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「性格」か「障害」か │ パーソナリティに関するあれこれ

※10000文字以上あります。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。


自己紹介記事の中でも触れているが、実父に怪我をさせ逮捕された過去がある。理由はいろいろとあったが、現在では愛着問題が一番の原因だろうと思う。

元々「双極性障害」と診断されていた関係で、留置されている間に責任能力の有無を問われ、精神鑑定で精神科病棟へ一ヶ月間の入院を命じられた。行き着いた先は、初の保護室だった。広めで10畳ほどあっただろうか。想定していたより清潔感はあったが、監視カメラ、トイレ、鉄格子仕様で、室内に何も持ち込めないという点では、留置所や拘置所より苦痛だったし、なにより、24時間ずっと誰かに監視されていると思うと、気が休まることもなかった。

その間、WAIS検査を受け、医師から「音楽をやっていたと聞いたから、もう少し期待してたんだけどね」と蔑んだ言葉をかけられたが、当時の精神状態で適正なIQが算出されるはずがない。

さて、その精神鑑定の結果だが、「境界性パーソナリティ障害(BPD)」と診断された。心神耗弱状態ではなく、責任能力有りと判断、起訴され拘置所へ送られることになる。(病気「障害」ではなく、性格だという診断)

それまでは、前述の通り「双極性障害」と診断されていたのが、精神科医も短期間で判断できないこと、BPDと症状が似ていることを考慮すると、仕方ない結果なのか、と現在では思えるようになった。

この病気か、性格か、の境界線で苦しんでいたり、不利益を被ったりしてる方も少なからずいるはずだ。責任能力の有無については以下、刑法39条が適用される。

✔刑法39条

1 心神喪失者の行為は、罰しない。
2 心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。
心神喪失者とは責任能力がない人のことです(責任無能力)。
心神耗弱者とは責任能力が限定されている人のことです(限定責任能力)。

・心神喪失と心神耗弱

刑法に規定されている「心神喪失」や「心神耗弱」とはどのような状態を意味するのでしょうか?

最高裁判所の判例によれば、心神喪失とは、①精神の障害により、②弁識能力または制御能力を欠いている状態のことをいいます。

【①精神の障害】
精神の障害とは、精神状態が異常なことをいいます。統合失調症や躁うつ病などの精神病にかかっているケースが典型例です。ただ、精神病に限られるわけではなく、知的障害や飲酒による酩酊なども含まれます。

【②弁識能力・制御能力】
弁識能力とはしてよいことと悪いことを区別する能力のことです。制御能力とは自分の行動をコントロールする能力のことです。

裁判所は、精神の障害という生物学的要素と弁識能力・制御能力という心理学的要素を併用して、責任能力について判断しています。
生物学的要素だけだと、特定の精神病にかかっていたり、IQの数値が一定以下であれば一律に責任能力が否定されてしまい、事件に応じて柔軟に判断することができなくなります。逆に心理学的要素だけだと、基準があいまいで裁判官によって判断が大きく違ってくることがあります。
そのため、裁判官は生物的要素と心理学的要素の両面から責任能力の有無や程度について判断しています。

・責任能力が問題になりやすいケース
1.統合失調症
刑事事件で責任能力について最も問題になりやすいのは、統合失調症のケースです。心神喪失で無罪とされた刑事事件の多くが、本人が統合失調症で妄想に支配された状態で犯行に及んだケースです。もっとも、単に統合失調症にかかっているというだけで、責任能力が否定されるわけではありません。責任能力の有無や程度は、犯行前の生活状況や犯行時の病状、犯行の動機、手口などの事情を総合して判断されます。

2.躁うつ(双極性障害)
統合失調症に次いで責任能力が問題になりやすいのが躁うつ病です。躁うつ病は気分障害であり、妄想に支配されるわけではないため、心神喪失で無罪になることはほとんどありません。ただ、重いケースでは心神耗弱で減刑されることがあります。

3.知的障害
重度の知的障害のケースでは検察官が不起訴することが多いです。中程度の場合は、決して多くはありませんが、心神耗弱が認められることもあります。軽度の場合は、完全責任能力が認められるでしょう。

4.発達障害

アスペルガー症候群などの発達障害では、ごくまれに心神耗弱で減刑されることがありますが、ほとんどのケースで完全責任能力が認定されます。

5.クレプトマニア
クレプトマニアであることのみを理由に責任能力を否定した判決は出ていません。欲しい物をとったという点で動機が理解可能なことが多く、心神耗弱になることもほとんどありません。

・責任能力と精神鑑定

起訴前は検察官、起訴後は裁判官が責任能力の有無や程度を判断します。

検察官は、犯行直後の被疑者の言動などから、責任能力が問題になると判断すれば、簡易鑑定や起訴前本鑑定の手続きをとります。

簡易鑑定は、医師が1回1時間くらい被疑者を問診するだけの簡単な鑑定です。起訴前本鑑定は、被疑者を2,3か月、精神科病棟や拘置所に留置して、医師が継続的に診察する本格的な鑑定です。
どちらの鑑定も、検察官が、検察庁に登録している医師の中から鑑定人をピックアップします。

殺人や放火などTVで報道されるような重大犯罪で責任能力が問題になるケースでは、起訴前本鑑定が実施されます。窃盗や住居侵入など軽微な犯罪では簡易鑑定しか実施されないことが多いです。

起訴後に責任能力が問題になる場合は、裁判所が鑑定を実施することもあります。裁判所が鑑定人の名簿のなかから医師を選び、被告人を診断させます。その後に医師の証人尋問を実施します。

以下サイトより引用

https://wellness-keijibengo.com/sekininnouryoku/


✔パーソナリティとは?

心理学におけるパーソナリティとは「人格」や「性格」のことであり、キャラクターは「性格」のことを指す。

同じ意味にとらえがちであるが、微妙に異なる。パーソナリティとは「後天的な性格」(生まれ出てから形成される性格)のことを指し、同時にその「その人らしさ」や「人柄」といった、その人特有の一貫した行動傾向の背景にある「人格」といわれるものを指す。

キャラクターとは「生得的な性格」(先天的にもっている気質・性質)のことを指す。キャラクターは個人の種(核)で一生変わることはないが、パーソナリティはその人の養育環境、親の躾の仕方、出会う人、知識やさまざまな経験によって形成され、変化していく。

パーソナリティ


✔パーソナリティ障害とは?



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パーソナリティ障害の基本的な特徴は、認知・行動特性の著しい偏りである。従来からその特性は、一般的な特性(平均値)からの違いが著しいもの、言い換えるなら、一般の人々との間に本質的な違いはないけれども、程度の差が特に大きいという性質のものだと理解されている。

従来の定義では、パーソナリティ(性格)とパーソナリティ障害の関係は明確にされていなかった。その結果、名称からの単純な推測によって、パーソナリティ障害は、「パーソナリティ」の障害だと誤解されることがあり、それを「性格が悪いこと」とか「回復が難しいもの」と見る向きがあった。

しかしそれは、決して性格の問題ではないし、十分に改善することを期待できる。なお、2013年に刊行された米国精神医学会の診断基準(DSM-5)に収載されている診断基準の一つでは、パーソナリティ障害が「パーソナリティ機能の減損」であると明快に定義されている。

✔パーソナリティ障害の人の特徴

・考え方の偏りが大きい
多くの人がこう考えるだろうというような「枠」から大きく反れており、ものの考え方に偏りがあったり、柔軟性がなく別の考え方を容易に受け入れらない。

・パターンが頑な
臨機応変に対応することができず、いつでもどこでも極端に偏った対応をし続ける。

・特定の原因がない
はっきりとした原因はわかっていない。思春期から青年期(18歳以上)頃より、パーソナリティ障害の傾向が出現しはじめると言われている。

自分のことを他者に分かってもらえないという虚しさやうまくいかないといった感覚を覚えるのに対し、他者はその問題行動に振り回されたり責められたりして大変な思いをさせられる。

これらによって、対人関係がスムーズにいかず、多くのトラブルを招いてしまうのである。

✔パーソナリティ障害の種類ついて

大きく分けて3つの群に分類される。

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✔A群パーソナリティ障害

風変わりな考え方や行動が特徴的で「変わっている」と思われている人が多いタイプのパーソナリティ障害である。統合失調症に類似した傾向が見られ、本人に問題意識がないことも多いため、治療を受けることが少ないタイプ。

・妄想性パーソナリティ障害
「他人が自分へ悪意を持っている」という他者への不信感や猜疑心が強く、自身を正当化する傾向がある。周囲の出来事や人の行動を自分に対して悪意があると解釈しがちな傾向がみられる。

→妄想性(猜疑性)パーソナリティ障害について
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A6%84%E6%83%B3%E6%80%A7%E3%83%91%E3%83%BC%E3%82%BD%E3%83%8A%E3%83%AA%E3%83%86%E3%82%A3%E9%9A%9C%E5%AE%B3

・シゾイドパーソナリティ障害
よそよそしく、社会との関わりの希薄さを認め、また、感情の表出が乏しい傾向にある。孤立することが多い。

→シゾイドパーソナリティ障害について
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%82%BE%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%91%E3%83%BC%E3%82%BD%E3%83%8A%E3%83%AA%E3%83%86%E3%82%A3%E9%9A%9C%E5%AE%B3


・統合失調型パーソナリティ障害
スキゾタイパルとも言われ、明らかな精神病状態ではなく、統合失調症発症には至っていないが、思考障害や対人関係において問題がある。魔術的思考など物事の捉え方が奇妙で、現実離れをしており、統合失調症との関連性が指摘されている。

→統合失調型パーソナリティ障害について
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B5%B1%E5%90%88%E5%A4%B1%E8%AA%BF%E5%9E%8B%E3%83%91%E3%83%BC%E3%82%BD%E3%83%8A%E3%83%AA%E3%83%86%E3%82%A3%E9%9A%9C%E5%AE%B3


✔B群パーソナリティ障害

感情が激しく、不安定なタイプ。自分に対するイメージや気持ちが不安定で、行動も劇的なため、周囲の人が巻き込まれやすいパーソナリティ障害。

・反社会性パーソナリティ障害 
倫理感や道徳観が薄く、問題行動を起こしやすい。時に、法に触れる水準で他者の権利を侵害することがある。問題を起こしてしまったあとに、矯正プログラムを受けることで社会復帰するケースが多いと言われている。

→反社会性パーソナリティ障害について
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%8D%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E6%80%A7%E3%83%91%E3%83%BC%E3%82%BD%E3%83%8A%E3%83%AA%E3%83%86%E3%82%A3%E9%9A%9C%E5%AE%B3


・境界性パーソナリティ障害
周囲への依存傾向が強く、周囲が支えきれなくなると激しい反応を示す。

→境界性パーソナリティ障害について
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A2%83%E7%95%8C%E6%80%A7%E3%83%91%E3%83%BC%E3%82%BD%E3%83%8A%E3%83%AA%E3%83%86%E3%82%A3%E9%9A%9C%E5%AE%B3


・演技性パーソナリティ障害
自分が悲劇の主人公であると思いたがり、他人の注意を引くための行動を繰り返す。誇張した感情表出を認めるものの、浅薄で変わりやすい傾向にある。対応する際は、無理に仮面を剥がそうとはせずに、冷静に接すること。

→演技性パーソナリティ障害について
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%BC%94%E6%8A%80%E6%80%A7%E3%83%91%E3%83%BC%E3%82%BD%E3%83%8A%E3%83%AA%E3%83%86%E3%82%A3%E9%9A%9C%E5%AE%B3


・自己愛性パーソナリティ障害
他人を思いやることが乏しく、自己を誇示し、称賛を集めることを求める。

→自己愛性パーソナリティ障害について
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%87%AA%E5%B7%B1%E6%84%9B%E6%80%A7%E3%83%91%E3%83%BC%E3%82%BD%E3%83%8A%E3%83%AA%E3%83%86%E3%82%A3%E9%9A%9C%E5%AE%B3


✔C群パーソナリティ障害

不安定感が強いタイプのパーソナリティ障害にあたる。また、分類不能のパーソナリティ障害もこの群に含まれ、このタイプは、多くの日本人に当てはまると言われている。

・回避性パーソナリティ障害
問題があった時に、立ち向かうのではなく、避けてやりすごすパターンを繰り返す。批判が怖いと考えているのが特徴。義務感を与えないように心がけ、本人の「やりたい」気持ちを尊重し、対応することがポイントになる。

→回避性パーソナリティ障害について
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%9E%E9%81%BF%E6%80%A7%E3%83%91%E3%83%BC%E3%82%BD%E3%83%8A%E3%83%AA%E3%83%86%E3%82%A3%E9%9A%9C%E5%AE%B3


・依存性パーソナリティ障害
自分で何かを決めたり、判断することができず、いつも決断を人任せにする傾向がある。従属的で他人に依存する傾向があり、そのため、自分で判断する練習を行い、その援助することが望まれる。

→依存性パーソナリティ障害について
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BE%9D%E5%AD%98%E6%80%A7%E3%83%91%E3%83%BC%E3%82%BD%E3%83%8A%E3%83%AA%E3%83%86%E3%82%A3%E9%9A%9C%E5%AE%B3


・強迫性パーソナリティ障害
完璧主義で、自分のルールや手順に固執する。対応する際は、なるべく本人のルールを尊重すると良い。

→強迫性パーソナリティ障害について
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BC%B7%E8%BF%AB%E6%80%A7%E3%83%91%E3%83%BC%E3%82%BD%E3%83%8A%E3%83%AA%E3%83%86%E3%82%A3%E9%9A%9C%E5%AE%B3


✔パーソナリティ障害の原因

下記5つの要因は、相互に複雑に影響し合っている。そのため、パーソナリティ障害の原因を1つに絞り込むことはできない。

そして、ここで重要となるのは、原因追求よりも「これからどのようにすれば良いか」を考えることにある。

①生まれ持った要因
同じ親から生まれていても、兄弟姉妹では、性格が異なる。活発か、おとなしいか、傷つきやすさ(ストレスへの強さ)や好奇心の強さなどの傾向はある程度定まっていると考えられている。

②脳の発達障害
子どもの脳が成長する過程で生じる障害が「脳の発達障害」だ。発達障害が全てパーソナリティ障害に結びつくわけではないが、幼少期にADHD(注意欠陥多動性障害)や学習障害(LD)などの症状があったにも関わらず、適切な治療を受けられなかった人がパーソナリティ障害と診断される割合は比較的高いことが判明している。

③環境・育て方
親が子どもにどのような関わりをしてきたかという以外にも、両親の関係や育った環境も大きく影響する。


④社会状況・時代背景
親の子どもの育て方や、子どもが何を理想とするかは、社会の影響が少なからずある。現代社会では、競争や自由がもてはやされる反面、道徳や社会のルールが重んじられない風潮があり、これらがパーソナリティ障害に深く関与していると考えられている。

⑤急激な変化
うまくいかなくなった状況に柔軟に対応できないため、親しい人との別れや大きな失敗体験などが、パーソナリティ障害が表面化するきっかけになることがある。

✔パーソナリティ障害と心の成長過程について

パーソナリティ障害を理解するには、私たちの心がどのように成長するのか、その過程を知ることが役に立つ。

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・乳児期
精神分析で有名なフロイトは、乳児期の育児方法がその後のパーソナリティ形成に大きな影響を及ぼすと考えた。

授乳に関しては、時間を決めて行うより、乳児が欲するときに授乳する方が安定したパーソナリティを形成する。
離乳の時期が早すぎると、不安定感や悲観的傾向を持たせる。
トイレを我慢する訓練を受けないと、金銭や時間にルーズなパーソナリティを形成しやすい。 一方、厳格な訓練をしすぎると、なんでも几帳面にしないと気が済まない、強迫神経症的なパーソナリティを形成しやすい。といったことである。

・幼児期
幼児期になると、「母親に自分の世話をしてもらう」という立場から、「自分でやってみる」という立場への転換が現れる。
母親の育児態度と子供がそれにどう応じるかによって、子供のパーソナリティ形成は異なってくると考えらている。

サイモンズ(アメリカの心理学者)によると、子供に対して支配的な親に育てられた子供は、礼儀正しく正直であるものの、自意識が強く内気な傾向が現れ、服従型の親に育てられた子供は、不従順で攻撃的であるものの、独立心が強い傾向が現れると言っている。

そして、否定的に育てられた子供より、保護的に育てられた子供の方が、社会的に望ましい行動が多く、情緒的にも安定していたという。

・児童期
この時期は、遊びと勉強が明確に分かれるようになる。 課題に対する義務感や責任感が養成され、課題の遂行に向けて自己を統制する訓練がなされるようになる。
教師や友人との関わりも増えるため、その関係性もパーソナリティの形成に大きな影響を及ぼすと考えられている。

教師から高い評価を受けた子供は、自信や優越感を持つようになり、低い評価を受けた子供は、失敗感や劣等感を持つようになる。
また、友人との関係は次第に複雑な関係性が生まれるようになってくる。集団の中で自分の地位を確立しようとしたり、自己主張が訓練される。
自己の役割や責任感、協調性の発達なども見られる。

このように、この時期には数多くのパーソナリティ特性が形成されていく。

・青年期
青年期は、激しい反抗や新しい価値を求めて揺れ動く不安定な時期。
11~2歳から始まり、22〜3歳頃までが該当する。
この時期には、自分自身のパーソナリティや能力、生き方、価値観などについて疑問や嫌悪感を抱く。

子供から大人への過渡期でもあり、それに伴い葛藤や悩みも多くなる。性的機能の始まる時期でもあり、精神的にも不安定になりがちでもある。
それまでの子供としての自分から、大人としての自分へと大きな心理的変換が求められる。

この時期の中心的課題は自己概念の形成となる。

・成人期

成人期は、22、3歳以降を指すと言われており、青年期同様、人生の転換期が存在する。

この時期に、就職、結婚、住居、生活様式の確立など、大人の世界で自分の立ち位置を明確にするいくつかの重要な選択を行うことになり、心身ともに最盛期であると同時に、社会的な圧力も大きく、ストレスの多い時代でもある。

・中年期(成人後期)
ユングは40歳ぐらいから始まる中年期を「人生の午後」と呼んだ。
中年期は人生の変動期でもある。

人生の前半で排除してきた自己を見つめ直し、新たな自己としてそれを取り入れることが課題となる。約80%の人が、漠然とした人生への幻滅感、停滞感、圧迫感、焦燥感などの「中年の危機」を体験するという。
職場での立場の変化、家庭では子供の独立、育児を終えた夫婦関係、親の介護などで変化が求められる時期になる。

・老年期
社会の中での役割がだんだん果たせなくなる。
以前からの習慣や考え方を重視する傾向が強くなり、自己中心的傾向が現れてくる傾向がある。過去に多くの関心が向けられるようになるため、愚痴と自慢が出やすくなるという特徴もみられる。

老年期の心理的・社会的不安の問題の多くは、死に対する不安が根幹にあると言われる。老年期は、発達の最終段階であり、愛に満ち円熟した精神状態に達することが課題となる。


このように人は、遺伝と環境の相互作用の中で自身のパーソナリティを再構築しながら成長していく。幼い頃に獲得したパーソナリティは後々まで尾を引くが、パーソナリティは大人になってからも再構築を繰り返す。

いつまでも子供の頃から成長しない人もいれば、年を重ねるごとに大きく成熟する人もいる。それは何処かのタイミングで望ましいパーソナリティの再構築を行ったかどうかの差によることが大きい。

✔パーソナリティ障害の治療

パーソナリティ障害そのものに効果のある薬は残念ながら無い。

二次的に生じる気分障害や不安に対して、抗精神病薬・気分安定薬・抗うつ薬が処方されることがあるが、部分的な効果しかなく、副作用が目立つため推奨はされない。 

✔そもそも論「障害」の概念について考える

考える

まず前提として共通理解を図りたいのが、「障害」という言葉の定義である。

いわゆる「障害のある人」と言われている人たちは、医師により何らかの障害の診断がおりている人のことを指す。身体障害の場合、障害のある、なしのラインは明確であるが、例えば発達障害の場合、障害のある、なしのラインは非常に曖昧である。

というのも、発達障害の場合、過去・現在の生活における行動特性や困りごとのヒアリングや質問紙、心理検査や発達検査の結果などを総合して診断がおりる。

つまり、脳の状態をMRIでとったり、血液検査をしたりして、明確に「ある」「なし」の判断がされるものではない。
そのため、特定の障害特性を有していたとしても、日常生活の中で困りごとがなければ、診断を受けていない人も世の中には多く存在するのだ。

関連してもうひとつ大切なポイントは、さまざまな障害特性にはグラデーションがあるということ。例えば、発達障害の特性として衝動性、興味関心の限定、こだわりなどは、よく有している特性であろう。

ただ、その特性がもともと濃いと、日常生活を送るうえで困難さが生じる可能性が高い。なぜなら、この世の中は特性の濃い人用にデザインされていないからである。

例えば、感覚過敏という特性のある人がいる。感覚過敏の特性が濃いと、不快に感じる音が多かったりする。聴覚過敏が薄い人や、むしろ聴覚が鈍感な人は苦手な音がそれぐらいかもしれないが、濃い人は黒板に爪を立てる音ぐらい不快な音だらけの世の中だったりするのだ。

このように、自分とは遠い全く別の特性が障害特性、なのではなく、連続性上にある。そして、特性の濃淡と用意されている環境との掛け合わせにより、困難さの増減がある。

世の中は聴覚過敏の人用にデザインされておらず、さまざまな音にあふれているため、当然、生活していく上で困難が生じる。一方で、その人自身が自分の過敏性を理解し、かつ周りの人も理解していれば、不快な音を立てないように周りが工夫したりすることもできるだろう。

✔「性格」なのか「障害」なのか?

これまでを踏まえて、答えは明確ではないだろうか。

「性格」か「障害」か。

障害特性は連続性であることから、障害特性があっても環境によって特に困難さを感じなければ、それはおそらく「性格」と呼ばれるであろう。

一方で、本人や周りが困難さを著しく感じており、自身が自分のことをより理解し、周りもその人を理解する必要がある場合は、医師に相談し診断名がおり「障害名」がつくであろう。そのため、困難な状況が起きたときに、原因が「性格」か「障害」で対応を判断するのは不毛であると個人的には現在感じていことだ。

性格であろうが障害であろうが、困難な状況は必ずその個人とその個人を取り巻く環境との相互作用の中で起きている。原因は個人の障害特性のみに起因するわけではない。

仮に障害特性があったとしても、その人に合った環境があったら、その人は生きやすくなる。それは、障害のない人にとっても同じである。

✔周囲の関わり合い、そして「理解」

周囲の人々とその人との関わりは、普段のその人との関係を基本とするべきで、特別に構えることは必要ない。

もちろん、過剰な反応が見られる時は刺激にならないようにする、調子が悪い時はいたわりの気持ちで接する、関わりを求めている時は負担にならない範囲で関わるといったことは必要である。

例えば、パーソナリティ障害の問題への対応は長くなることが多いので、長期的視点から見て持続可能な関わり方の形を作ってゆくことが大切になってくる。

その際、関わり方が社会で一般的なものかどうかは、そこで無理が生じるかどうかをチェックする大事なポイントになる。

もしもその人との関わりが、負担が大きすぎると感じられたなら、別に相談できる人やサポーターを捜すことは一つの重要な対応法にもなり得る。

社会的に容認できない行動が見られた時には、それをしないように忠告するといった一般的な対応をするべきだが、すでに警告がなされていたり、処罰が行われたりしているのなら、追い打ちをかけるようなことは避けるべきでだろう。相手を傷つけないように、同時に自分が傷つかないようにという一般的な原則は守られなければならない。

周囲の人々に理解して欲しいのは、当人が自分の問題に本格的に取り組むまでに準備期間を長くとらなければならない場合があるということだ。当人に問題に取り組む姿勢が長く欠けていたとしても、悩んだ末に自分から精神科治療を求めるようになることは稀ならず起こる。

治療が開始されない段階でも、その人は問題解決のための準備を進めていると考えるべきだろう。焦って治療を無理に勧めるのは、よい結果を生まないことが多い。むしろこの時期には、周囲の人々は、その人がじっくり考えることができるように配慮して欲しいと思う。

まずは困難な状況について整理することから考えよう。どんなときにどんな困難な状況が起きるのか。例えば、対応に悩む行動がある場合は、その行動がどんなときにどんな環境や状況で起きるのか、を整理することをおすすめしたい。

ともあれ、周囲にいる人々が、その人に対する愛情、親しみ、友情など、長い時間培われた結びつきを大事にして関わることこそが、最良の選択ではないだろうか。



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