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エッセイ集

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2022年11月の記事一覧

東京のブルックリン、蔵前で味わった敗北

東京のブルックリン、蔵前で味わった敗北

脈がある片思いは幸福だけれど、脈が全く感じられない片思いは絶望そのものだ。「東京のブルックリン」と呼ばれる蔵前には、デートで足を運ぶカップルたちがたくさんいた。

たくさんのカフェが並ぶ蔵前は、デートにうってつけの場所なのだろう。少し距離はあるけれど、隅田川沿いを歩けば浅草にも行くことができる。おしゃれなお店でランチをして、隅田川沿いを手を繋いで歩いて、浅草へと向かう。夕方ごろにたくさんの人が集ま

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徐々に擦り減る心身、朱色に染まった原稿、辛うじて生き延びている現在

徐々に擦り減る心身、朱色に染まった原稿、辛うじて生き延びている現在

もしも文章家として有名になったら、街で知らない人からいきなり声をかけられたり、恋人とのデートが週刊誌に取り上げられたりするのだろうか。問題を起こした際には、釣りタイトルを使われて、僕自身がSNSで大炎上して、もう二度と人前に姿を見せたくないと思えるほどに袋叩きにされるのかもしれない。そんな現実が起きるのであれば、有名になんてなりたくない。なんて、ありもしない妄想に1人で耽っていた。

しかし、現実

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言わせてみてぇもんだ

言わせてみてぇもんだ

お昼頃からくだらぬテレビをつけっぱなしにして、気がついたら日が沈んでいた。書いても書いても終わらない原稿にどんどんプログラムが消化されていくテレビ番組。うまくいっていたはずの原稿を気に入らないからという理由ですべて白紙に戻す。

テレビの音声だけを聴きながら、原稿と向き合っていた。ニュース番組には連日、日本代表の話題ばかりが取り上げられている。下馬評を見事に覆し、ドイツに逆転勝ち。スペインとドイツ

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曇天

曇天

不幸にも、私の人生には不幸がなかった。

特別裕福な家庭ではなかったけれど、何不自由なく育てられてきた。大学まで当たり前のように通わせてもらい、大人になった今も家族仲はいいほうで、恋もそれなりにしてきた。振られることも振ったこともあるけれど、そんなものは誰もが経験することなのだから、特段気にするほどでもない。

就職活動はある程度の学歴があったため、お祈りメールに悩まされながらも、第一志望の企業に

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やさしいキスをして

やさしいキスをして

最初から自分のものにはならないとわかっている恋だった。年上男性に恋をした私には最初から勝ち目がなかったのだろう。でも、賢治との関係を都合のいい関係なんて都合のいい言葉で片付けたくない。決して綺麗な恋ではないけれど、1人の人間を本気で愛することができると知った恋だった。

ずっと自分の意見がない人間だった。親に叱られても、口答えをしない聞き分けのいい子どもだ。説教中に親に口答えをすれば、それが原因で

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何者かになりたかったら東京に行きなさい

何者かになりたかったら東京に行きなさい

通り過ぎる人並みに飲まれるその様は、何者でもない感覚を味わうに値した。

「何者かになりたかったら東京に行きなさい」とお世話になった経営者が言った。大きな肩書きを持った人が話す言葉だ。きっと何かがあるに違いないと学生時代の自分は盲目的になっていた。

渋谷駅前の巨大なスクリーンに映し出されているとあるアーティストから放たれる大きな歌声を掻き消すかのように、スクランブル交差点の人だかりが右往左往する

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裏切ったのは、僕だった

裏切ったのは、僕だった

小学生のときに一緒にサッカー選手になる約束をした友人がいる。平日だけでなく、土日も一緒にグラウンドでサッカーの練習をする毎日。彼の家の前で壁蹴りをしていたときに、近所に住むおじさんに「うるさい」と叱られた思い出が今も鮮明に思い浮かぶ。

友人がキャプテン翼にハマった。僕も同じようにハマり、翼くんのドライブシュートや日向のタイガーショットなどを何度も真似した。ある日、友人がロベルト本郷のバーに当てて

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最低で最高な人生

最低で最高な人生

「将来はどうなっていたい?」

自分の将来を何も考えていない大学生だった。そもそも将来をきちんと考えている大学生は少ないような気がする。残された青春をどうやって楽しむか。学校やアルバイト、サークル、遊びなどそれが頭の中を占めるのが大半だろう。

教育学部に通っていたため、エスカレーター式で進めまば、学校の教員になることはできた。何でもかんでも抱え込む性格だったため、教員になったら自身が潰れることは

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古書の街、神保町は本好きにとってまさに天国だった

古書の街、神保町は本好きにとってまさに天国だった

初めて神保町に足を踏み入れたときに、僕は圧倒された。古書店が多いと噂で聞いていたのけれど、本当に古書店に塗れた街だった。どこを歩いても古書店が並んでいて、その景色は見たことがない美しいものだった。

今回神保町に足を運んだ理由は、古本まつりが開催されていたためだ。駅を出てすぐの場所に「さぼうる」があった。生いちごジュースやソーダ水、ナポリタンが美味しいと聞いていたため、すぐに入れるようであれば、行

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