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Essay

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日常の一コマを切り取っています🐈
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宮古島にて

宮古島にて

三月の終わり、
宮古島へ旅行してきました。
わたしも、彼も、初の宮古島。わたしは沖縄自体がはじめて。
飛行機から降りた瞬間に、南国の空気が肌に触れ、
小躍りしたくなるような高揚感がありました。

車でホテルへと移動する間、
窓を開けて、あたたかい空気を車が切ってゆき、その風に、ついつい目を細めます。
草木がはびこり、根っこや葉っぱが重なり、ねじれ、もたれ、上へ、上へと、伸びてゆく姿は、ぎょっとして

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また明日ねって言葉に

また明日ねって言葉に

近所の散歩がすきです。
散歩自体がすきなのもあるけれど、
この近所が、すき。

都会と田舎を足して、2で割ったようなこの街に、
住み始めて、はや半年と1か月が経ちました。
この頃は昼間があたたかい日もあって、
もうすぐ春なのが、鼻をくすぐる空気でわかる。

空がかつんって、突き抜けているから、
歩いているだけで胸がすきます。
深く水色に沈む、冬の空と、
お菓子みたいな水色の春の空が混じっていると、

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師をなぞる

師をなぞる

毎日、というわけではないけれど、
時折、わたしは自分のお気に入りの詩や小説の一節を、
ノートに書き写しています。

ペンは、青(と碧を混ぜたような)色で、
紙の上を滑るような、書きやすいもの。
ノートの表紙はマスキングテープでデコレーション。
去年の夏に本屋さんで買った青の瓶柄は
爽やかでもあり、ノスタルジックさもあってお気に入りです。

この前はヘッセの「車輪の下」から、抜粋して書き写しました。

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その記憶は寒くて、甘く、そしてあたたかく

その記憶は寒くて、甘く、そしてあたたかく

この前の土日は、朝、目を覚ましただけで、
空気の色が白くなったのがわかるような、
そんな曇り模様でした。
色が褪せ始める草木もあれば、
嬉々として衣を赤や黄、橙に変化させる葉もあります。

窓の外を眺めると、
鼠色の雲が垂れこめていました。
"独り" という言葉も浮かびそうな
しんとした寒さが、窓越しで感じられます。

でもわたしは、薄れない、わたしの中での大事な記憶を
思い出し、冷えている指先

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空が広くて、海はそこにあり

空が広くて、海はそこにあり

海がちかい街に引っ越して、四か月。
自宅から自転車で二十分の距離に海があるので、人によっては「近い」というより「行ける」距離かもしれません。
でも、圧倒的に前住んでいた処よりかは
海に顔を出すことが多くなりました。

彼とパンを浜辺で食べたり、
ひとりで夕方、海を見に行ったり。
この街はわたしたち人が「いる」という事実よりも、
空、雲、風、海が目前に「ある」という事実のほうが尊重されているように思

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いくつもの可能性があるなかで

いくつもの可能性があるなかで

この前、彼と付き合って3年の記念日を迎えました。
今年の4月にはあと半年で3年なのかと思っていて、でも時間は風みたいに過ぎ去り、気付けば秋が傍にいて。

記念日当日には、毎年恒例の薔薇の花束を彼からいただきました。
薔薇の数は「4年目もよろしくね」という意味も込めて、40本。
わたしはそのときジャージ姿で書き物をしていて、
宅配に出た彼が戻ってきた足音に振り返ると
赤い薔薇、薔薇、薔薇!

写真を

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光が開いて、散って、また開く

光が開いて、散って、また開く

昨日、彼と花火大会に行きました。
今年、花火大会に行くのは初。
肌に染み込もうとしてくる暑さは和らがなくとも、
もう夏が終わってしまう時期に入りました。

この時期の夕方の空を見ていると
自分は去年となにか、変わっただろうか、変わってるといいなと、
不安と期待がかき混ぜられた、どちらかといえば焦りの気持ちが強くなります。

他の季節よりも水分が多く、
はっきりとはしない空が、寝ぼけたような水色や赤

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友達

友達

先週、駅から会社までの道中、おしろい花を見つけました。
それを見ていると、懐かしい気持ちになります。
小学生の頃、友達と学校の帰り道や、習い事の帰り道に
おしろい花の種を潰して、ごくわずかなおしろいを、
頬っぺたや、おでこにつけて、笑った思い出があります。

そのうちの何人かとは、タイムカプセルも埋めました。
二十歳になったら一緒に開けようと言って、
公園やら、家の裏やらに、缶を埋めて。その中に手

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百日紅について

百日紅について

子どもの頃、夏になれば校庭の花壇に咲く向日葵が好きでした。
日に向かって、素直に花を開かせる可愛い向日葵。
今も、もちろん目にすると、気持ちが明るくなります。

大人になって、少しずつ、花の名前に詳しくなって、
向日葵と同じように、
この花もいいなと、思うことが増えました。
特に、生活の中で見つける植物の中で。

その中で、毎年の夏、つい見入ってしまう花があります。
それはサルスベリ。
漢字で書け

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ディテール

ディテール

ふたりで暮らし始めて、2週間。
この前、ふと一緒に暮らすことのディテールを見つけました。

ディテール。
小説をよく読む私は、ディテールがきちんとある小説によく、惹かれます。
日常の中で、何を食べて、何を見て、どんな匂いを嗅いだのか、どんな音を聞いたのか、肌触り、云々。

だから私自身も、日々の中で、
音とか匂いとか、色とか、時として特定の物に敏感です。

この前の休日に彼がホットケーキを焼いてく

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引っ越し準備

引っ越し準備

来週から、彼と同棲が始まります。
だから昨日、今日と、段ボールの中に梱包できるものは、どんどん入れて、あっという間に、八個の段ボールが出来上がりました。

クローゼットの中を開けると特に、なのですが、
「あ、こんなところに、こんなものが!」
とか、
「この部品はどこの部品なのだろう、、」
と、発見することが多いです。

お気に入りのお皿をクレープ紙で包んでいくのが
私の中では楽しく、
このお皿は彼

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ラムネの季節

ラムネの季節

私はラムネというものがとても好きです。
あの瓶の、中にガラス玉が入ったラムネ。
持った時の、瓶の形のでこぼこの感触、
栓を開けたときに「おっとっと」という感じで、溢れてくる中身を急いで口に運ばないといけない感じ、
中のビー玉に付く、小粒の泡たち、
空になったときのガラス玉が瓶の中で鳴らす涼しいあの音も
どれもが「夏っぽい!」と思わせます。

小さい頃は夏の夜、お風呂上りに飲んでいました。
それがこ

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変わるものと、変わらないものと

変わるものと、変わらないものと

昨日、池袋に行きました。
というのも、妹の誕生日プレゼントである白いブラウスを見つけるためにです。昨日、実家で妹の誕生日祝いをするために帰っていた、その道中で池袋に。
池袋で買い物をするのはとても久しぶり。

人が横に、縦に、斜めにすれ違うあの人混みの多さ、よく行ったルミネ、TOBU。
それは特に何も変わっていません。
大学時代によく通った駅がそのまま、ありました。
アルバイト先も池袋でしたし、キ

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母の日に帰ったら

母の日に帰ったら

この前、母の日の前日に帰省しました。
母と妹が、祖父母の家に引っ越してから、帰るのは初めて。
その帰った日というのは、付き合っている彼のご両親に、同棲のためのご挨拶をした日でした。

扉を開けて「ただいま~」と入ると、
「おかえり~挨拶どうだったー?」と二階にいた母が降りてきました。
彼のご両親が明るい方だったとか、手巻き寿司をご馳走になったという話をしていると、寝室にいた祖父やお風呂に入っていた

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