青藤木葉

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詩「雪の泥」 colony vol.6展示作品

雪の泥 はじめてみたとき そこだけ透明みたいだった 輪郭が白く光って 身体から雪が生まれているようで あなたが立つ雪原には足跡ひとつなく そこは誰も踏み入れたこと…

青藤木葉
2か月前
6

短歌連作「あなたは遠い冬の国」 colony vol.6 展示作品

あなたは遠い冬の国 美しいひとびとの持つ冬の国 ときおり息に混ざる結晶 白磁の腕に触れはしない 月で生まれた話を信じて過ごす 吹奏の姿はことごとく身を削り銀の楽…

青藤木葉
2か月前
7

2.27

pecoちゃんのエッセイ、『My Life』を読みました。生きていける、と思いました。 とてつもなく大きな愛に触れたとき、それが自分に向けられたものではないとしても、こん…

青藤木葉
3か月前

生きていける

何か良いものに触れたとき、生きていける、と思う。 体験でも、景色でも、音楽でも、文章でも、物でも、人でも。 最近は将来という漠然としたものに不安を感じていて、自…

青藤木葉
3か月前
13

「人間なら倒せる」

『3月のライオン』の17巻の話がしたい 『3月のライオン』の話はずっとしたいが… 人生で一番感銘を受け続けている物語です。 17巻の最後、島田さんが「人間なら倒せる」…

青藤木葉
4か月前
2

さよならサマーバケーション

9月14日で学生最後の夏休みが終了した。 なんというか、無。特筆すべきことがない。 もっと焦燥感とか、憂鬱な気分とか、せめて感情だけでも動いたらいいのだけれど、夏…

青藤木葉
8か月前
12

日記「5/21」「5/26」 colony vol.4展示作品

こちらの日記は手書きで展示していたので、画像のみを添付する形を取らせていただきます。 読みにくいとは思うのですが、お楽しみいただけたら幸いです。

青藤木葉
10か月前
5

詩「パスワード」「白竜と夜光」「refrain」 colony vol.4 展示作品

「******」という あなたの言葉が この世でみつけるべき答えの一つだった。 モンスターの血を持つわたしには言葉の持つ力はすさまじくたったひとつの言葉で長年の…

青藤木葉
10か月前
7

短歌連作「ありふれている」colony vol.4 展示作品

ありふれている 追憶の国にあなたを住まわせてやがて魔法は法となりゆく 時間は 季節から光の濃度へ 夕焼けが好きな理由、わかるよ 飛べそうな体はいつも重たげで紫陽…

青藤木葉
10か月前
6

離島

なんどもここに来てしまう 潮が満ちれば消えてしまいそうな島に わたしは立ち尽くし 誰の名前を呼べば良いのかわからなくなる 夜とも朝ともわからない時間のなかで 前世の…

青藤木葉
1年前
8

空港

小学三年生の頃から お父さんが単身赴任で海外に行くようになった 会えるのは年に数回だった お母さんの体が弱かったから家族で出かけたりはあまりしなかったけど お父さ…

青藤木葉
1年前
12

天国の待ち合わせ場所

喫茶店に行きたい ずっと喫茶店に行きたい 深い椅子にもたれて 自分と 目の前のあなたと向き合う時間 日々は 喫茶店から次の喫茶店に向かうまでのこと 本当は何を話し…

青藤木葉
1年前
12

「日記祭」と日記

日記祭 先日、下北沢のBONUSTRACKで開催された「日記祭」に行きました。 このイベントを知ったのは、私のイチオシ文具メーカー「ミドリ」さんのSNSがきっかけでした。 私…

青藤木葉
1年前
98

最近嬉しかったこと

嬉しいことって言いたくなるし、ひとの嬉しいことを聞くのも嬉しい。 みなさんに会いたいです。会ったときは最近の嬉しかったことを聞かせてください。 ・iPhone8からiPh…

青藤木葉
1年前
6

一つ眼モンスターと朝焼け

突然、わたしは一つ眼モンスターの生まれ変わりだと理解した 正確には、もうひとつの世界でわたしは一つ眼モンスターとして生きているだろう、とわかった 脳裏には、深い…

青藤木葉
1年前
8

さよならだけが、なに?

バイト先の仲良いお姉さんが今月で辞めてしまう 今月で、といっても2週間分くらいの有給を使い切ってから辞めるからあと4回くらいしか来ないらしい さみしい 今まで色ん…

青藤木葉
1年前
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詩「雪の泥」 colony vol.6展示作品

詩「雪の泥」 colony vol.6展示作品

雪の泥

はじめてみたとき
そこだけ透明みたいだった

輪郭が白く光って
身体から雪が生まれているようで

あなたが立つ雪原には足跡ひとつなく
そこは誰も踏み入れたことのない場所

わたしはあなたに触れたかった
冷たいのか温かいのか確かめたかった

一人きりで生まれて育ったような姿で
けれど器用に音楽を口ずさむから
最初からこの世界の暗号を知っているみたい

わたしはあなたを知りたかった
暗号の文

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短歌連作「あなたは遠い冬の国」 colony vol.6 展示作品

短歌連作「あなたは遠い冬の国」 colony vol.6 展示作品

あなたは遠い冬の国

美しいひとびとの持つ冬の国 ときおり息に混ざる結晶

白磁の腕に触れはしない 月で生まれた話を信じて過ごす

吹奏の姿はことごとく身を削り銀の楽器の冷たい光

感性が研ぎ澄まされて冬眩暈あなたの手紙の誠実さがいま

カフェラテの泡は静かに底に降り話すことなど今更ないのに

木の置き時計に時間は流れて沈黙は言葉のように使われる

背後から海とあなたを同時に見ていた 声はとうに浜

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2.27

pecoちゃんのエッセイ、『My Life』を読みました。生きていける、と思いました。

とてつもなく大きな愛に触れたとき、それが自分に向けられたものではないとしても、こんなに胸が熱くなって涙が出ることを初めて知りました。

共感や同情、感動とも違う、純粋な気持ちの増幅。わたしだけの気持ちを忘れないでいたい。

生きていける

生きていける

何か良いものに触れたとき、生きていける、と思う。

体験でも、景色でも、音楽でも、文章でも、物でも、人でも。

最近は将来という漠然としたものに不安を感じていて、自分がどうなるのか周りがどうなるのか、ぼんやりと考えてはやめることを繰り返していた。
昔から約束がないと不安で、時間が怖かった。

未来ってわからなすぎるし想像でしかない。

一方で過去は確かなもので、安心できる。
過去の連鎖で今の自分が

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「人間なら倒せる」

『3月のライオン』の17巻の話がしたい

『3月のライオン』の話はずっとしたいが…
人生で一番感銘を受け続けている物語です。

17巻の最後、島田さんが「人間なら倒せる」と言ってその話は終わる。
これって、後々『3月のライオン』のタイトル回収にも響きそうなセリフじゃないですか?
物語自体が持つ「棋士」と「人間」の対比・境界がここに来て一変するというか。

私は「神格化」(=憧れ)と「人間臭さ」の表

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さよならサマーバケーション

9月14日で学生最後の夏休みが終了した。
なんというか、無。特筆すべきことがない。
もっと焦燥感とか、憂鬱な気分とか、せめて感情だけでも動いたらいいのだけれど、夏休みが終わることに何も心が揺れない。

このことは、最近といってもここ半年以上、日記が書けなくなったことにも通じていると思う。去年は毎日ではなくとも週に3日くらいは日記を書いていた。書きたいことがあるときに書くルールにしていたから、今書け

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日記「5/21」「5/26」 colony vol.4展示作品

日記「5/21」「5/26」 colony vol.4展示作品

こちらの日記は手書きで展示していたので、画像のみを添付する形を取らせていただきます。
読みにくいとは思うのですが、お楽しみいただけたら幸いです。

詩「パスワード」「白竜と夜光」「refrain」 colony vol.4 展示作品

詩「パスワード」「白竜と夜光」「refrain」 colony vol.4 展示作品

「******」という
あなたの言葉が この世でみつけるべき答えの一つだった。

モンスターの血を持つわたしには言葉の持つ力はすさまじくたったひとつの言葉で長年の病が治るようだった

ずっと欲しかったの
わたしの中の秒針がひとつ進み
ようやく愛を信じることができる

どれほどのことを成し遂げたのか
あなたはきっと気づいていない
どんなに嬉しかったか天国の待ち合わせ場所で打ち明けよう
生まれ変わった

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短歌連作「ありふれている」colony vol.4 展示作品

短歌連作「ありふれている」colony vol.4 展示作品

ありふれている

追憶の国にあなたを住まわせてやがて魔法は法となりゆく

時間は 季節から光の濃度へ 夕焼けが好きな理由、わかるよ

飛べそうな体はいつも重たげで紫陽花であることを押し付けた

想像するほどに港は遠ざかるから、舟のわたしは見つけられない

還さ/らなきゃ 溢れるように溶けている日々に 生きていけます

生活がまだない昼に河川敷歩けば再生されるスピッツ

風のなか動画を回す 抱きしめ

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離島

なんどもここに来てしまう
潮が満ちれば消えてしまいそうな島に
わたしは立ち尽くし
誰の名前を呼べば良いのかわからなくなる

夜とも朝ともわからない時間のなかで
前世の記憶のように大切な人たちの顔が浮かぶ

大切なひとが私への興味を失い
冷たい目を向ける夢をよくみる
このひとのもとから私に関する記憶が
なくなり
わたしが果たす役割は終えたのだと
もうわたしがこのひとにしてあげられることはないのだと

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空港

空港

小学三年生の頃から
お父さんが単身赴任で海外に行くようになった
会えるのは年に数回だった

お母さんの体が弱かったから家族で出かけたりはあまりしなかったけど
お父さんが帰ってくると普段は出来ない遊びができた 図書室にない新しい本を買ってくれた

多分この頃から
私は楽しい時間のことをいつか終わる時間だと思うようになった
1週間お父さんが帰ってきたとして
4日目にはもう寂しい

終わったあとのこと

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天国の待ち合わせ場所

天国の待ち合わせ場所

喫茶店に行きたい
ずっと喫茶店に行きたい

深い椅子にもたれて
自分と 目の前のあなたと向き合う時間

日々は
喫茶店から次の喫茶店に向かうまでのこと

本当は何を話したかなんて覚えてないんだ
ただこの小さな机と椅子が
わたしとあなたの世界として確かで
ここだけでいいのに
わたしが守りたいのはこんなに小さな世界なのに、と思って
幸福で尊い時間を噛みしめることしかできない

喫茶店は時間を吸って生き

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「日記祭」と日記

「日記祭」と日記

日記祭

先日、下北沢のBONUSTRACKで開催された「日記祭」に行きました。

このイベントを知ったのは、私のイチオシ文具メーカー「ミドリ」さんのSNSがきっかけでした。
私の愛用している文具たちはミドリ製品がたくさんです。実際、「MDノート」というミドリさんの看板商品を日記として使っています。
ミドリさんはこの日記祭に「日記のきっかけ展」で参加されていました。告知SNSを見て、これは行かなく

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最近嬉しかったこと

最近嬉しかったこと

嬉しいことって言いたくなるし、ひとの嬉しいことを聞くのも嬉しい。
みなさんに会いたいです。会ったときは最近の嬉しかったことを聞かせてください。

・iPhone8からiPhone13miniに機種変更をした。担当してくれたお兄さんが気さくで面白かった。知らない機能がたくさんあって驚いた。みんなはこの世界で生きていたのか…。Shazamを早く使いたい。あと画質良すぎて、自撮りしたら心なしかわたしの顔

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一つ眼モンスターと朝焼け

突然、わたしは一つ眼モンスターの生まれ変わりだと理解した

正確には、もうひとつの世界でわたしは一つ眼モンスターとして生きているだろう、とわかった

脳裏には、深い森で膝を抱えてうずくまる毛むくじゃらの怪物が浮かんでいた
あなただったのね

こんなにも朝焼けに憧れるのも 誰かの体温が恋しいのも 女の子とは思えない毛深さなのも 乱視で世界が歪んで見えるのも
全部
あなただったのね

わたしの魂が輪郭

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さよならだけが、なに?

バイト先の仲良いお姉さんが今月で辞めてしまう
今月で、といっても2週間分くらいの有給を使い切ってから辞めるからあと4回くらいしか来ないらしい

さみしい

今まで色んなところで働いてきたお姉さんにとっては、わざわざ一人の学生バイトに思い入れなんてないってわかってる。
でも、わたしは3年目にして初めて同僚ができて(それまでわたしの職種はワンオペで、同性もいなかった)嬉しかった
嬉しくてたくさんはしゃ

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