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『狂い咲く、フーコー 京都大学人文科学研究所 人文研アカデミー『フーコー研究』出版記念シンポジウム全記録+(プラス)』読書人新書、レビュー
『フーコー研究』を読んだ重田園江氏によるフーコーの全領域に及ぶ考察と問題点の析出、裏を取ることの重要性を説く手堅い研究姿勢の開闢に対し、アクティヴィスト系の論者は当為と理念の先行を説く。さらに実存的生き様や美学の観点を導入する者、古代倫理学を導入する者、まさに『狂い咲く、フーコー』は百花繚乱の饗宴。
後半はパレーシアが中心の話題となっていく。包み隠さず告白する事。こちらと牧人司祭制の告解、権力論の
会話劇「田中童夏による絵画『ごー、ごとん。ゆらゆら(秋桜殺人事件)』を巡る群像劇」
SUNABAギャラリーで行われた「魂のふかいところで」展に出品された田中童夏さんの絵画「ごー、ごとん。ゆらゆら(秋桜殺人事件)」を見て思いついたもろもろを、物語風にまとめました。冒頭をTwitterで書き始めたのですが、時数制限のないこことで、全面展開してみます。戯言ではありますが、寛大な心で、ご笑納いただければ幸いです。
「「ごー、ごとん」は、薄れゆく意識の中で聴いた電車の音。「ゆらゆら」は、
ミシェル・フーコー、敵か、味方か
ミシェル・フーコーの発想の原点は、自身が同性愛者であり、マイノリティーであることの自覚と、フリードリヒ・ニーチェの読解からの一解釈にあると思う。
『言葉と物』は、(1)ニーチェの「神は死んだ」に続く「人間の死」の予告をした挑発的な言説、反人間中心主義、(2)レヴィ=ストロース『親族の基本構造』『野生の思考』、ロラン・バルト『零度のエクリチュール』、ルイ・アルチュセール『甦るマルクス(原題 マルク
日本現代思想のヘゲモニー
現在、読者の広範な関心を寄せる現代思想のテーマは、「経済格差」と「環境問題」である。この二つのテーマは、フェリックス・ガタリのうちにあった。「経済格差」の問題は、ドゥルーズ=ガタリとして書いた『アンチ・オイディプス』(河出文庫。なおフェリックス・ガタリ『アンチ・オイディプス草稿』みすず書房を読めばわかるように、このプロジェクトの先導役はアイデアマンのガタリだった)が、レーニン的切断と分裂者的切断の
もっとみる家族にも会えない!投獄された香港の若者10人に正当な権利を!
深圳市公安局塩田支局長宛てに、2021年1月27日-3月末日 (予定)に、アムネスティ日本名義で、以下の文面が送られる。そこに署名し、名を連ねる事にした。署名は、以下のURLから加わることが出来る。同意見の方は、署名されたし。
https://www.amnesty.or.jp/get-involved/action/cn_202101.html
I am writing to express
アーバンギャルド「アバンデミック 【豪華盤】 」について パンデミック状況下で聴く「人間のための音楽」
初出 amazonレビュー 2020年11月29日
Covid-19によるパンデミック。街を行きかう人はマスクを装着し、密を避ける生活が推奨され、感染症の第三波に行政は時短営業や自粛要請に言及するようになった。アーバンギャルドは『アバンデミック』は、このような状況下、2020年11月に発表されたアルバムである。
1月に『TOKYOPOP』を発表したアーバンギャルドは、緊急事態宣言によりライブツア
Rose&Rosary 6thアルバム「XANADU」について Rose&Rosaryの描く聖なる理想郷 ザナドゥー
初出 amazonレビュー 2020年11月21日
かつて「Xanadu」 といえば、オリビア・ニュートン・ジョンの映画を意味した時代があった。またある時には、ホリプロの芸能人女子フットサルチームを意味した事もあったような気がする。しかし、今や廃墟に浮かび上がる架空の空間は、Rose&Rosaryの描く聖なる空間なのだ。
「クロノグラフ・リセット」、機械仕掛けの時計の針に支配された世界。ここは人
アーバンギャルド「少女フィクション」について 10年目のアルバムは高クオリティーで原点回帰
初出 amazonレビューより 2018年4月12日
アーバンギャルドは2018年、結成10年目を迎えた。10年という区切りの年に、アーバンギャルドが出して来たのは、初期の「少女三部作」を彷彿させる<少女>を冠した新作である。テーマ的には原点回帰だが、内容的深化と音楽的進化を両立させた永遠の新しさを感じさせる作品となっている。
アーバンギャルドの第一の特徴、一度聴いたら、耳に残るメロディーは、本
スラヴォイ・ジジェク『パンデミック』(ele-king books)を読む
ここで取り上げる新型コロナウイルスに関する知見は、複数の報道をまとめただけであり、オリジナリティーはない。最も信憑性の高い知見については、厚生労働省の新型コロナウイルスのページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html)を、様々な学説について証拠(エビデンス)の観点から評価分類をしたページとしては、
もっとみる未来の哲学のためのプロレゴメナ ドゥルーズ=ガタリからシャルル・フーリエへ
ジル・ドゥルーズとフェリックス・ガタリによる『アンチ・オイディプス ~資本主義と分裂症』市倉宏祐訳の河出書房新社単行本、または宇野邦一訳による河出文庫、この本は「欲望機械」の章から始まっていて、カール・マルクスとジーグムント・フロイトを結合し、連結と切断からなる複数の欲望する諸機械から、現代社会を解明しようとする。マルクスとフロイトを結び付けるというアイデアは、先駆的にはヴィルヘルム・ライヒが行っ
もっとみる松永天馬・浜崎容子・おおくぼけい・藤谷千明『水玉自伝 アーバンギャルド・クロニクル』ロフトブックスを読む
アーバンギャルドの現メンバー(松永天馬・浜崎容子・おおくぼけい)による『水玉自伝 アーバンギャルド・クロニクル』(ルーフトップ/ロフトブックス)が刊行された。語り下ろしで、聞き手と構成は藤谷千明さんが行っている。『夜想 総特集 #アーバンギャルド 』(ステュディオ・パラボリカ、この時はまだ鍵山喬一、瀬々信が在籍していた)、浜崎容子『バラ色の人生』(ルーフトップ/ロフトブックス)も併読すれば、紙媒体
もっとみる『存在と無』について
ちくま学芸文庫版の『存在と無』(全3巻)が完結した。文庫版になったので、ポータブルに持ち歩けるようになった。
サルトルの哲学は、あらゆる権威をぶち壊しであり、既成道徳に疑問符を投げつけ、一切の価値観を破壊する哲学であり、自分の生き方くらい自分で決めろ、その代わり自分の行動は最後まで責任を持て、という自由の哲学であるから、これをポケットにしのばせて歩くのは、爆弾を抱えて歩行するに等しい。
第二
中沢新一著『芸術人類学』を読む
※読書ノートです。私固有の考えのところには、<>がついています。『芸術人類学』に触発されて、他の事を考えたりしていますので、何かの参考になるかもしれません。
なお、ここに書かれた内容は、自分の関心事に引っかかった箇所だけを圧縮した覚え書きに過ぎません。必ず、各人『芸術人類学』の原文にあたられますようにお願いいたします。
【はじめに】
・芸術人類学は、対称性人類学を基礎とする。それは認識の刷新だけで