世田谷ピンポンズ

フォークシンガー。HP: http://setapon.boy.jp/ twitter…

世田谷ピンポンズ

マガジン

  • 品品喫茶譚

    暇さえあれば喫茶店に行く。テーブルの上に古本屋で買った本を広げて、珈琲を飲む。ぼーっと窓の外の風景を眺める。 初めて訪れた街では喫茶店を探し、住み慣れた街に新しい喫茶店を見つけては歓喜する。 喫茶店を中心とした日々の生活記録。

  • 雑文

    過去の随筆・習作です。

  • 尾道滞在記

    一週間の尾道滞在記録。

  • Sアパートメントの記

記事一覧

品品喫茶譚 第93回『姫路 大陸 木山捷平展でシングするのこと』

朝早く姫路に着いたので、大陸でモーニングを決めることにした。 私は大抵、細長く奥まった店内の一等手前、入り口からすぐの席に座ることが多く、このときもその席をチョ…

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品品喫茶譚第92回『神戸 ファイン』

ファインに入り、私たちは今夜の凡夜READING CLUBトークパートの打ち合わせをする。と共に、とにかく一息つきたい心持ち。 三月も半ばを過ぎると、みるみる春が顔を出し始…

品品喫茶譚 第91回『神戸 ファインの一個手前』

チェックイン開始時間の十分前にロビーについた。 こういった場合、タイミングによっては少し早めに部屋に入れることが結構あるので、とりあえずフロントに行ってみる。 「…

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品品喫茶譚第90回『京都 逃現郷 華麗なカレー』

ここ最近、茶の間にカレーを食べに行くことが多いため、少し辛いカレーに親しみ過ぎていた。 今回は逃現郷という喫茶店でカレーを食べてきた。と、またカレーか、これって…

品品喫茶譚第89回『京都 茶の間 やはりカレーは辛い』

前回の文章より一週間後、また茶の間にカレーを食べに行った。 前は小雨降りしきる中をチャリで乗りつけた私だったが、今日は市バスで店を目指した。 自室の最寄りバス停か…

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品品喫茶譚第88回『京都 茶の間 カレーは辛い』

今年、スケジュール帳を購わなかったことを結構な頻度で後悔している。 スマホを駆使してスケジュール管理しているわけでもないので、結局、細かい紙のメモを仕事机のとこ…

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品品喫茶譚第87回『京都 ゴゴ 野暮生活者が二人』

ゴゴに入ると、生憎テーブル席は埋まっていた。 少し遅れるという藤井を待つ間、カウンターで今日のトークライブで話すことを簡単にまとめてみる。トークはつかみだ。つか…

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品品喫茶譚 第86回『またいつものカフェバー』

タイヤの空気が少し甘い気がするが、気にしないふりをして自転車をガレージから出した。日が伸びたとはいえ、十八時半ともなると街はすっかり暗闇に包まれている。少し先の…

品品喫茶譚 第85回『長崎 冨士男』

土曜日。ってやっぱり今日ですやん。 九州へ。 とても大切な用事があり、そのあと最後の最後、京都へ帰る前に長崎に少しだけ寄る時間ができた。いま街はランタン祭りの真っ…

品品喫茶譚 第84回『京都 行ったことのない近くのカフェといつものカフェ』 

土曜日。って今日やんけ。昼に思い立って蕎麦屋へ行く。けいらんそばというあんかけに卵としょうがを入れたやつを食い、汁までごくごく飲んだ勢いでそのままだし巻き卵も注…

品品喫茶譚 第83回『栃木 日光 フルール』

とにかく風の強い日だった。 風は冷気を運んでくる。この日、日光に集った私、Kさん、Aさんの三人はもろにその冷気の餌食となった。もっともこの日を挟んだ前後、街には…

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品品喫茶譚 第82回『いまさらホールデン・コールフィールドに影響されて喫茶店を訪れた男』

喫茶店で珈琲を注文するときにさ、店員さんが「フレッシュやお砂糖はどうしますか?」って聞いてくれることがあるだろ?  そういうふうに聞いてくれるときは大丈夫なんだ…

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品品喫茶譚 第81回『東京 新宿 ピース 「みそか」のこと』

ここ数年、年納めのライブを東京の高円寺でやらせてもらっている。 一年の締めくくり、来年への布石、とにかく色々なことを考える大切な時間である。 ライブと同時に毎年恒…

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品品喫茶譚 第80回『京都 翡翠 実家のものと同じ柄のソファー』

先日、両親が京都に来た。 私はこの街に住んで十年になるが、初めてのことだ。 北大路堀川の交差点近くに「翡翠」という喫茶店がある。喫茶譚でも何度か取り上げたことのあ…

金田一少年の事件簿を処分する。

「六体のミイラを七体に見せかけるやつは?」 「異人館村殺人事件!」 「雪夜叉伝説の犯人は?」 「綾辻さん!」 大学生の頃、暇を持て余した僕たちは金田一に登場する殺…

品品喫茶譚 第79回『横浜 少しだけ大学院』

高校生のころと言えば、さるフォークデュオの楽曲をひたすら練習、CD、ビデオ鑑賞の嵐、挙句、ファンクラブにまで入り、たまに東京にまで出張っていって、ライブへ参戦、グ…

品品喫茶譚 第93回『姫路 大陸 木山捷平展でシングするのこと』

品品喫茶譚 第93回『姫路 大陸 木山捷平展でシングするのこと』

朝早く姫路に着いたので、大陸でモーニングを決めることにした。
私は大抵、細長く奥まった店内の一等手前、入り口からすぐの席に座ることが多く、このときもその席をチョイスした。
以前、文学フリマ東京で私のブースに寄って下さったお客さんから、この店をテーマに作った『大陸』(そのままである)という曲をお店の方が知って下さっている、という情報を得ていたため、今日はギターも担いできたし、髪型も昔からの私のトレー

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品品喫茶譚第92回『神戸 ファイン』

品品喫茶譚第92回『神戸 ファイン』

ファインに入り、私たちは今夜の凡夜READING CLUBトークパートの打ち合わせをする。と共に、とにかく一息つきたい心持ち。
三月も半ばを過ぎると、みるみる春が顔を出し始める。この日もそんなかんじで、元町のアーケードを歩いているうちに二人とも結構暑い、喉が渇いた、流石に早すぎるかもしれないけれど、ここは冷たいやつを一発決めたい、という精神状態になっており、たとえばアイス珈琲、たとえばソーダ水など

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品品喫茶譚 第91回『神戸 ファインの一個手前』

品品喫茶譚 第91回『神戸 ファインの一個手前』

チェックイン開始時間の十分前にロビーについた。
こういった場合、タイミングによっては少し早めに部屋に入れることが結構あるので、とりあえずフロントに行ってみる。
「時間になったら名前をお呼びしますので、もうしばらくロビーでお待ち下さい」と言われる。
早まった。うわずった。前のめった。
思えばロビーには他にも数組の宿泊予定者が座っている。とりあえず椅子に座って、前に二台あるエレベーターを見つめる。

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品品喫茶譚第90回『京都 逃現郷 華麗なカレー』

品品喫茶譚第90回『京都 逃現郷 華麗なカレー』

ここ最近、茶の間にカレーを食べに行くことが多いため、少し辛いカレーに親しみ過ぎていた。
今回は逃現郷という喫茶店でカレーを食べてきた。と、またカレーか、これってカレーの食べ歩きブログでしたっけと思う方もいるかもしれない。しかし私は実際カレーばかり食べている訳ではないのである。いつも行く喫茶店にも当然足繁く通い、たらこスパゲッティやバジリコスパゲッティを食べたりしているのだが、それだと文章がスパゲッ

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品品喫茶譚第89回『京都 茶の間 やはりカレーは辛い』

品品喫茶譚第89回『京都 茶の間 やはりカレーは辛い』

前回の文章より一週間後、また茶の間にカレーを食べに行った。
前は小雨降りしきる中をチャリで乗りつけた私だったが、今日は市バスで店を目指した。
自室の最寄りバス停から出ているバスだと、店から少し離れたところに停まるので、少しウォーキングする必要があるのである。今回はそのウォーキングのせいもあってか、ビーフカレーに辛さは普通というお馴染みのやつに、ライスは大盛というチョイスをした。
前回の文章で、私は

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品品喫茶譚第88回『京都 茶の間 カレーは辛い』

品品喫茶譚第88回『京都 茶の間 カレーは辛い』

今年、スケジュール帳を購わなかったことを結構な頻度で後悔している。
スマホを駆使してスケジュール管理しているわけでもないので、結局、細かい紙のメモを仕事机のところに阿呆のように貼りまくる、という愚行に及ぶことになってしまっている。しかも思いついたときにまたメモり、何度も同じようなことを書いて貼ってしまう。
しかし同じようなことを何度もメモることによって、そのスケジュールを都度確認できるという意味に

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品品喫茶譚第87回『京都 ゴゴ 野暮生活者が二人』

品品喫茶譚第87回『京都 ゴゴ 野暮生活者が二人』

ゴゴに入ると、生憎テーブル席は埋まっていた。
少し遅れるという藤井を待つ間、カウンターで今日のトークライブで話すことを簡単にまとめてみる。トークはつかみだ。つかみがいつももたつくからダメなのだ。そして、話したいことは文章にするのではなく、箇条書きで。こういった当たり前のことをちゃんとやらないといけない。私は藤井青銅さんという放送作家のトーク本を事前に読んできたのである。今日のトークはきっと大丈夫だ

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品品喫茶譚 第86回『またいつものカフェバー』

品品喫茶譚 第86回『またいつものカフェバー』

タイヤの空気が少し甘い気がするが、気にしないふりをして自転車をガレージから出した。日が伸びたとはいえ、十八時半ともなると街はすっかり暗闇に包まれている。少し先の横断歩道まで行く手間を横着する癖がずっと抜けない。車のヘッドライトの途切れた隙をついて、アパート前の通りを向こう側に渡る。思いきってペダルを踏み込むと、後輪がベコベコと情けなくアスファルトをこする音がした。いまなら自転車をガレージに戻して、

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品品喫茶譚 第85回『長崎 冨士男』

品品喫茶譚 第85回『長崎 冨士男』

土曜日。ってやっぱり今日ですやん。
九州へ。
とても大切な用事があり、そのあと最後の最後、京都へ帰る前に長崎に少しだけ寄る時間ができた。いま街はランタン祭りの真っ只中である。街中に関羽だ、仙人だ、稚児だ、龍だ、と色とりどりのでかいランタン?が惜しげもなく飾られている。壮観である。
覚束ない記憶を頼りに川沿いから『冨士男』を目指す。ここ十年、長崎に来るたびに必ずと言っていいほど寄ってきた喫茶店である

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品品喫茶譚 第84回『京都 行ったことのない近くのカフェといつものカフェ』 

品品喫茶譚 第84回『京都 行ったことのない近くのカフェといつものカフェ』 

土曜日。って今日やんけ。昼に思い立って蕎麦屋へ行く。けいらんそばというあんかけに卵としょうがを入れたやつを食い、汁までごくごく飲んだ勢いでそのままだし巻き卵も注文して食べる。思えば昨日もゆで卵を食べた。卵ばかりだなあと思う。

帰り道、まあまあ家の近くにあるカフェに行ってみることにした。この街に住んでそこそこ長いことになるが、初めて入る店である。
このカフェ、珈琲も美味しかったが、とにかく音楽が良

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品品喫茶譚 第83回『栃木 日光 フルール』

品品喫茶譚 第83回『栃木 日光 フルール』

とにかく風の強い日だった。
風は冷気を運んでくる。この日、日光に集った私、Kさん、Aさんの三人はもろにその冷気の餌食となった。もっともこの日を挟んだ前後、街には結構な雪が降ったので、この日がマシなほうではあったのかもしれない。
私の故郷は日光である。栃木は分からなくても日光といえば分かるという感じのわりあい有名な観光地だが、大学生になるまでの十八年をこの街で生活した私にとって、かの街の観光地然とし

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品品喫茶譚 第82回『いまさらホールデン・コールフィールドに影響されて喫茶店を訪れた男』

品品喫茶譚 第82回『いまさらホールデン・コールフィールドに影響されて喫茶店を訪れた男』

喫茶店で珈琲を注文するときにさ、店員さんが「フレッシュやお砂糖はどうしますか?」って聞いてくれることがあるだろ? 
そういうふうに聞いてくれるときは大丈夫なんだよ。一言、ブラックで、これで済んじまうんだけど、困るのは、聞いてくれなかったときなんだな。
もちろんそんなときでもブラックで、ってちゃんと言えるときもあるんだけど、なんだか色々なタイミングを逃しちゃってさ、どうしても言えないときがあるんだよ

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品品喫茶譚 第81回『東京 新宿 ピース 「みそか」のこと』

品品喫茶譚 第81回『東京 新宿 ピース 「みそか」のこと』

ここ数年、年納めのライブを東京の高円寺でやらせてもらっている。
一年の締めくくり、来年への布石、とにかく色々なことを考える大切な時間である。
ライブと同時に毎年恒例になりつつあるのがピース納め。年末には新宿西口の喫茶店・ピースへ行く。ということで、今年もしっかりと納めてきた。
28日ともなると、街はすっかり年末の慌しさで、ポツポツ帰省する人も増えるために、結構人はまばら、独特の忙しなさがある。私は

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品品喫茶譚 第80回『京都 翡翠 実家のものと同じ柄のソファー』

品品喫茶譚 第80回『京都 翡翠 実家のものと同じ柄のソファー』

先日、両親が京都に来た。
私はこの街に住んで十年になるが、初めてのことだ。
北大路堀川の交差点近くに「翡翠」という喫茶店がある。喫茶譚でも何度か取り上げたことのある店で、私の京都でのベストフェイバリットカッフェのひとつである。
私がこの喫茶店を好きな理由のひとつに、実家にあるのと同じ柄のソファーが置いてあるということがある。私はそのことを歌にして歌ったり、何度も文章に書いたりした。
今回、両親はが

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金田一少年の事件簿を処分する。

「六体のミイラを七体に見せかけるやつは?」
「異人館村殺人事件!」
「雪夜叉伝説の犯人は?」
「綾辻さん!」

大学生の頃、暇を持て余した僕たちは金田一に登場する殺人事件の犯人を交互に挙げ連ねるというゲームをよくしたものだ。すいすい犯人の名前とトリックが出てくる。シナプスとニューロンが固く結びついて離れない。クイズ番組を見ては心の中で「謎はすべてとけた」とつぶやき、意味もなく、じっちゃんの名にかけ

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品品喫茶譚 第79回『横浜 少しだけ大学院』

品品喫茶譚 第79回『横浜 少しだけ大学院』

高校生のころと言えば、さるフォークデュオの楽曲をひたすら練習、CD、ビデオ鑑賞の嵐、挙句、ファンクラブにまで入り、たまに東京にまで出張っていって、ライブへ参戦、グッズを買い漁り、そのたびにまた彼らのことが好きになり、家で独り、歌を歌う、の繰り返しであった。
そんなとき、横浜スタジアムで行われた件のフォークデュオのライブは圧巻だった。
真夏の炎天下、まだ陽の高いうちから始まったライブは、普段であれば

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