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03 最果タヒ『十代に共感する奴はみんな嘘つき』
走る車の方向が決められているように、冷蔵庫は開けたら閉めるように、感情も自発性をもたず選んで使用されている。実際に生活している人間よりもよっぽどTPOを熟知している感情に誰も異論を唱えないし、そうであることに同意する。無茶苦茶な世の中だ。生きる以上その無茶苦茶から逃れる事は出来ないし、生きる時間と比例してその無茶苦茶と同化していくのが人生だ、なんてことを口にしたならば、罵倒される。
可能性を
02 西加奈子『きりこについて』を読んで
野暮な質問ですが、本を読んで声を上げて泣いたことはありますか、私はあります。はい、と答えた方なら、それは頁をめくる手が止まったときでしょうか、最後の一文を読み終えたときでしょうか、それが私の場合、どうしたことか、すべて読み終えて、裏表紙にもそっと目をやって、いちばん初めに見たはずの表紙にもういちど寄り添って、そうして小さなこの文庫本を木目調の机に置いたときでした。表紙の猫の目がこちらをみていまし
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