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またゆき君の小説シリーズ

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記事一覧

小説「13歳のランドセル」

小説「13歳のランドセル」

振り返れば私って、もう13歳だ。
なんでだろ、家…いや部屋から出れなくなったのって。
小学生ン時って、そんなんでもなかったけどな~。
なんて、もう今は出番のない部屋のはしっこにあるランドセルを見ながら私は思っていた。

いつからだろう。〝誕生日祝い〟ってのがモノがなくなったって。
それどころか、ついこないだまで背負って通学していたランドセルも、じ~ちゃん、ば~ちゃんに買ってもらったりして昔っていろ

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不完全ミステリー「相中探偵俱楽部」~こんな命、あんな命~

不完全ミステリー「相中探偵俱楽部」~こんな命、あんな命~

命ってのはいろいろあると思うが、アリたちの命ってどうだろう。
私たちは小さい頃虫たち相手に遊ぶとアリだのダンゴムシだのをいじめてた。場合によっては…。
思い出すとエグイからこれぐらいにしておくけど、とにかくじゃあニンゲンの命って何だろう、と。そう思ったことがあるので書くね。

「ハァ~ア…」
これは私のあくびだ。中学3年生になった私は
パソコン、パソコン、ちょっと受験勉強、パソコン、パソコン、ケー

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SF小説「高校電力」

SF小説「高校電力」

いつからだろう。

私たち高校生が〝電力〟になっちゃうのが決まったのって。

どうあがいたって、しょうがないのかな…。

それとも…?

私たち、高校生は、まあどこにでもあるような田舎の高校の三年生だ。

そろそろ進路先もしぼらないとイケナイ時期だけど、

特に将来やりたいことがあるって訳でもない。

そんな時だ、担任の先生から呼び出されたのは。

最初、何言われるかとドキドキしたけれど…。

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小説「まねーびと」

小説「まねーびと」

世の中…ってヒトコトで表すなら、なんと言えるだろう…?
〝愛〟…なんて気恥ずかしい言葉が言えるのは、おれとは縁遠い世界な感じがする。ってな具合の〝その年の世相を一文字で〟みたいに言えるのは、おれが思うにズバリ〝金〟だ。そんなことを感じたことがあったので書いておくこととしよう。

その日もおれは仕事帰りで疲れ果てていた。
そんな時だ。フト、スマホで良さげなアプリがあったのでダウンロードしてみた。ろく

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小説「エア・リーダー」

小説「エア・リーダー」

おれはある日を境に空気が読めるようになった。と言っても、いわゆる〝その場の空気が分かる〟とか、そういう意味じゃない。本当に空気に書いてある字なんかが読めるようになったのだ。このことはコミュ障だったおれにとって、まさしく希望のタネとなった。うれし~な~。

おれがコミュニケーションが苦手だと気が付いたのは、いつ頃だったろうか。昔っから絵を描いたり本を読むのは好きでも、いわゆる皆とそろって遊ぶのが苦手

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小説「行け行けコミュ障野球部」

小説「行け行けコミュ障野球部」

ううむ、思えば何で、おれってばコミュ障のくせに野球部なんかに入ったんだろ。だってさ、野球部なんかって言ったらさ、運動神経も求められるのに、挨拶なんかもろくに出来なかったおれに務まるわけないじゃん!でも、まあ、せっかく入ったことだし、頑張ってみよう(ちょっとはね)!

おれの下の名前は、昔に活躍したあるプロ野球選手の名前から取ってオヤジが命名したそうだ。とは言ってもおれが野球に興味を持ち出したのは同

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SF小説「Tea-ZONE」(ティー・ゾーン)

SF小説「Tea-ZONE」(ティー・ゾーン)

私たちは訳あって別々の惑星に移り住むこととなった。嘆いていても仕方がないと思いつつ、ここまでの経緯経過を振り返ると後悔が先に立ってしまう。考えすぎてはイケナイ。前を見ないと…。

2☓☓☓年、私の父が開拓移民としてやってきた頃の惑星〝グリーン〟は、その名とは程遠いほど、見渡す限りの荒野だったという。その辺からの苦労は私が幼い頃に散々聞かされたが、その甲斐もあり、同じ開拓移民としてやってきた母と出会

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小説「ナンバー❛90」

小説「ナンバー❛90」

おれは、この日もあるビデオを見ていた。

しかも、レンタルで借りたものではなくTVから録画したヤツだ。そのうちテープが擦り切れるんじゃないかと心配になったが、他に見るものがなかったのだ。そんなある日。

この日も朝から家を出て街をブラブラと歩いていた。

するとティッシュを配っている人がいた。それとなく近くまで歩いていたらティッシュを渡されかけたが、おれはもらい損なった。そこで一つの運試しと思った

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小説「ビデオ屋ヒデキ」

小説「ビデオ屋ヒデキ」

おれは今でこそビデオ屋をしているが、これでもれっきとした…ニートだったんだ。って威張れないよな。

おれは長い長~い引きこもり生活をオサラバしてやっとこさ職に就いた。と言っても家業であるビデオ屋を手伝っているだけと言っていいのか。

おれのオヤジがビデオ屋を始めたのはいつ頃だっただろうか。子供の頃のおれはAVのコーナーばかり行っては怒られていた。

しかし、オヤジが倒れてからというもの、オフクロと

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ショート・ショート「ヤッカイくん」

ショート・ショート「ヤッカイくん」

おれは、とある実験室に来ていた。

しかし、しかしだ。多額の報酬とやらにまんまと話を乗せられてモニターになったのは、良かったものの…。

とほほほほほほ。

何でこんなことになっちゃったんだろ…。を~!

おれはその日もスマホを見ていた。

と言っても特別な用事があって見ていたわけではない。

大学生になったおれだったが、こんな御時勢だもんでオンライン授業と通学の半々な状況で思い描いていたキャンパ

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