記事一覧
束の間の休息〜プラトロス〜
平日の午後のカフェに客はいなかった。マナミは自分のためにコ-ヒ-を淹れてカウンタ-で本を読み始めた。アンティ-ク調に調えられた店内で額縁の中のテディ・ベアは今日も笑顔で見守ってくれる。ページをめくりながら、遠い歴史の彼方に消えた王国ノバルディアについて考えていた。その本には女王クリニクスに仕える歴史家と密偵について記録されいた。
~プラトロスの日記~
私は忙しい合間を縫って郊外の海岸に出掛けてい
酔っ払いの戯れ言〜リプライズ〜
酒を買う。今日はクリスマス・イブだ。ケンタッキー・フライドチキンを手土産にして、ビルの裏手に回る。人通りは無い。、他人の視線から上手に逃げられる。故障して「使用中止」の張り紙が貼ってある送水口と薄汚れたベンチで仕事帰りのオジサンが迎えてくれる。ホコリだらけのバックパックがベンチの足元に無造作に置かれている。工事現場の交通案内で使われる指示棒がアンテナみたいに突き立っている。オジサンは今日もゴキゲン
もっとみる「ぼくが電話をかけている場所」の感想文
レイモンド・カーバー著、村上春樹訳「ぼくが電話をかけている場所」を読みました。
この作品は村上春樹さんの改題で「短編集の白眉ともいうべき見事な作品である。」、「これから読みつがれていく作品のひとつになるだろうと思う。」と紹介されています。しかし、初めて呼んだときの感想は「他の作品のほうが面白い」でした。そこで翻訳と原文を2回ずつ読んでみて、気が付きました。これは喪失の物語だと思います。
アルコール
大切な場所〜リプライズ〜
満天の星空の下で缶チューハイで乾杯した。ヒロミはスマホを観ながら笑っていた。「ツイッターのコメント欄が炎上しているよ。読んでみなよ。」と彼女は城山に方にスマホの画面を向けた。著名人の離婚報告には「卒業します」と書かれていた。そのコメント欄には「敵前逃亡だろう!」、「卒業ってナニ?中退だろ!」等々のコメントを読みながら城山も思わず笑ってしまった。
「やり方が間違っているよ。」と彼は笑いながら雑居ビル