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詩小説⑤『白樺の映える森』

白樺の映える冬の森
葉も花もない木々さえ綺麗で
ただ佇む静けさに
存在の美しさを思い知らされる

今までずっと
何を追いかけていたの?
息が浅くなるほど
高い場所まで来れたの?

水滴の実がなった
湿った枝が笑うように光って
この傷に落ちた

あの日からずっと
あの頃からずっと
叶えられていない瞳のまま
生きてきてしまった証の

溢れ出る涙も凍って
温もりはあっという間に
冷えて空気に消えていく

澄み切れないよ
こんなに溢れ返る哀しみが
空虚な白い空に照らされて
動けなくて届かないままで

なのにどうして
まるで空気全てが音で
宇宙の雫が傷に降って
視界をクリアにしていく

誰もいないから気付けたの
一人でいたから出逢えたの

見渡す限りが世界の果てのように
キラキラと鳴る
耳の奥で目の前で
心よりずっと深い場所(どこ)かで

沢山のものを抱えて
なのになぜか何にも持っていない、
そんな感覚だった私に

冷たくて透明な花園が
安心して吸える空気を魅せてくれた
安心して泣ける勇気を教えてくれた

歩き方なんてなんでもいい
とぼとぼでもバタバタでも
その足が前を向き
この瞳が前を見ているだけで

凍った夢を次の季節までに
少しずつ温め溶かして届けたい

そこから次にはきっと
まだ見えないあなたにも
この心に咲いた花園を
明るく灯して届けたい

誰かの傷を照らせるように


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