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ワインジャーナル

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ワイン科学を軸に、マーケティング、ブランディング、テイスティングなど幅広くワインについて語るジャーナル。書き手は国内外の大学、大学院でワインを研究してきた3人。
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#山梨

KDP第2弾『ワインと微生物学』

KDP第2弾『ワインと微生物学』

お久しぶりです。

最近更新できていなかった理由です。

本を書いていました。

なるべく仕事がはじまる前に終わらそうと思っていたので、なんとか2月中にリリースできてよかったです。

今回は前回のワインリテラシーとは全く別の系統の話。

醸造における微生物の話です。
アマゾンの方にもるのですが、目次はこんな感じです。

内容はこのnoteに書いてある酵母やブレタノマイセス、酢酸菌の話を中心に、乳酸

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朝ワイン英語講座でのQ&A(7/8~12)

朝ワイン英語講座でのQ&A(7/8~12)

今週から新たに山梨の若手醸造家が1人加わり5人態勢でやっています。
まだまだ人増えても問題ないと思うので、気になる方は是非参加してください。
お試しでとりあえず1回とかだけでも大丈夫ですよ。現在も皆さん参加頻度はまちまちなので。

ということで今週のハイライトです。
ブドウに関する環境要因や成長サイクルなんかがメインの章になっています。
半分ぐらいしか進んでないので来週も引き続き5章を進めていきま

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ブドウの養分動態分析法~葉柄分析~

ブドウの養分動態分析法~葉柄分析~

今回は葉柄分析という手法に関してです。
分析結果を眺めて土壌や樹勢との相関や因果関係を仮説から導き出すのはなかなか面白いです。

葉柄(ようへい、英語:Petiole)は、植物において葉と茎を接続している小さな柄である。 通常は茎と同じ内部構造を持つ。 葉柄の両側に伸長した部分は托葉といい鞘状に巻いているものは托葉鞘という。

今回はこの葉柄部分を使った分析を紹介する。

これは一度調べたのだが、

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コルクとスクリューキャップの比較テイスティング

コルクとスクリューキャップの比較テイスティング

前回の栓の選択というところに絡んだお話です。

夢は家に飲んだワインのコルクでアートを作ることです。
どうもおくむらです。

いつもは論文とかデータを重視しているので堅い文章になりがちなのですが、今回は経験に基づく話をします。

こういった話の方が読者の方にとっては面白いのではないかなとは思いますし、書きやすいのですが、こういった方向性を多くしてしまうと、重い方をそっちのけでやってしまうのであまり

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酸化還元と香り/色/テイスト

酸化還元と香り/色/テイスト

前回は瓶熟に関する基本と、瓶熟に関する酸素とコルクの関係を見てきた。

ここからはその酸素の量によって規定される酸化還元状態とワインの関係性を見ていきたいと思う。

酸化還元状態と香り/色/テイスト

酸化による色の変化というのは以前の酸化の話でしたように思う。
化学酸化と酵素酸化によってカテコールがキノンになって、それが重合することで褐色化するといった話だ。

ここではもう少し深くアルデヒドに触

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栽培醸造家はパラディンだ。

栽培醸造家はパラディンだ。

皆さんはパラディンという職業を知っているだろうか。

パラディンはドラクエでよく出てくる上級職だ。

この上級職に就くには転職条件があり、僧侶と武闘家をマスターしていなければならない。

そしてワインメーカーは「パラディン」なのである。

もっとも別に上級職であればバトルマスターでも賢者でも何でもいいのだが、私はパラディンの響きがスキなのでただパラディンと称しているだけである。

なぜパラディンな

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ワインにおける亜硫酸の代替法-抗菌作用編

ワインにおける亜硫酸の代替法-抗菌作用編

前回は亜硫酸の効果の1つである抗酸化作用についての代替法を見てきました。

今回は亜硫酸のもう1つの作用である抗菌作用についての代替案を見ていきたいと思います。

サーモヴィニフィケーション(Thermo Vinification)

サーモヴィニフィケーションという技術がある。

これは除梗破砕が終わった後の発酵前の果汁が70℃程度になるように下の図のような装置で10分ほど熱を加えるというもので

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ワインにおける亜硫酸の代替法-抗酸化剤編

ワインにおける亜硫酸の代替法-抗酸化剤編

亜硫酸が抗酸化作用と抗菌作用の両方を持つ唯一無二の添加物であるということを以前の稿で述べました。

一方でトレンドとしてナチュラルワインといったものや、減亜硫酸ワインといったものがあるのもまた事実です。

ではどのようにして減亜硫酸ワインというのを作るのでしょうか。

亜硫酸を減らすだけでも減亜硫酸ワインはできますが、減亜硫酸という環境下でいかにしてワイン造りをコントロールしていくかということが重

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ワインにおける亜硫酸の効用と添加法

ワインにおける亜硫酸の効用と添加法

やっと来ましたみんな大好き亜硫酸です。
今日から3日間にわたって亜硫酸の効果や添加、亜硫酸の代わりになるものといったテーマで扱っていきます。
明日以降の代替品のパートに関しては、少し詰めが甘い部分もありますが、それでもいいボリュームになっていると思います。

亜硫酸の形態
亜硫酸はワインの生産においてかなり重要な役割を果たす。
その役割は抗酸化作用と抗菌作用の2つに大別される。
そしてこの2つの作

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ブドウ栽培での灌漑のタイミングと影響

ブドウ栽培での灌漑のタイミングと影響

今回が灌漑の準最終回です。

最終回は実験結果が出て、友人の論文を主にしたものになると思います。

灌漑のタイミング
灌漑のタイミングによって色々な効用がある。

タイミングは大きく分けて3パターン。

もちろんその3パターンのうちどのタイミングで水分ストレスがかかっているかといったことはその年の気候によっても違うので、タイミングに関しては前述の記事を参照にしていただけたらと思う。

まずその3パ

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ブドウ栽培での灌漑方法と特色

ブドウ栽培での灌漑方法と特色

前回は灌漑のおおまかな背景と灌漑をする際の水分ストレスの指標についてみてきた。

今回はそのストレスを軽減するための灌漑の方法について見ていく。

灌漑の方法(冠水とスプリンクラー)灌漑の方法は多岐にわたる。
原始的なのは「Border(区画)方式」、「Furrow(畝)方式」、「Flood方式」の3つだ。

前者の2つは畝やプロットの周りの溝を冠水し、それによってブドウに水分を与える方法になる。

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写真は先日のニースにて。
リュリーのワインは2010年産
Domaine Chanzyというところのワインで、9~10€程でした。
話の内容の半分は古木について語っています。
そのエビデンス部分は翌日の記事になりますのでお楽しみに。

ワインコラム/記事:サイトまとめ

ワインコラム/記事:サイトまとめ

ワインについて調べるときって単語で検索して、とりあえず見つけたサイトに行って調べるっていうフローが多いと思うんですよ。

けど同じトピックでもサイトによって書かれている内容の深さはバラバラ。
NAVERのワインサイトまとめもほとんど機能してないんですよ。

なのでワインに関する記事を書いているサイトを初心者向けから上級者向けまでまとめ直そうかなと思いました。

有名どころからちょっとマニアックなサ

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ワイン造りにおける酢酸菌対処法

ワイン造りにおける酢酸菌対処法

前回までの長い前振りは酸化についてと酢酸菌についてでした。

これで酢酸菌最終回になります。
ページの最後に数回の記事分をまとめてPDF化したものもあるので、マガジン購入者の方はPDFでダウンロードしておいていただければと思います。

今回は一番気になる酢酸菌の対処法を取り上げます(過去最長記事になりました)。

酢酸菌防除法
まずオーソドックスな酢酸の防除法は以下であり、あとはその組み合わせで行

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