『ジェンダーの格差を乗り越えて、一人ひとりが自分らしく生きられる社会を、スポーツを通してつくりたい』  NPO法人 GEWEL理事 順天堂大学スポーツ健康科学部 助手 野口 亜弥 さん

スポーツをキッカケに、先進国から開発途上国まで世界の様々な側面を自身の目でみてきた野口亜弥さん。そんな彼女だからこそもてる問題意識と、そこから出発するビジョンには、どんな想いがあるのでしょうか。率直な想いを語っていただきました。

プロフィール
出身:
千葉県
活動地域:東京都、千葉県
経歴:3歳から兄の影響でサッカーを始める。大学卒業まで日本でプレイし、その後アメリカへ留学、さらにスウェーデンのトップリーグでプロサッカー選手としてプレイする。引退後、アフリカ・サンビアのNGO団体に所属し、現地の少女たちにスポーツを通じたライフスキル教育や、リーダーシップ教育を実践する活動などを通して見識を広める。現在は、自身の経験を通してみえた世界の現状に対し、スポーツ、ジェンダー、国際、共育をキーワードとして一人ひとりが自分らしく生きることができる社会の実現を目指す。
座右の銘:We can do no great things, only small things with great love.-Mother Teresa  
夢とか希望の本当の意味はわからないけれど、素敵な自分になれる魔法なんだと思う。ー絢香

記者    本日はよろしくお願いします。

野口 亜弥 さん(以下、野口 敬称略)    よろしくお願いします。

『スポーツを通してジェンダー平等を、スポーツを通して多様な価値を発信をしたい』

Q.    まず最初に野口さんの夢を教えてください。

野口 私は、一人ひとりが自分らしく生きていける社会をジェンダーの視点からスポーツを通じて創造していきたいなと思っています。特に、日本だけではなく、世界の中でもアジアを中心に活動していきたいと思っています。

これまで開発途上国に訪れ、意思や想いはあるけど資金がなくてチャンスを掴めなかったり、現地の課題を解決できる外部のネットワークにアクセスできなかったりするなどの問題を見てきました。また、特に女の子は男の子よりも教育を受ける機会が少なくなりがちな地域もあり、家族の中で優先順位が低くなってしまう傾向も見られます。自由に生きる選択肢が少なく、やりたいことを諦めざるを得ない状況があるのであれば、本当に自分のやりたいことを誰もが自由に挑戦できる世界をスポーツを通してつくれたらいいなって思っています。

記者 なるほど。様々な世界をみてきたからこそもてる夢ですね。

『目標とする組織、その道の専門家を目指す』

Q.    スポーツを使ってどういう風に夢を達成しているイメージがありますか?
またそこに向かう計画などについてはどんな風に考えてますか?

野口 オランダに私が目標としている組織があります。Women Win という組織なんですけど、その組織は国際的なジェンダー課題をスポーツを通じて解決を目指すプロジェクトを実施しています。Women Winは企業や政府、国連等からの賛同を募り、資金を調達し、実際に現地(主に開発途上国)で活動するNGO団体とパートナーシップを組んでプロジェクトを遂行しています。現地のパートナー団体は、例えばスポーツチームなどを作り、自分たちの地域文化に合わせた形で現地の課題解決に資するスポーツプログラムを実施しています。Women Win は私の目標とする組織の1つです。というのも、現地の課題や現地の文化を一番わかっているのは現地の人ですから、プロジェクトは現地の人たちが実施することが良いと思っています。ただ、現地の人だけではなかなか難しい、例えばまとまった資金の調達や専門家のサポート、外部のネットワークへのアクセスの部分を先進国が持つネットワークを活かして協力するという形をとっていて、お互いの強みを活かした協力関係ができていると思うからです。私はアジアをフィールドにWomen Winのような組織を作りアジアのジェンダー課題にスポーツをツールに挑戦していきたいと思っています。

この4月から博士課程に進むこともその第1歩です。実はスポーツを通じて国際課題の解決に取り組む分野を「開発と平和のためのスポーツ」ともいうのですが、スポーツはいいことと思われがちですが、客観的な証拠がまだまだ少ない分野でもあります。特にジェンダー課題に対するスポーツの活用については、研究している研究者も少ない上に、アジアを対象とした研究はほとんどないんです。ジェンダー課題は、それぞれの地域の文化や社会的な背景、宗教、経済状況によって原因も解決手段も異なってきます。そんな中で、他国と連携して、プロジェクトを進めるのであれば、しっかり勉強して、研究して、その道の専門家になる必要があると私は考えています。そして、同じビジョンを共有できる仲間を集めて、仲間と共にアジアのジェンダー課題にスポーツから挑戦する取組を形にしていけたらと思っています。

記者 モデルとしている組織があるんですね。そこに近づくためにも、現状を見据えて確実に進んでいる感じがしますね。

『スポーツを通じてジェンダー課題に積極的に取り組む』

Q.    それに向けて今、実践行動されてると思いますが、それはどのようなことをしていますか?

野口 先ほども話しました通り、まずは博士号を取ることですが、2019年〜2020年というのは日本がスポーツで世界から注目をされる時期でもあるので、研究者としての土台を固めながら、スポーツを通じたジェンダー課題に取り組むプロジェクトにも関わっていきたいと思っています。その1つとして私が理事として関わるNPO法人GEWELも参画している「プライドハウス東京」プロジェクトがあります。これは、2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会を契機にLGBTに関する情報発信を行い、LGBTフレンドリーな場づくりを目指すプロジェクトです。また今年の2月終わりには、ザンビアに行く予定があります。ザンビアにて、女性の妊娠・出産や生涯を通じた健康を支援する日本の団体と連携して、10代~20代の女性を対象としたスポーツを活用した女の子のエンパワーメントプロジェクトに関わらせていただきます。国内外関わらず、スポーツを通したジェンダー課題に取り組む活動には積極的に関わっていきたいと思っています。

記者 なるほど、研究をしつつも実務もこなそうとする姿勢は積極さをとても感じます。未来の夢に向かうネットワークが、すでに今からできていきそうですね。

『欧米中心に回っている世の中に対する疑問、日本で感じていたスポーツ界における男女の格差は常識じゃなかった』

Q.    その夢を目指そうと思った最初のキッカケはなんだったんでしょうか?

野口 私はずっとサッカーをやってきました。それを通して欧米、開発途上国に行くことができ、それを機に世の中の社会問題にも関心を持てるようになりました。世界に出てみて世の中が欧米を中心に回っているんだなということも感じてきました。例えば、私は英語をすごく苦労して学びました。英語を公用語とする人々は、自分たちの言語を使って、世界中の国の人たちとコミュニケーションが容易にできます。英語に近しい言語を話す人たちも真逆の言語を話す人たちよりは、英語を学ぶのは簡単です。となると、やはり、英語圏や英語に近しい言語を話す人たちの方が国際的に発言しやすいはずで、発信者も多くなります。世の中でその人たちの文化が基準になりやすい状況になります。先日タイに行きました。タイは東南アジアで唯一独立を守った国です。そんなタイの良さは沢山あるのですが、英語を苦手とする彼らの文化が国際社会で等しく議論されることは現状なかなか難しいです。言語の問題とは少し異なりますが、日本においても同じようなことを感じます。日本のいいところはたくさんあるのに、そこを大切にしながら、他国の良いところを取り入れる形にはなかなかなっていないところに歯がゆさを感じています。またアフリカ・ザンビアでも開発途上国と先進国の関係性に疑問を感じたことがありました。ザンビアの現地で出会った人たちの中には、すごく勤勉で優秀な人たち、想いのある人たちがたくさんいました。実際に現地でそこで生きる人たちと向き合い、奮闘しているのは彼らです。しかしながら、彼らの顔が国際社会で見える場面は多くなく、支援をしている先進国がどちらかといえば目立っているように感じています。

そういうのをみてるとやっぱり欧米の価値観が強く、アジアやその他の国や地域の価値観はなかなか発信されてない状況があると思います。だからこそ私たち日本人も含めアジアやその他の国や地域の声をもっと発信して、多様性の中から目指すべき姿を議論していかなければいけないのではないかと思っています。

記者 なるほど。海外に行かれてグッと視野が広がったんですね。でもなぜジェンダー問題に関心を持たれるようになったんですか?

野口 そのキッカケは海外に留学したときにありました。私は小学生の頃は、男子と一緒にサッカーをやっていましたが、中学生になったときに、男子サッカー部の先生に部に入れて欲しいと伝えたら、入れないよと言われてしまいました。なぜ男子より上手いのに部に入れてくれないのか(小学生の頃は男女の体格差はあまりないため)とか、なぜ男子と同じようにはできないんだってずっと思っていました。それに女子はどんなに上手くなっても男子みたいにプロの道はないから、いつもセカンドキャリアのことを考えて勉強をしなさいと言われていました。大学のときも、女子サッカー部の練習時間は、7部もあった男子サッカー部の練習が行われていない時間にしかできず、グラウンドは男子部優先なんです。そのような現状に対し、当時私はあまり疑問を持っていなかったんですが、アメリカに行ったときから問題意識を持つようになりました。

記者 アメリカに行ってどんな経緯で問題意識を持つようになったんですか?

野口 はい。アメリカでは、日本の現状とは全然違っていて、女子サッカーのコーチはたくさんいるし、女子も男子と同じようにグラウンドを使える。日本で感じていたことは常識じゃなかったんだって思ったんです。それでさらに、スウェーデンに行ったら今度は女子プロリーグもあって、女子プロサッカー選手も街の人にリスペクトされていると感じたんです。そのようなことからまずスポーツ界のジェンダーの違いによる課題に関心を持ち始めました。私はもともとスポーツと教育に興味を持っていたのですが、そこにジェンダーの観点も取り入れて模索していたところ、開発途上国において国際オリンピック委員会(IOC)や、国際サッカー連盟(FIFA)などがお金を出して、ジェンダー課題に取り組むスポーツプログラムをやっていたのを見つけたんです。どんなものかというと、女子のライフスキルやコミュニケーション能力の向上、HIVエイズの予防や妊娠・出産のための教育、性暴力被害の是正等にスポーツをツールとして実施する取り組むプログラムです。それらを知ったときは、スポーツを通してそんな教育ができるんだってカルチャーショックでした。スポーツがきっかけとなり、女の子たちがもっとチャンスを得られ、生きる力や様々なことを学ぶ機会を創造していくことは、私にとって楽しくやりがいを感じられるものなので、この分野を専門としていきたいと思うようになりました。

記者 なるほど、そんな風にしてジェンダーと開発途上国へ繋がっていったんですね。

野口 そうなんです。それで実際に開発途上国であるアフリカ・ザンビアに行くと、そこはそこで問題意識をしっかり持って、声を出しているたくましい女性が多いなど、また新たな発見がありました。このような海外での経験を通して、ジェンダーに対する意識が高まっていきました。

女性だからこうでなきゃいけないとか、男性だからこうでなきゃいけないといった、性別によって生きづらさを抱えているのであれば、それは解消されて欲しいなって思いますし、そもそも性別とは男性と女性で2つに分けられるものでもありません。世の中のジェンダーに対するステレオタイプな考え方を変えていきたいと思うようになりました。また、LGBT等の当事者の方々の生きづらさも改善されるべきだと思います。一人ひとりが性別にとらわれず、自分らしく生きていける社会を作るためにスポーツはどんな力を発揮できるのか、これからも模索していきたいと思っています。

記者 日本の常識は海外のそれとは全然違ってたんですね!日本にいたときは大して問題に感じてはいなかったけど、海外に出てみて視野がどんどん広がって、問題意識もどんどん育っていく過程がとてもよく伝わってきました。本日はどうもありがとうございました。

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■編集後記

インタビューをさせていただきました岸本 & 樋口です。野口さんとお話してみて思ったことは、身の回りに対して自然と関心を持ち、それに対してしっかりとしたご自身の考えのある方なんだなということでした。そしてその考えを素直に率直に表現する真剣な姿勢に、彼女の魅力を感じました。また真面目に想いを話す中でも、時折みせる屈託のない笑顔がとても魅力的でした。本文の中には書ききれなかった、日本にいたときに持っていた世界の国々や人々に対する偏見が海外に出て見事に溶けていく様は、聞いている方も気持ちがよくなるほど。身の回りをしっかり洞察できる野口さんだからこそ、そこまではっきり見方が変わったと言えたのだと思います。彼女の目指す夢は本当にまだまだこれから。今後の活躍をお祈りいたします。

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この記事はリライズ・ニュースマガジン“美しい時代を創る人達”にも掲載されています。
https://note.mu/19960301/m/m891c62a08b36

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