マガジンのカバー画像

発達障害はなぜ増えたのか 二つのグローバル化と生存の地すべり

8
発達障害という言葉が社会にあふれています。一昔前にはほとんど聞かなかった言葉ですが、今や発達障害の情報だけでなく、発達障害の診断を受けた人や自分が発達障害でないかと疑問に思う人が… もっと読む
運営しているクリエイター

記事一覧

自分や子どもが発達障害かもしれないと思った時に 2 +あとがき

自分や子どもが発達障害かもしれないと思った時に 2 +あとがき

病院に行けばハッキリする? よく聞く誤解としてあるのは、病院に行って検査を受ければ発達障害かどうかははっきりするというものです。現実はそんなにクリアではありません。
 これはどんな病気、障害でもそうでしょうが、微妙なラインというのはありますし、医師も発達障害と診断するストライクゾーンが広めの人とそうでない人もいます。発達障害に強いという看板を掲げている所はストライクゾーンが広めだなと感じることがあ

もっとみる
自分や子どもが発達障害かもしれないと思った時に 1

自分や子どもが発達障害かもしれないと思った時に 1

 この章では、自分や子どもが発達障害かもしれないと思った時にどう考え、何をすべきか書いていきます。

まずはっきりさせるべきことは 発達障害かもしれないと思った時に最初にはっきりさせるべきことは何でしょう? 
 発達障害かどうかの診断? いえ、違います。
 発達障害かもしれないと思った時にまず整理すべきは、誰が何を困っているのかです。
 何がうまくいってないのでしょうか。困っているのは本人でしょう

もっとみる
発達障害に対して社会はどう変わるべきか 2

発達障害に対して社会はどう変わるべきか 2

大人のADHDが多い国? 岩波明先生の『大人のADHD』という本の中にWHOの調査による成人のADHDの有病率が載っています。母数が少ない点は気になりますが、結果は大変興味深いものになっています。

 世界平均で成人のADHDの割合は3%なのですが、コロンビア、レバノン、メキシコなどでは2%を下回ります。中南米や中東の国々ではまだ疾病概念が伝わりきっていないのかもしれません。一方で5%を越えるのは

もっとみる
発達障害に対して社会はどう変わるべきか 1

発達障害に対して社会はどう変わるべきか 1

 この章では、発達障害は二つのグローバル化と生存の地滑りによって増えたという主張から、では社会は発達障害をどう受け止め、どう変わっていくべきかを書いていきます。

スペクトラムであるべきものは障害ではなく社会 他にいくらでも情報があるので、この本ではあえて個別の発達障害について書いてきませんでしたが、ここ数年の発達障害の診断に大きな変化があったことにここでふれたいと思います。
 世間でよく聞くアス

もっとみる
発達障害を増やしたのは二つのグローバル化 3

発達障害を増やしたのは二つのグローバル化 3

生存の地すべりと発達障害

 改めて整理しましょう。
 バブル崩壊などの九十年代の不景気、そして経済のグローバル化が進行したことによって、生きていくのに必要なお金を安定して稼ぐということがそれまでより難しいものになってしまいました。 学生にとっても将来不安の増大として、入試や就職活動の不安へと響いていきます。それらはさらに学校生活全般への不安にもつながっていきます。
 私はこういった現象を”生存の

もっとみる
発達障害を増やしたのは二つのグローバル化 2

発達障害を増やしたのは二つのグローバル化 2

社会の何が変わったのか 経済のグローバル化  病気の定義がグローバル化したという話を書きましたが、日本で発達障害が増えたとされるのにはこの疾病概念のグローバル化の影響だけでなく、もう一つはいわゆるグローバル化そのものが影響したと考えています。
 グローバル化とは人、物、金の三つが国境を越えてそれまでよりも自由に動くようになることを言います。別にここ何十年だけのことではありません。長い歴史の中で世界

もっとみる
発達障害を増やしたのは二つのグローバル化 1

発達障害を増やしたのは二つのグローバル化 1

 発達障害が増えたということには二つの可能性があります。
 一つは本当に発達障害な人が増えている状態です。インフルエンザが流行するようにその疾患の人が単純に増えている状態です。
 「え、他のパターンなんてあるの?」と思った方もいることでしょう。もう一つありえることは、今まで発達障害とされていなかったものが発達障害と診断されるようになったというパターンです。
 発達障害ついては前者の可能性も決して少

もっとみる
発達障害はなぜ増えたのか  二つのグローバル化と生存の地すべり

発達障害はなぜ増えたのか  二つのグローバル化と生存の地すべり

 発達障害についての考察を『発達障害はなぜ増えたのか  二つのグローバル化と生存の地すべり』という電子書籍にまとめました。発達障害の増加の理由を社会の変化から読み解いていきます。

 全文無料で読めます。ダウンロードの他、連載形式でnoteにも掲載します(ブクログパブーが終了したようでリンクからは読めません。下の目次から各ページへ飛べます。)

 ここには「はじめに」と目次を公開。

 はじめに

もっとみる