anemos アネモス

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記事一覧

『きねんび』(桃萌)

くるしいのはわたしだけじゃないことを確認して安心するのは、他人の不幸をビリビリに破って半分ずつ分け合うことなのか。傷を舐めあって、お互いの塩分で真っ赤に爛れさせ…

『花束』(桃萌)

人間の心は底なしだから、どれだけ大丈夫をもらっても暗いほうへ落ちていく。まわりがいろんな色の、いろんな形の大丈夫をくれるのに、暗いほうに落下した瞬間、それは粉々…

8

『幸せの定義』(桃萌)

苦しくならないように1番上のボタンをあける 立ち上がる前にひとつぶのチョコをくちに含む いつもより大きな音で好きな音楽を聴く 私が生きやすいように、 あなたを傷つけ…

5

『夢』(日向子)

夢を見ている暇はなかった 私たちはただ朝起きて、空洞の頭蓋で朝の支度をして 夢を見ている暇はなかった 数字とにらめっこする、その数は 私が毎日心の数を減らすこと…

4

『春』(桃萌)

空気が冷たい理由は定かじゃない。ひんやりとした冷たさより、張りつめた冷たさ。 鼓膜の閉鎖感に気が付き、少し考え耳鳴りだと理解する。目を瞑ってしまうほどまっすぐな…

7

『悩むことって、贅沢かも』(愛理)

こないだ、初めてひとりバーなるものに挑戦した。 …うん、そわそわする。 隣の人はさっきから物思いにふけっている。 奥の人は窓の外を見ている。 私も真似事をしてみ…

8

『働けるおまえのためのうた』(日向子)

おまえのために。テンプレートをつかって宛てたメールを効率良く処理する。電話口のおまえに共感を示しながら、商品のいいところをすり込む。おまえは隣の席の他愛もない話…

5

『ハニーディッパー』(桃萌)

パンにピーナッツバターを塗ることに幸せを感じられるようになりたい。 パンが焼けるのを待って、こんがり焼けてることを確認して、ピーナッツバターをすくうためのスプー…

7

『ほたるいかちゃん』(桃萌)

日記 4/17 お腹いっぱいなのに今しかホタルイカを食べられないから、食べてしまった。ずっと喉元で泳いでる。 富山県産のシールが貼ってあった。ちょっと前に、ホタルイ…

9

『死んで星になる』(桃萌)

死んだら星になりたいって、どうしても理解できない。たとえばわたしたちがほんとうに死んだとき、何になるんだろう?花や星や風の声のような、ふと思い出されるような、フ…

15

『一格』(日向子)

一格 新しいChromeをご利用いただけます 人間のふりして話しかけてくるーーー、 ーーーを人称としてみとめる おまえ Chromeの後ろにいるだれかが恐ろしい 赤子の悠久…

16

『はじめまして 甘いものと、優しい美味しさと、器用なネコと』(桃萌)

はじめまして。 わたしの名前は中西桃萌(なかにしもも)です。 年齢は22で、甘いものがすきです。  自己紹介といえば、こんな感じですきな食べものを公表するイメージが…

25

『 世界を救うのは言葉だと信じている』 (愛理)

はじめまして、『anemos』の清水愛理(しみずあいり)と申します。 私の名前は、 「人を愛する心理を持った子になって欲しい」 という意味です。 この名前は私が与えられた…

23

『きねんび』(桃萌)

くるしいのはわたしだけじゃないことを確認して安心するのは、他人の不幸をビリビリに破って半分ずつ分け合うことなのか。傷を舐めあって、お互いの塩分で真っ赤に爛れさせてしまうのか。
まいにち毛繕いする動物のように、いつか崩れてしまう毛並みを整え続けるのは、逃げることとおなじなのか。

だれも肯定してくれないのなら、おなじ動物どうしで手をつないでぴったり寝ることしかできない。ことばにしたら押しつぶされてこ

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『花束』(桃萌)

人間の心は底なしだから、どれだけ大丈夫をもらっても暗いほうへ落ちていく。まわりがいろんな色の、いろんな形の大丈夫をくれるのに、暗いほうに落下した瞬間、それは粉々になってキラキラ鳴きながら散る。

明るさは痛みや不快をもたらすから、耳鳴りがするほどの不幸を吸い込みたいんです。あなたがくれた優しさは、わたしがおおきな音を立てて咀嚼してからばらばらになり、真っ黒に液状化した共感と融合する。あなたの優しさ

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『幸せの定義』(桃萌)

苦しくならないように1番上のボタンをあける
立ち上がる前にひとつぶのチョコをくちに含む
いつもより大きな音で好きな音楽を聴く

私が生きやすいように、
あなたを傷つけないように、
意地悪じゃなくてできること

ことばを理解すること
水の中で息をすること
空を飛ぶこと

同じくらいに冷たい手を繋ぐこと
純白ではないが透明で
消えがちな淡く脆いマヌス

私が息をしやすいように、
あなたに気づかれないよ

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『夢』(日向子)

夢を見ている暇はなかった

私たちはただ朝起きて、空洞の頭蓋で朝の支度をして

夢を見ている暇はなかった

数字とにらめっこする、その数は 私が毎日心の数を減らすことで、やっとのことで手に入る

朝起きるという健やかな生活

すべては明日いきていくための

明日 同じ夢をみないための

この夜 あなたと一緒におなじ夢を見ること それだけが私の夢だった

あちらの世界で 喜びは この夢が私に隠された

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『春』(桃萌)

空気が冷たい理由は定かじゃない。ひんやりとした冷たさより、張りつめた冷たさ。
鼓膜の閉鎖感に気が付き、少し考え耳鳴りだと理解する。目を瞑ってしまうほどまっすぐな音が頭を循環する。
それが後頭部に退くのを見守りゆっくりと目を開けると、正面に1人の少女が座っている。

わたしは電車が発車するのを待っている。座席に座り、薄暗い外の景色を見ていた。

わたしは、音楽について問いたいようだった。

「あなた

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『悩むことって、贅沢かも』(愛理)

こないだ、初めてひとりバーなるものに挑戦した。

…うん、そわそわする。

隣の人はさっきから物思いにふけっている。
奥の人は窓の外を見ている。

私も真似事をしてみたけれど落ち着かない。慣れていない。
文庫本を出しては、仕舞い。
スマホを開いては、閉じ。
バーテンダーさんに話しかけられ、陰キャ全開で噛み倒してしまった。

私の指が、助けを求めるように動く。

「1人飲み 何する」

「1人飲みで

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『働けるおまえのためのうた』(日向子)

おまえのために。テンプレートをつかって宛てたメールを効率良く処理する。電話口のおまえに共感を示しながら、商品のいいところをすり込む。おまえは隣の席の他愛もない話に笑みを浮かべて相槌を打つ。数字を追うのも苦しくない。電話に出るのも怖くない。強い心の、傷つくことをおそれない、全部、おまえのためにやる。働くことは案外むずかしくないおまえのために書く。逃げなくてもうたえる、働きたくないけど働ける、世の中に

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『ハニーディッパー』(桃萌)

パンにピーナッツバターを塗ることに幸せを感じられるようになりたい。

パンが焼けるのを待って、こんがり焼けてることを確認して、ピーナッツバターをすくうためのスプーンを用意して、はしっこの部分までていねいにそのどろどろを塗るためには、ゆっくり生きている必要があるから。ふわっとしたゆっくりないつもに、幸せを感じられたら。

チーズを1枚乗せてオーブントースターにまかせるのもシンプルでいいけど、ちょうど

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『ほたるいかちゃん』(桃萌)

日記 4/17

お腹いっぱいなのに今しかホタルイカを食べられないから、食べてしまった。ずっと喉元で泳いでる。

富山県産のシールが貼ってあった。ちょっと前に、ホタルイカの身投げの記事を読んだ気がする。「日本海で蒼く光る宝石」。宝石というより、おままごとのおもちゃみたい。いつも、パックにぎゅうぎゅうに詰められた、ぷりぷりでちいさなホタルイカを可愛いと思って見てしまう。でも、苦しそうに詰まったホタル

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『死んで星になる』(桃萌)

死んだら星になりたいって、どうしても理解できない。たとえばわたしたちがほんとうに死んだとき、何になるんだろう?花や星や風の声のような、ふと思い出されるような、フィクションでよくありがちな、そういう生まれ変わりを想像するかもしれない。

けど、花は摘み取られてしまうし、星の名前は忘れられてしまうし、風はなにも伝えられないだろう。望まない花言葉を付けられても糾弾できなくて、一等星のシリウスに勝てなくて

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『一格』(日向子)

一格

新しいChromeをご利用いただけます

人間のふりして話しかけてくるーーー、

ーーーを人称としてみとめる おまえ

Chromeの後ろにいるだれかが恐ろしい

赤子の悠久の夢を知らない

母子の判別のつかない老人を気にもとめない

あなたのできることはなんですか

だれかになりたい 通過されない

有機的なだれか

さわるのには憚られるような

ざらついて やわらかく 赤みがかった

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『はじめまして 甘いものと、優しい美味しさと、器用なネコと』(桃萌)

はじめまして。
わたしの名前は中西桃萌(なかにしもも)です。
年齢は22で、甘いものがすきです。

 自己紹介といえば、こんな感じですきな食べものを公表するイメージがあるけど、わたしは食べもののこだわりがあまりにも無いから、具体的な名称が出てこない。
 こういうとき、いちごとか、生クリームとかみたいな、ピンクと白が混じり合ったようなイメージのものを答えておけば大体の人は「可愛い」って言ってくれるか

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『 世界を救うのは言葉だと信じている』 (愛理)

はじめまして、『anemos』の清水愛理(しみずあいり)と申します。

私の名前は、
「人を愛する心理を持った子になって欲しい」
という意味です。
この名前は私が与えられたすべての中で、1番大好きなもの。

私は、世界を救うのは言葉である、と信じています。

幸せとは、お金や名声などといった、外からもたらされるものではなく、自分が世界をどう捉えるか、起こった出来事に対してどういう考え方や意味づけを

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