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"深淵と同じ色の真っ白"の話
そこに争いはなくて、私と、その他の干渉できない大勢がいるのみ
私が振りかざした手の先の絶対に後悔、羨望、悲しみ、解放を抱く大勢をよそに膨張を加速させる。
深淵と同じ色の真っ白がいよいよ大勢を包んだ時に訪れる目の前が真っ白と言う以外に「何ともない」という違和感が大勢の恐怖を煽る。
溶ける人々に地球も揺れて、月も太陽さえも冥王星すら白に返す。
その全てが混ざった太陽系はすぐにお互いが理解できた
【短編小説】AIの落とし子
「サツイヲ…モッテ…」
ノイズの入った単調な低音で呟かれた声の主がその角から姿を表す…
切っ先から刀身中腹までがあったであろう「錆々の欠け刃の剣」を握り締める手の人工筋肉は所々で断裂してほぼフレームで持っている状態、そして同様に全身にわたって損傷が激しい骨董品のセキュリティガードだった。
「サツイヲ…サツイヲモッテ…」
そう繰り返しながら通路を進んでいくロボットの行く道には綺麗に二列だけ埃
【短編小説】beginning of blink - ブリンクの前日譚
燃えるような西日が山肌で遮られ始め、その日も過酷だった赤熱に森が寝静まろうとする頃、木々の間、幹や枝を伝って一陣の風のような身軽さで走る、いや跳躍する影が一つ、一直線でどこかへ向かう。
目的地はそこからしばらく離れたところに見えた、一等星が見え始めた空に不自然な、徐々に大きくなる「歪な雲の落下点」。
耳を澄まし、足音は5… 7人分。
山の尾根を迂回してまっすぐ目的地に向かう足取りのようだ。
死ねない男が羨む死んだ女の赤い血の話
聖永の刹那、有為の奥山抱えし麓の賽の河原で石を積む。
川は流れど終着はなく、追えば気づいて積まれた石。
歩けど届かぬ最果てに、憂えて自死さえよぎるけど、そんな勇気はありゃしない。
ふと現れた人型に、人肌恋しさの心の小躍り沸かせるも、既に事切れて目は魚。
彩乏しき白と黒の世界に、滴る赤のあなたの生命の残滓が美しくて、しかし終わりを選べたことが羨ましくも妬ましく。
かくて現れた赤色は、余計に