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インド料理のこと

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インド料理のこと4-3(結) Ethnic Cuisine: the significant 'other'/Ashis Nandyを読んで

インド料理のこと4-3(結) Ethnic Cuisine: the significant 'other'/Ashis Nandyを読んで

今回の投稿で、このシリーズは終わりです。読んでいく文章は、エスニック料理と飲み物からみるコスモポリタニズム(世界平等主義)の展開です。現代のエスニック料理とビールあるいはワインの組み合わせに、ナンディーは何を思うのでしょうか。

コスモポリタンのペアリング

コスモポリタニズムとエスニック料理を味覚の視点から描写しています。料理と飲み物のペアリングを通して、この思想の性格を分かりやすく説明している

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インド料理文献目録

インド料理文献目録

インド料理のことを考えたいと思っても、どの本やエッセイを読めばいいかわからない。そんな日々を送っていました。
ここでは、そんな私が見つけたインド料理を学べる本やエッセイをまとめてみました。
また見つけるたびに更新していきたいです。

インド料理の概要

コリンガム、リジ―2006『インドカレー伝』東郷えりか(訳) 河出書房新社Achaya, K T. 1994. Indian Food: A Hi

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インド料理のこと4-2 Ethnic Cuisine: the significant 'other'/Ashis Nandyを読んで

インド料理のこと4-2 Ethnic Cuisine: the significant 'other'/Ashis Nandyを読んで

前回に引き続き、Nandyのエッセイを読んでいきましょう。
今回は、エッセイで展開するいくつかの主張をとりあげていきます。

エスニック料理の近況

30年前から近年にかけてのエスニック料理の状況を2つとりあげています。

日本の大都市でも90年代前後に異国の料理を提供するレストランが増加したと言われています。この動向が注目され、学際的なテーマになって食の国際化の議論がされています[1]。
近年の

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インド料理のこと4-1 Ethnic Cuisine: the significant 'other'/Ashis Nandyを読んで

インド料理のこと4-1 Ethnic Cuisine: the significant 'other'/Ashis Nandyを読んで

このエッセイには、2003年版と2021年版があります。2003年に発表されたエッセイのタイトルは、「Ethnic Cuisine: the significant 'other'」でしたが、2021年に出版された本ではタイトルが 「ethnic cuisine」に変更されています。
以前から、2003年のエッセイに目を通していましたが、2021年の新しい本に「ethnic cuisine」という

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 インド料理のこと3 THE CHANGING POPULAR CULTURE OF INDIAN FOOD/Ashis Nandyを読んで

インド料理のこと3 THE CHANGING POPULAR CULTURE OF INDIAN FOOD/Ashis Nandyを読んで

このエッセイは、急速に形成されつつある現代インドの食文化を大きく2つの流れから説明しています。

現代インドにおける食文化の流れ
・南インドのファストフード(イドゥリ、ドーサ、ワダ、ウタパム)が、インド全体で幅広く受け入れられるようになっていること。

・過去50年の間にインド国内の都市のフォーマルな場あるいはセレモ二ーの場で提供される料理としてムガル料理やパンジャーブ料理が占めるようになったこと

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インド料理のこと2-4(結) How to Make a National Cuisine/Arjun Appaduraiを読んで

インド料理のこと2-4(結) How to Make a National Cuisine/Arjun Appaduraiを読んで

だらだら、つらつらと続けてきたこのシリーズの最後です。まとめていきます。
前提として、このエッセイは国民的な料理という曖昧なものをどうすれば国民がイメージできるようになるんだろうって問題に取り組んでいます。

例えば、私自身は日本の国民的な料理といえばと聞かれたとき、なかなかすぐに出てこないです。でも、別の人に聞いたら、そばであったり、うどんであったりラーメンであったりと、すぐに出てくることもある

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インド料理のこと2-3 How to Make a National Cuisine/Arjun Appaduraiを読んで

インド料理のこと2-3 How to Make a National Cuisine/Arjun Appaduraiを読んで

アパデュライは料理本によって、国民的な料理が生まれつつある中で以下のような問いをたてます。

なぜこれまで一般的にインド料理といえるヒンドゥー料理が生まれなかったのか。

そして問いの答えをヒンドゥー教の根本的な構造として捉えています。

ヒンドゥー教では、地域的な慣習は思想に反しない限り権力者によって保護される前提があります。こうした前提のもとで、食は道徳的・医学的に信仰と深い意味があったにもか

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インド料理のこと2-2 How to Make a National Cuisine/Arjun Appaduraiを読んで

インド料理のこと2-2 How to Make a National Cuisine/Arjun Appaduraiを読んで

前回の続きです。
なぜ料理本から国民的な料理がつくられるのかをといった関係性をみていくために、まず料理本とは何かということを考えていきましょう。

料理本とは
料理本は、料理をつくるためのマニュアルでもありますが、食べ物の説明、調理方法、食事方法なども書かれています。また料理に関する伝承を伝えたり、料理をつくるためにキッチンに何が必要かされ教えてくれます。

料理本導入後の変化:前近代と現代
前近

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インド料理のこと1 インドにおける国家建設と「インド料理」を読んで

インド料理のこと1 インドにおける国家建設と「インド料理」を読んで

何度かインドを旅行して、東インドのコルカタや北インドのデリー、南西のケーララあるいは南東のチェンナイなど、各地の料理を食べた後に、こんなバラエティ豊富な料理を一言でインド料理とまとめることができるのかと疑問が浮かびました。

そこで「インド料理」を国民料理としての視点からみた小論が掲載されている本があったため読んでみました。

本はタイトルでもある『「国民料理」の形成』といった観点から、フランス料

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