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#読書の秋
vol.15 モーパッサン「脂肪の塊」を読んで
140年ほど前のフランス文学。
これ読んで思い出した。学生のころ、「社会の理不尽」をつまみに酔っ払っていた先輩に勧められてモーパッサン読んだ記憶がある。たぶん「脂肪の塊」は再読。
物語は、普仏戦争でプロイセン軍(ドイツ)に占領され、フランス国内を馬車で逃亡中の出来事。車内10人のフランス人たちの嫌な部分を念密に練られたストーリーで描かれている。
主な登場人物は、「脂肪の塊」と呼ばれる娼婦、厳
vol.13 ヘルマン・ヘッセ「車輪の下」を読んで
初めてのヘッセ。ドイツの作家。第一次世界大戦前の1906年の作品。
詩的な描写がたくさんあって、さすがにノーベル文学賞作家の文章だと思った。けども、あまりにも悲しい結末にどっと気分が落ち込んだ。取り返しのつかない罪がハンス少年の周辺にあると感じた。ハンスのような少年はどのようにしたら生きられるのかと考えた。今の日本でも似たような子どもたちを作り出しているように思う。
岩波版の解説に、「大人の無
vol.11 イプセン「人形の家」を読んで
140年前に書かれた戯曲。
イプセンは「現代悲劇の覚書」に、「女性は独立の人格となり得ない。この社会は全く男性のものであって、男性が作った掟によって、男性の立場から女性の行動が裁かれる」と書いている。
この戯曲、そういった現状に疑問を呈して、新たな時代の女性の姿を示している。
夫ヘルメルは、今の時代から見ると、本当に嫌な奴。妻のことを「かわいいひばり」と気持ち悪い呼び方をしながらも、妻が夫への
vol.6 魯迅「阿Q正伝」を読んで
阿Qという男について考える。
阿Qは無教養で、字も書けない。上層部からわずかばかりの賃金をもらいながら、お堂の中で寝泊まりしている。気にくわないことがあると酒で気分を紛らわす。なんのリテラシーもなく、思想もない。信じるものは何もなく、平気で嘘をつく。仕事がなくなれば万引きして空腹を満たす。女に欲情すれば、女中に手をだす。
そんな阿Qは自称、「精神的勝利法」なるものを見出す。「俺の方が精神的に豊
vol.5 トルストイ「人はなぜ生きるのか?」を読んで
名越陽子=訳
文章は簡素でわかりやすく書かれた短編だけど、内容はよくわからなかった。時間をおいて再読したけど、ますますわからない。
しかしこの作品、どういうことだろうと考えたくなる。自分だったらどうするかを考えてしまう。
セミョーンのように赤の他人に優しくできるだろうか。
素っ裸で弱り果てている赤の他人を街で見かけた時、どうする?いかにもやばそうな奴だから、見て見ぬ振りをして、そのままま通
vol.4 カミュ「異邦人」を読んで
ムルソーに情状酌量の余地あり。
しかし多数の意見は、母親の葬儀に涙も流さず、翌日女性を家に連れ込み、神を信じないやばい奴とされる。
法廷の場で、自分の気持ちに嘘をつけば死を免れる状況があるにも拘らず、精神的自由が全てで、それ以外は面倒で、胡散臭いお説教に抗して胸ぐらを掴む。異邦人扱いされようが、人間のクズだと罵られようが、死刑囚になろうが構わない。
そんな多数の宗教に押し付けられた価値よりも
vol.1 サガン「悲しみよこんにちは」を読んで。
タイトルが少女的でずっと避けていた作品。読んだら過ちの告白だった。自由を奪われて仕返しをする作品だった。
自由を奪われたと感じたセシルは、嘘がうまく策略家で執念深くなる。考えもよく変わる。罪の意識も薄く、時に過去の過ちが「悲しみよこんにちは」とやって来るけど、特に大きな反省もなく、自分の精神的自由を尊重して、また過ちを繰り返す。
この世界の空気感は西洋的で馴染めない。だけど自由は最も大切だとわ