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太宰治っぽい文章を書いてみた
どうやら、太宰治の『人間失格』を読むと大抵の人間が「これは自分のことを書いている!」と思ってしまうようで、それは中学時代の私も例外ではなかった。特に、
誰でも、人から非難せられたり、怒られたりしていい気持がするものでは無いかも知れませんが、自分は怒っている人間の顔に、獅子(しし)よりも鰐(わに)よりも竜よりも、もっとおそろしい動物の本性を見るのです。ふだんは、その本性をかくしているようですけれ
それでもパフェは美味しい
「ねぇ、それ何読んでるの?」
女はスマホから目を離さず聞いた。
「あっ、これ?小説」
男はそっけなく答えた。テーブルに置かれたホットコーヒーからは白い湯気が立ち昇っては消える。
「小説ね。なんの小説?」
「昔の」
コーヒーの白い湯気が二人の間でゆれる。
「あっそう。本好きなんだね」
「まぁ、多少は」
男がそういったきり、しばらく沈黙が流れた。入口のベルの音がやけにはっきりと聞こえてくる
「浅倉南」になれなかった同志に贈る
1996年春、浅倉南になり損ねた女がいた。彼女は待てど暮らせど結婚式場にやって来る気配のない婚約者の男の家に向かって、人の目を忘れ、東京の街を白無垢姿のまま夢中で走る。婚約者の苗字は浅倉。女の名は南。結婚式が終わって浅倉と夫婦になれば、晴れて浅倉南になるはずだった。なのに、結婚式場に浅倉がやって来ない。
結婚式まで残り15分。婚約者はやってこない。周りの目が痛い。母親は彼女の肩を揺すって、仕切