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アニメーション関連のデータ整理に携わっています。

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記事一覧

ジョン・コルトレーン・カルテット『クレッセント』

 高田馬場にあった「ムトウ」は大学に通う途中にあったこともあって本当にお世話になったレコード店で、道を挟んで2店あったうちの片方にあった、半地下のようなジャズコ…

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2か月前
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無人島に持っていくジャズ

無人島に持っていくジャズ――という設問を、以前は「一番好きなアルバム」くらいに考えていたのだけれど、「無人」の場所に持っていく前提を考えるなら、楽器で選ぶべき気…

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4か月前
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話数単位で選ぶ、2023年TVアニメ10選

 TVアニメを「話数単位で」選ぶという方針は、どうしても、シリーズ全体としての好感のようなものを反映させにくい。映像的な突出に対する加点とはまた異なる、例えば「…

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4か月前
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『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』と『無敵超人 ザンボット3』の記憶について

『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』観てきた。爽快感と安心感を充分に摂取した気分で映画館を出た。「TVアニメの劇場版」というジャンルがあるとして、その王道をいろ…

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4か月前
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THEE MICHELLE GUN ELEPHANT

THEE MICHELLE GUN ELEPHANTのチバユウスケの訃報は私にとって到底、すぐに消化できるような類のものではありませんでした。かといって、ずっと悲嘆にくれていたりという、…

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5か月前
3

『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』

『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』は、観る前に“予習”が必要な映画では全くない。6期のスピンオフという建付けだから、例えば水木がちらりと出てくる1話あたりを観る、という…

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5か月前
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ミッシェル・ガン・エレファント

「だがべつに、ミッシェル以外に多くのロックバンドが登場して盛り上がったわけではない。ミッシェル・ガン・エレファントという一つのバンドの力で、それが起きたのだ。」…

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5か月前
3

地図の予感を封じ込めたパンフレット――「toony」(かねひさ書房)――

かねひさ和哉さんの同人誌「toony」が届いた。時間がなくまだパラパラしたのみだけど、ほんの拾い読みしただけでもすごく充実感がある。64頁という分量のなかにまとめられ…

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8か月前

最近とみにもの忘れがひどい、とお悩みのあなたへオススメしたい3冊(2017.09.23「シミルボン」投稿)

《もの忘れがひどい》という悩みに対する解 決策にはどんなものがあるだろう。やはり何 にせよ、まず優先順位をつけてみてはどうだ ろうか。映画『メメント』('00米)に登場…

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9か月前
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アーマッド・ジャマル死去

 アーマッド・ジャマルの訃報に接して、自分の上っ面なジャズ史知識でお茶を濁すようなことはやっぱり言う気にならないし、それよりはもうちょっとだけ、ジャマルの演奏は…

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1年前
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『新世紀 エヴァンゲリオン』最終話について

今日、このあとTOKYO MXで放映する『新世紀 エヴァンゲリオン』再放送が最終話を迎える。考えてみると、自分にとっての『エヴァ』が「無類に面白い、全部ベットし…

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1年前

ウェイン・ショーター死去/『Adam's Apple』より〝Footprints〟

 突然のウェイン・ショーター死去の報にふれて、やはり何かを聴きたいという思いにかられた。メッセンジャーズ、マイルスグループ、ウェザー、それらを縫うように存在する…

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1年前
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『機動戦士ガンダム 水星の魔女』12話「逃げ出すよりも 進むことを」感想

『水星の魔女』12話、アバンのプロスペラのつぶやきを聴いたとき、彼女が「母親としての碇ゲンドウ」であることを改めて思う。そしてゲンドウがシンジをエヴァに乗せる方法…

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1年前
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わたしのアニメ歴3選

■『銀河鉄道の夜』('85 監督:杉井ギサブロー) ■『戦闘メカ ザブングル』('82~83 監督:富野由悠季) ■『きまぐれ オレンジ★ロード あの日にかえりたい』('88 監督:望…

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1年前
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話数単位で選ぶ、2022年TVアニメ10選

 個人的に今年は、日本の商業アニメというジャンルが今ある状況を象徴するような出来事が連続した年だったという印象をもっていて、そしてその印象や出来事は、この10選に…

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1年前
6

『すずめの戸締まり』感想メモ

あまりネタバレにならない範囲で『すずめの戸締まり』感想。己を吐露することよりも「他者のために話しかける」ことに比重があるという印象があって、その点で、監督のこれ…

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1年前
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ジョン・コルトレーン・カルテット『クレッセント』

ジョン・コルトレーン・カルテット『クレッセント』

 高田馬場にあった「ムトウ」は大学に通う途中にあったこともあって本当にお世話になったレコード店で、道を挟んで2店あったうちの片方にあった、半地下のようなジャズコーナーは、そこでいくつも大切なアルバムを購入した場所だった。

 ジョン・コルトレーン・カルテット『クレッセント』もそんななかの一枚で、紙ジャケット仕様で何枚か集中して出たラインナップのひとつ。 #applemusic で久しぶりに聴いてみ

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無人島に持っていくジャズ

無人島に持っていくジャズ――という設問を、以前は「一番好きなアルバム」くらいに考えていたのだけれど、「無人」の場所に持っていく前提を考えるなら、楽器で選ぶべき気もしてくる。例えばピアノのアルバムよりもヴォーカル……もし歌ものを選ぶのではないとしても、管楽器のあの、声の延長としての楽器が出す音を体が求めるような予感がある。

ラサーン・ローランド・カークは自分にとっての全音楽ジャンルにおけるもっとも

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話数単位で選ぶ、2023年TVアニメ10選

話数単位で選ぶ、2023年TVアニメ10選

 TVアニメを「話数単位で」選ぶという方針は、どうしても、シリーズ全体としての好感のようなものを反映させにくい。映像的な突出に対する加点とはまた異なる、例えば「シリーズ構成」のようなポジションの仕事への言及もいきおい限定的なものになる。……言わずもがなのことを最初に書いたが、そういう理由で好きだった作品や、あるいはもっと漠然と「突出したクオリティを誇るというのとは違うけど、全体として何かすこく好ま

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『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』と『無敵超人 ザンボット3』の記憶について

『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』と『無敵超人 ザンボット3』の記憶について

『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』観てきた。爽快感と安心感を充分に摂取した気分で映画館を出た。「TVアニメの劇場版」というジャンルがあるとして、その王道をいろんな意味で体現している映画だと感じた。

『名探偵コナン』の劇場版に近しい感じをもったのは、冒頭の状況説明パート(コナンの場合は小さくなった、こちらは疑似家族になった、それぞれの経緯)の組み込まれ具合と、カップルや家族連

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THEE MICHELLE GUN ELEPHANT

THEE MICHELLE GUN ELEPHANTのチバユウスケの訃報は私にとって到底、すぐに消化できるような類のものではありませんでした。かといって、ずっと悲嘆にくれていたりという、そういうことでもない。
作品を介してその声を聴いてきたという関係は、肉親や友人というのとはやはり違う。残るのは、ものすごく大きな喪失感と、これから先も残された作品を聴くことでそのつど「これは一体何だろう」と考えるん

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『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』

『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』は、観る前に“予習”が必要な映画では全くない。6期のスピンオフという建付けだから、例えば水木がちらりと出てくる1話あたりを観る、というくらいならまだしも、アニメ版『墓場鬼太郎』を事前に観るのはむしろ誤解を生みそうな気さえする。それなら原作の1話を読むとか。

『ゲゲゲの謎』の面白さは、そういう“予習”の有無とかとは離れたところに存在しているし、だからこそこれだけヒットして

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ミッシェル・ガン・エレファント

「だがべつに、ミッシェル以外に多くのロックバンドが登場して盛り上がったわけではない。ミッシェル・ガン・エレファントという一つのバンドの力で、それが起きたのだ。」/山崎洋一郎の「総編集長日記」 https://rockinon.com/blog/yamazaki/208246

人もあろうに山崎洋一郎がこういう言い方をしたことが悲しい。

ミッシェルが「一つのバンドの力で」あのときのロックの熱気を

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地図の予感を封じ込めたパンフレット――「toony」(かねひさ書房)――

地図の予感を封じ込めたパンフレット――「toony」(かねひさ書房)――

かねひさ和哉さんの同人誌「toony」が届いた。時間がなくまだパラパラしたのみだけど、ほんの拾い読みしただけでもすごく充実感がある。64頁という分量のなかにまとめられたフライシャーの魅力……そう、自分がこの本を手に取ったときの充実した気持ちの理由のひとつは、この本のボリューム感にある。

フライシャーというテーマに絞った、いわば「窓」を用意したことで、その「窓」の向う側に巨大に広がっている「アニメ

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最近とみにもの忘れがひどい、とお悩みのあなたへオススメしたい3冊(2017.09.23「シミルボン」投稿)

《もの忘れがひどい》という悩みに対する解
決策にはどんなものがあるだろう。やはり何
にせよ、まず優先順位をつけてみてはどうだ
ろうか。映画『メメント』('00米)に登場する、
記憶が10分間しか保持できないハンデを抱え
た主人公は、"忘れてはいけないこと"を自ら
の肌に刺青で刻みつけていた。もの忘れ対策
としてはなかなか過激なこの手段をまんま真
似ることは難しいとしても、それほど優先度
の高い"忘

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アーマッド・ジャマル死去

アーマッド・ジャマル死去

 アーマッド・ジャマルの訃報に接して、自分の上っ面なジャズ史知識でお茶を濁すようなことはやっぱり言う気にならないし、それよりはもうちょっとだけ、ジャマルの演奏は私の内側に食い込む形で鳴っていたことに改めて思い至っている。

 自分にとってのジャマルはと考えていて、迷った末に選んだのは、やっぱりこのアルバムだった。まだジャズの知識がほとんどなかった大学生の時分、通っていた大学の通学路になっていた高田

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『新世紀 エヴァンゲリオン』最終話について

今日、このあとTOKYO MXで放映する『新世紀 エヴァンゲリオン』再放送が最終話を迎える。考えてみると、自分にとっての『エヴァ』が「無類に面白い、全部ベットしていいと思えるアニメ」であった期間は、1話を見始めた瞬間から、この最終話を見終るまでの、今にして思えば結構短い間だった。

逆にいうなら、この最終話を見終えてから、『ジ・エンド・オブ・エヴァンゲリオン』を渋谷で観て映画館を出るまでの間という

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ウェイン・ショーター死去/『Adam's Apple』より〝Footprints〟

ウェイン・ショーター死去/『Adam's Apple』より〝Footprints〟

 突然のウェイン・ショーター死去の報にふれて、やはり何かを聴きたいという思いにかられた。メッセンジャーズ、マイルスグループ、ウェザー、それらを縫うように存在するソロ……ショーターの遍歴はジャズがエレクトリック化しフュージョンを準備する流れとがっつり重なるものなので、どの時期を選ぶかで「その人にとってのショーター」が浮き上がる。そういう意味ではマイルスと並ぶくらいに「ジャズというジャンル自体みたいな

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『機動戦士ガンダム 水星の魔女』12話「逃げ出すよりも 進むことを」感想

『機動戦士ガンダム 水星の魔女』12話「逃げ出すよりも 進むことを」感想

『水星の魔女』12話、アバンのプロスペラのつぶやきを聴いたとき、彼女が「母親としての碇ゲンドウ」であることを改めて思う。そしてゲンドウがシンジをエヴァに乗せる方法と、プロスペラがスレッタをエアリアルに乗せる方法の差異は、両者を隔てている時間以上の、大きな意味をもつんだなあって。

内面の世界へ逃げ込むことだけは禁じられた、紛れもない他者がそこにいる複数の物語であることにおいて、『水星の魔女』は『(

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わたしのアニメ歴3選

■『銀河鉄道の夜』('85 監督:杉井ギサブロー)
■『戦闘メカ ザブングル』('82~83 監督:富野由悠季)
■『きまぐれ オレンジ★ロード あの日にかえりたい』('88 監督:望月智充)
(以上、順不同)

『銀河鉄道の夜』
日本のアニメーション作品でもし1本だけ選ぶとしたら、みたいな無茶なテーマがあったとして、最初に頭に浮かぶのはこれかもしれない。映像も音もとにかく桁外れの、ジャンルの到達

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話数単位で選ぶ、2022年TVアニメ10選

話数単位で選ぶ、2022年TVアニメ10選

 個人的に今年は、日本の商業アニメというジャンルが今ある状況を象徴するような出来事が連続した年だったという印象をもっていて、そしてその印象や出来事は、この10選には(少なくとも直接は)反映していません。

   ∞∞∞

■『王様ランキング』第14話 第十四話 王子の帰還 (1/21)
 きつそうな見た目の継母が作中の誰よりも優しく主人公を抱擁する人間であって何が悪いとばかりに、キャラクターたちの

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『すずめの戸締まり』感想メモ

『すずめの戸締まり』感想メモ

あまりネタバレにならない範囲で『すずめの戸締まり』感想。己を吐露することよりも「他者のために話しかける」ことに比重があるという印象があって、その点で、監督のこれまでにない作品になっていたと思った。

「他者のために」というのは言い換えれば、(その他者たちの生きている)「場所のために」ということでもあって、それは物語が進む中で明瞭に描かれている。そしてそれは結局、主人公が彼女である意味に向かって収斂

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