さくま

経産省→コンサル→スタートアップ.趣味の範疇で気づいたことを書きます.ここでの発信内容…

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経産省→コンサル→スタートアップ.趣味の範疇で気づいたことを書きます.ここでの発信内容は個人の見解であり,所属組織等とは無関係です.

記事一覧

ながれにとけでる声をたどって――メカラウロコ個展「エコー エコー エコー…」レポ

メカラウロコさんの個展「エコー エコー エコー…」が開催されたので行ってきた(前回のレポはこちら).開催期間中に出したいので,少し短めにはなるが感想を書いておきた…

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1年前
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リアリティの水面を切りサケ――メカラウロコさんの個展で考えたこと

 ぼくたちは自分たちの人生において,子どもをつくるということについて,やるにせよやらないにせよ深く考えるよう言われている.そして同時に,数えきれないほどの"ほか…

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2年前
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身ぶりを再考する――官僚からコンサルになってみたとりあえずの感想

 お金が必要なのでなんとか仕事を続けている.  前にも別の記事で書いたように,2021年6月に国家公務員からいわゆるコンサル業界に転職してみた.  今回は,そうした…

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2年前
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かんぺきな制度……?

 第24回JDA秋季ディベート大会に「ディベート実験室SSM」チームで出場し,優勝しました.しばらくディベートはできなさそうなので,それなりにやりきった感のあるシーズン…

さくま
2年前
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あつまれ 〈ラディカルな他者〉の森② ―『表徴の帝国』と日本について

 赤いロゴマークに目玉のようなものが五つ。それぞれがべつの方向を向いている。全体を統御する細胞は存在しない。「人類の進歩と調和」も「いのち輝く未来社会」も、神が…

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3年前
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見られるこども、見るこども ―「画家が見たこども展」で考えたこと

スキゾ型というのは分裂型の略で、そのつど時点ゼロにおいて微分=差異化しているようなのを言う。……言うまでもなく、子どもたちというのは例外なくスキゾ・キッズだ。す…

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3年前
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あつまれ 〈ラディカルな他者〉の森① ―悪とホメオパシーについて

 最果ての島で出会った彼は、翌日にはぼくたちの島に渡ってきていた。彼のことは何も知らない。でも、ぼくたちはきっと分かり合える。ぼくたちは何かを共有している。彼は…

さくま
4年前
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めざせ、ぼくらのユートピア ―アーリ『〈未来像〉の未来』を読んで考えたこと

本書では、未来像を「主流に組み入れ」、「民主化する」ことを試みた。…未来世界は曖昧模糊としているかもしれないが、参入し、問いただし、希望を抱いて作り変えなければ…

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4年前
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そのスピーチに乗れるか ―ディベート甲子園準決勝のメモ

 8月10日~12日に、「ディベート甲子園」が開催されました。  今年の論題は中学生が「日本はタクシーに関する規制を大幅に緩和すべきである。是か非か」、高校生が「日…

さくま
4年前
7

小屋の中へ、心の中へ ―スーラ「サーカス」について

 今日はスーラの遺作、「サーカス」について書きます(クリムトはまた今度……)。  ジョルジュ・スーラは言わずと知れた新印象派の画家で、点描によって詩情豊かな風景…

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5年前
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静止する時間、広がる空間 ―ピエール・ボナールについて

 ノート作ってみました。  最初は三本の指に入るくらい好きな画家、ピエール・ボナールについて書いてみようと思います。ちなみにこれの続きです。  2018~2019年には…

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5年前
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ながれにとけでる声をたどって――メカラウロコ個展「エコー エコー エコー…」レポ

ながれにとけでる声をたどって――メカラウロコ個展「エコー エコー エコー…」レポ

メカラウロコさんの個展「エコー エコー エコー…」が開催されたので行ってきた(前回のレポはこちら).開催期間中に出したいので,少し短めにはなるが感想を書いておきたい.

今回は神保町PARAの一室で開催された個展だが,広くはない会場のなかで複線的なテーマが扱われており,感じること・考えることは多かった.

「エコー」ということばからも若干連想されるが,今回の展示の主なモチーフは妊娠・出産という前回

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リアリティの水面を切りサケ――メカラウロコさんの個展で考えたこと

リアリティの水面を切りサケ――メカラウロコさんの個展で考えたこと

 ぼくたちは自分たちの人生において,子どもをつくるということについて,やるにせよやらないにせよ深く考えるよう言われている.そして同時に,数えきれないほどの"ほかの"生き物の子どもをつくるという営みと深く考えずにかかわって生きている.直接従事している人以外は日々意識することなく,魚を養殖し,家畜を育て,果物の花を受粉させている.
メカラウロコさんの個展「鮭らは海から川へ―フェミニズムの波を漂う―」(

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身ぶりを再考する――官僚からコンサルになってみたとりあえずの感想

身ぶりを再考する――官僚からコンサルになってみたとりあえずの感想

 お金が必要なのでなんとか仕事を続けている.

 前にも別の記事で書いたように,2021年6月に国家公務員からいわゆるコンサル業界に転職してみた.

 今回は,そうした中で自分の仕事における身ぶりがどう変わったかについて考えてみた.もちろん,どちらもあくまで下っ端から見た見え方である.なお,仕事のやりがいであるとか,社会に与えるインパクトといったことは,役所や企業の採用パンフレットなどを見ていただ

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かんぺきな制度……?

かんぺきな制度……?

 第24回JDA秋季ディベート大会に「ディベート実験室SSM」チームで出場し,優勝しました.しばらくディベートはできなさそうなので,それなりにやりきった感のあるシーズンになり良かったです…….

 毎度のことになりますが,大会を開催してくださったスタッフの皆さまやご参加のジャッジ・選手の皆さま,そしてめちゃくちゃ楽しいシーズンにしてくれたチームメイトと,永遠に画面に向かって早口で話し続けるわたしを

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あつまれ 〈ラディカルな他者〉の森② ―『表徴の帝国』と日本について

あつまれ 〈ラディカルな他者〉の森② ―『表徴の帝国』と日本について

 赤いロゴマークに目玉のようなものが五つ。それぞれがべつの方向を向いている。全体を統御する細胞は存在しない。「人類の進歩と調和」も「いのち輝く未来社会」も、神が作り出すものではない。

 このモチーフは、早くも多くの人に引用され、様々なイメージと結び付けられて広がっている。しかし、市場という装置はいつか、このモチーフにも神話を付加するのだろうか。

表徴の帝国?その通りである。ただし、この表徴は空

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見られるこども、見るこども ―「画家が見たこども展」で考えたこと

見られるこども、見るこども ―「画家が見たこども展」で考えたこと

スキゾ型というのは分裂型の略で、そのつど時点ゼロにおいて微分=差異化しているようなのを言う。……言うまでもなく、子どもたちというのは例外なくスキゾ・キッズだ。すぐに気が散る、よそ見をする、より道をする。 ―浅田彰(1984)

 三菱一号館美術館「画家が見たこども展」に行ってきた。入館人数の制限で空いていることもあり、そこそこじっくりと作品を観ることができ満足度は高かったように思う。

 この展覧

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あつまれ 〈ラディカルな他者〉の森① ―悪とホメオパシーについて

あつまれ 〈ラディカルな他者〉の森① ―悪とホメオパシーについて

 最果ての島で出会った彼は、翌日にはぼくたちの島に渡ってきていた。彼のことは何も知らない。でも、ぼくたちはきっと分かり合える。ぼくたちは何かを共有している。彼はきっとぼくと同じように離島での暮らしを愛し、同じようなものを欲し、同じように島の発展を言祝ぐのだ―。

 「透明性」は、多くの人々の夢だった。コミュニケーションによって包み隠さず思いを通わせ、分かり合うことが正義だった。たとえば、ジャン=ジ

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めざせ、ぼくらのユートピア ―アーリ『〈未来像〉の未来』を読んで考えたこと

めざせ、ぼくらのユートピア ―アーリ『〈未来像〉の未来』を読んで考えたこと

本書では、未来像を「主流に組み入れ」、「民主化する」ことを試みた。…未来世界は曖昧模糊としているかもしれないが、参入し、問いただし、希望を抱いて作り変えなければならない。 ―ジョン・アーリ(2019)

ボッチョーニ ≪都市の成長≫

 生きるうえで、人は知らず知らずのうちに「未来」について思いをいたし、それに規定されて生きている。たとえばぼくたちは、恐ろしい災害シミュレーションの映像を観て慌てて

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そのスピーチに乗れるか ―ディベート甲子園準決勝のメモ

 8月10日~12日に、「ディベート甲子園」が開催されました。

 今年の論題は中学生が「日本はタクシーに関する規制を大幅に緩和すべきである。是か非か」、高校生が「日本はフェイクニュースを規制すべきである。是か非か」。いずれも技術の進歩に伴って表面化してきたホットイシューです。

 私は3日間とも審判の立場でこの大会に参加してきましたが、今回は観戦したとある試合について、""もし自分が審判だったら

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小屋の中へ、心の中へ ―スーラ「サーカス」について

小屋の中へ、心の中へ ―スーラ「サーカス」について

 今日はスーラの遺作、「サーカス」について書きます(クリムトはまた今度……)。
 ジョルジュ・スーラは言わずと知れた新印象派の画家で、点描によって詩情豊かな風景画等を描きました。31歳で夭折した彼はその短い生涯の中で、後世の画家に多大な影響を与えた作品群を残しています。最後の印象派展で世間を驚かせた名作、「グランド・ジャット島の日曜日の午後」をみたことがない方は少ないのではないでしょうか。

スー

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静止する時間、広がる空間 ―ピエール・ボナールについて

静止する時間、広がる空間 ―ピエール・ボナールについて

 ノート作ってみました。

 最初は三本の指に入るくらい好きな画家、ピエール・ボナールについて書いてみようと思います。ちなみにこれの続きです。

 2018~2019年には、国立新美術館のボナール展に加えて、もともとナビ派に強い三菱一号館美術館のフィリップスコレクション展でも、ボナールの作品が複数扱われました。 今回は、彼の制作の哲学や特徴について考えた感想文を書いていきたいと思います。

ピエー

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