた。
最後に飲み干してから、
どれくらい時間が経つのだろう。

智子(さとこ)は、気だるそうにドリンクバーに向かう。

カラン、と音を立てながら
氷を3つ、コップに入れて、
カロリーゼロのコーラのボタンを押す。

しゅわしゅわ、と音をたてて注がれたコーラが止まると、コップを手にして席にもどった。

ぶくぶくぶくぶく......

喉が

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同じ名を持つ君へ

同じ名を持つ君へ

昨夜、目覚まし時計を朝6時半にセットして寝たはずだった。

目覚まし時計がどこにもない。

電気もつかない。

スマホのライトを使おうとしたら、
なんとスマホも見当たらなくて。

見たこともない便箋と封筒が置いてあるのだ。

廊下や玄関、キッチンにバストイレ、全て電気がつかない。

使えるのは非常時のために、ベッドの下に置いていた、アンティークのランプ。
卒業旅行で買ったものだ。

着替えやメイク

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今日も、わたしは あの人の帰りを待つ。

今日も、わたしは あの人の帰りを待つ。

あの人が、わたしの元を去ってから5年になる。

この町の風景も、そして この店も 大きく変わったことはない。

変わってしまったのは、わたし自身なんだろうか。

わたしはあの人のことが今でも大好きだ。

でも、その思い出は 少しずつぼんやりとしたものになっている気がするのだ。

いつかまた、あの人に会える日が来るんだろうか。

ただ、わたしはあの人の言葉を信じている。

「必ずまた戻ってくる。だか

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輝きを探し求めて。(2000字のドラマ)

輝きを探し求めて。(2000字のドラマ)

今日も、仕事は滞りなく 定時に終わった。

「お先に失礼します」

挨拶をして、友季子は足早にロッカーへ向かう。

心の中で お気に入りの曲を口ずさみながら、
素早く制服から 私服に着替えて、髪を軽く整える。

ようやく友季子にとって、仕事を終えたあとの ささやかな楽しみが始まろうとしていた。

友季子の家は、職場から20分ほどのアパートだ。
このまま帰れば、自分の部屋で のんびりできる。

しか

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僕のスーパーヒーロー (Inspired by "Superheroes")

朝の光が部屋を優しく照らす。
父は息子の部屋のドアを開け、まだ夢の中の息子を優しく起こす。
「ほら、起きなさい。朝だよ。」
息子は嬉しそうに父に抱きつく。
「よく眠れたかい?」
「うん。今日の夢の話、聞いてくれる?」
「もちろん。その前に顔を洗って歯磨きしてきなさい。」
大きく頷き、息子は部屋を飛び出す。

間も無くテーブルに向かって座り、朝食を取る父子。
息子にとっても、そして、父にとっても、こ

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