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【連載詩集】No.43 あの子はバンクシーが好きだったんだ。


あの子はバンクシーが好きだったんだ。

手榴弾の代わりに花束を投げる男の絵。

目を輝かせながら魅力を教えてくれた。


あの子はバンクシーが好きだったんだ。

ペイントに汚れた服がトレードマーク。

今でも覚えているのは絵を描く後ろ姿。


あの子はバンクシーが好きだったんだ。

芸術って言葉は嫌いでアートが好きで。

時には意見をぶつけ合いながら語った。


あの子はバンクシーが好きだったんだ。

今では絵を描かなくなったのだろうか。

彼女が描く新しい絵を見てみたいけど。


あの子はバンクシーが好きだったんだ。

シュレッドされた幼い少女を見た時に。

遠い記憶の中にいた友達を思い出した。


あの子はバンクシーが好きだったんだ。

僕は今もまだ諦めず静かに文章を書く。

消えることなく生きている言葉はある。


あの子はバンクシーが好きだったんだ。

少女はシュレッダーにかけられたけど。

ハートの風船はまだ綺麗に残っていた。


記憶だけは、切り刻まれることはない。






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