穴木 好生

好きな生きもの:オニヤンマ、サイ 。         好きな言葉:おもしろき こともな…

穴木 好生

好きな生きもの:オニヤンマ、サイ 。         好きな言葉:おもしろき こともなき世を おもしろく。 生きてるだけで まるもうけ。            好きな生きかた:easy-going 、 半農半書。

記事一覧

もう一つの世界、22   白うさぎ3/5

白うさぎ 3/5  次の日、きなこは、ちゃんと帰ってきた。 「どうする、ちいちゃんのおばさんにあいにいく?」   三咲は、まだまよっている。ケンはいく気満々、 「茶々…

穴木    好生
4日前
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もう一つの世界、22  白うさぎ2/5

白うさぎ、2/5  放課後(ほうかご)、三咲(みさき)は、うさぎ小屋のまえに座(すわ)りこんで、じっと見つめていた。 「どうしたの?」  奈美(なみ)がたずねると、 「『ちゃ…

穴木    好生
11日前
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もう一つの世界の物語、22  白うさぎ 1/5

白うさぎ 1/5  三咲(みさき)は四年三組、うさぎ当番。  いつもはにがてな月曜日も、うさぎ当番になってからはまちどおしくて、小学校につくと、まっすぐうさぎ小屋にと…

穴木    好生
2週間前
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もうひとつの世界の物語、21  マリーンと あんこう 5/5

マリーンと あんこう  マリーンとカイトは、もう南のサンゴ礁にいくひつようがなくなった。  用心深く、サメがいなくなったのをたしかめると、これからふたりで暮らす…

穴木    好生
3週間前
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もうひとつの世界の物語、21  マリーンと あんこう 4/5

マリーンと あんこう 4/5  海の中は、どこまでもはてしなくつづいていた。  深くくぼんだ溝もあれば、小高い山のように起伏した岩礁もある。  どこまでいっても、そ…

穴木    好生
1か月前
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もうひとつの物語の世界21, マリーンと アンコウ、3/5

マリーンと あんこう  マリーンは、もうひとつ大切なことをきいてみた。         「アンコウさん、あたしの仲間をしらない?」 「おまえの仲間?  タコの仲間…

穴木    好生
1か月前
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もうひとつの物語の世界21,  マリーンとあんこう,2/5

マリーンとあんこう  アンコウは、いまいましそうに話しだした。 「いいか、水族館と、海は全く違う世界なのだ。  むかし、お前と同じように、水族館でそだてられたとい…

穴木    好生
1か月前
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もうひとつの物語の世界21,  マリーンと あんこう,1/5

マリーンと あんこう  身体の半分もある大きな顔。  その口をへの字にまげて、なにを考えているのかわからない。  そばを通っただけで飲み込まれてしまいそうなこわい…

穴木    好生
1か月前
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もうひとつの物語の世界20 ぼくは タコのカイトや まけへんぞ!

ぼくは タコのカイトや まけへんぞ!     大海(おおうみ)水族館の大水槽(だいすいそう)で、ジンベエザメの甚平(じんべい)さんはゆうゆうとおよいでいた。 「甚平さー…

穴木    好生
1か月前
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もうひとつの物語の世界19、 宙船・そらふね

宙船・そらふね  神さまがおりたった高天原(たかまがはら)の、  その岸辺のほとり。  ふたりの子どもがあるいていた。  おとこのこのなまえは「なぎ」。  おんなのこ…

穴木    好生
2か月前
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もうひとつの物語の世界18, そらとうみ 3/3

そらと うみ 3/3  ふたりは、壮太(そうた)といっしょに、あっちによばれ、こっちによばれ、ふしぎな話をいっぱいきかされた。  そらは、浴衣(ゆかた)をきた、しかのお…

穴木    好生
2か月前
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もうひとつの物語の世界18 そらと うみ 2/3

そらと うみ 2/3  洞窟(どうくつ)をぬけると、草原(くさはら)のむこうに湖がひろがっていた。  山々の雑木林が、まわりをとりかこんでいる。  祭りをたのしむひとたち…

穴木    好生
2か月前
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もうひとつの物語の世界18, そらとうみ 1/3

そらと うみ 1/3  海岸線のアスファルト道路がへびのように曲がりくねり、岬の先までのびている。  夏の青空が広がり、岬のがけが、道路のすぐうしろまでせまっていた…

穴木    好生
2か月前
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もうひとつの物語の世界17,のどか村の甚平さん3/3

のどか村の甚平さん3/3  次の日、甚平さんは、夢の続きをみるように、昨日の夜のことをおもいだしていました。 ―のどか村は、山の生き物たちの村なんだ。  甚平さんは…

穴木    好生
3か月前
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もうひとつの物語の世界17,のどか村の甚平さん2/3

のどか村の甚平さん2/3  やがて、ひと山越えると、遠くから祭囃子(まつりばやし)がきこえてきました。山に囲まれた湖のなかに、そこだけポッカリと草原が開け、古い龍神…

穴木    好生
3か月前
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もうひとつの物語の世界 17 のどか村の 甚平さん 1/3

のどか村の 甚平さん 1/3    空家だったじっちゃんの古い家に、大上(おおかみ)甚平(じんべい)さんが、引っ越してきました。 「甚平さん、いる?」  おどろん子が家の…

穴木    好生
3か月前
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もう一つの世界、22   白うさぎ3/5

もう一つの世界、22   白うさぎ3/5

白うさぎ 3/5

 次の日、きなこは、ちゃんと帰ってきた。
「どうする、ちいちゃんのおばさんにあいにいく?」
  三咲は、まだまよっている。ケンはいく気満々、
「茶々がどうなったかしりたいやろ?
 だって、白うさぎと一緒にあいにきたんやで。」
 奈美と光司はおたがい顔をみあわせていた。
「いく?」
「いったほうがすっきりするよね。」
「じゃあ、おばさんにあって聞いてみる。」
 三咲のひとことでき

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もう一つの世界、22  白うさぎ2/5

もう一つの世界、22  白うさぎ2/5

白うさぎ、2/5

 放課後(ほうかご)、三咲(みさき)は、うさぎ小屋のまえに座(すわ)りこんで、じっと見つめていた。
「どうしたの?」
 奈美(なみ)がたずねると、
「『ちゃちゃ』かどうか、たしかめてるの。」
「『ちゃちゃ』って?」
「ちいちゃんが飼(か)ってたうさぎ。
 ほら、身体が茶色で、頭の後ろに少しだけ白い毛がはえてる。
 あたし、ちいちゃんの家にお見舞いにいったとき、うさぎを飼(か)っ

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もう一つの世界の物語、22  白うさぎ 1/5

もう一つの世界の物語、22  白うさぎ 1/5

白うさぎ 1/5

 三咲(みさき)は四年三組、うさぎ当番。
 いつもはにがてな月曜日も、うさぎ当番になってからはまちどおしくて、小学校につくと、まっすぐうさぎ小屋にとんでいった。
「おはよう。
 きなこ、ふうこ、まる。
 みんな、げんき?」
 クラスで飼(か)っているうさぎ三匹、もってきたキャベツの葉っぱをほうりこむと、さっそくまるとふうこがかじりだした。
「あれっ、きなこがいない?」
 巣の中

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もうひとつの世界の物語、21  マリーンと あんこう 5/5

もうひとつの世界の物語、21  マリーンと あんこう 5/5

マリーンと あんこう

 マリーンとカイトは、もう南のサンゴ礁にいくひつようがなくなった。
 用心深く、サメがいなくなったのをたしかめると、これからふたりで暮らす、安全な場所をもとめておよいでいった。
 やがて、砂地のなかに砦のようにつきでた岩場で、ふたりですむのにちょうどよい大きさの穴をみつけた。
「ここを、僕たちの新しいすみかにしよう。」
「ここなら、だいじょうぶね。
 穴の中からすべてまわり

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もうひとつの世界の物語、21  マリーンと あんこう 4/5

もうひとつの世界の物語、21  マリーンと あんこう 4/5

マリーンと あんこう 4/5

 海の中は、どこまでもはてしなくつづいていた。
 深くくぼんだ溝もあれば、小高い山のように起伏した岩礁もある。
 どこまでいっても、そのさきにはしらない海があった。
 海草におおわれた海の林、ごつごつした岩場,色とりどりのサンゴが木のように枝を広げている。
 またその先へ行くと、明るい海にテーブルサンゴがおおいつくし、小魚が楽しそうにむれてあそんでいる。
―なんて、

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もうひとつの物語の世界21, マリーンと アンコウ、3/5

もうひとつの物語の世界21, マリーンと アンコウ、3/5

マリーンと あんこう

 マリーンは、もうひとつ大切なことをきいてみた。        
「アンコウさん、あたしの仲間をしらない?」
「おまえの仲間?
 タコの仲間をさがしているのか?」
 アンコウは、またじろりと、マリーンをにらんだ。
「たぶん、いまなら南のサンゴ礁にあつまっておる。」
「ほんとう?」
 マリーンは、やっと仲間に会うことができる。
 早くおよいでいきたくてしかたなかった。
 アン

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もうひとつの物語の世界21,  マリーンとあんこう,2/5

もうひとつの物語の世界21,  マリーンとあんこう,2/5

マリーンとあんこう

 アンコウは、いまいましそうに話しだした。
「いいか、水族館と、海は全く違う世界なのだ。
 むかし、お前と同じように、水族館でそだてられたという子魚にあったことがある。
 子魚たちは、卵からかえって、海で暮らしていける大きさになると、何千、何万という仲間とともに、海に放されたといっておった。」
「知ってる。」
 マリーンは何度も海にかえすところをみていた。
「水族館の飼育員さ

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もうひとつの物語の世界21,  マリーンと あんこう,1/5

もうひとつの物語の世界21,  マリーンと あんこう,1/5

マリーンと あんこう

 身体の半分もある大きな顔。
 その口をへの字にまげて、なにを考えているのかわからない。
 そばを通っただけで飲み込まれてしまいそうなこわい顔。
 アンコウは、海の底から、じっと上を泳ぐ魚をにらんでいた。

 そのアンコウが、頭の真ん中から、細長くつき出た竿(さお)を振っている。
 しかし、アンコウのその竿の先には、かんじんの小魚をおびきよせるた めの疑似(ぎじ)餌(え)が

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もうひとつの物語の世界20 ぼくは タコのカイトや まけへんぞ!

もうひとつの物語の世界20 ぼくは タコのカイトや まけへんぞ!

ぼくは タコのカイトや まけへんぞ!

  
 大海(おおうみ)水族館の大水槽(だいすいそう)で、ジンベエザメの甚平(じんべい)さんはゆうゆうとおよいでいた。
「甚平さーん。」
「おう、カイト、のりたいんか?」
 甚平さんは、ぼくがせがむと、いつもぼくを背中にのせて泳ぎながら、大好きな海の話しをきかせてくれる。
 ぼくは、この大海水族館でうまれたタコや。
 そやから、いちども海にいったことがないん

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もうひとつの物語の世界19、 宙船・そらふね

もうひとつの物語の世界19、 宙船・そらふね

宙船・そらふね

 神さまがおりたった高天原(たかまがはら)の、
 その岸辺のほとり。
 ふたりの子どもがあるいていた。
 おとこのこのなまえは「なぎ」。
 おんなのこのなまえは「なみ」。
 夜明けまえの、なみうちぎわ、
 風は、まだねむっている、
 淡い光だけが、水面(みなも)をてらしていた。

「おにいちゃん、あれは?」
 なみが、ゆびさした。
 なぎは、じっとみる。
 金色にかがやき、
 遠

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もうひとつの物語の世界18, そらとうみ 3/3

もうひとつの物語の世界18, そらとうみ 3/3

そらと うみ 3/3

 ふたりは、壮太(そうた)といっしょに、あっちによばれ、こっちによばれ、ふしぎな話をいっぱいきかされた。
 そらは、浴衣(ゆかた)をきた、しかのおばあさんにきいた。
「ぼくたちも、おおかみの顔になるの?」
 しかのおばあさんは、ちょっと首をかたむけて、
「なるひともいれば、ならないひともいる。
 でも、一年に一度、こんやだけ。
 おおかみの顔になりたい?」
 と、きいてきた

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もうひとつの物語の世界18 そらと うみ 2/3

もうひとつの物語の世界18 そらと うみ 2/3

そらと うみ 2/3

 洞窟(どうくつ)をぬけると、草原(くさはら)のむこうに湖がひろがっていた。
 山々の雑木林が、まわりをとりかこんでいる。
 祭りをたのしむひとたちは、もうはやくからきて楽しんでいる。
 みんなおもいおもいに草原(くさはら)にすわり込んで、ワイワイガヤガヤにぎやかにお酒をのんでいる。
 笛(ふえ)と小太鼓(こだいこ)にあわせ、輪になっておどっているひとたちもいる。
 うみが

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もうひとつの物語の世界18, そらとうみ 1/3

もうひとつの物語の世界18, そらとうみ 1/3

そらと うみ 1/3

 海岸線のアスファルト道路がへびのように曲がりくねり、岬の先までのびている。
 夏の青空が広がり、岬のがけが、道路のすぐうしろまでせまっていた。
 そのほんの少しひらけた道沿いに、
 ぽつんと、古びたお寺がたっていた。
 だれも住んでいない。
 海風、山風をうけながら、ひっそりとねむっている。
「ついたぞ。」
 パパの声で、子どもたちが車から降りてき、おもいきり伸びをした。

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もうひとつの物語の世界17,のどか村の甚平さん3/3

もうひとつの物語の世界17,のどか村の甚平さん3/3

のどか村の甚平さん3/3

 次の日、甚平さんは、夢の続きをみるように、昨日の夜のことをおもいだしていました。
―のどか村は、山の生き物たちの村なんだ。
 甚平さんは、自分が場違いな村に迷いこんだ気がしてしかたありません。
 これからどうなるのか、自分でもわからず、ぼんやり考えこんでいると、村長とおどろん子が、めずらしくそろってやってきました。
 甚平さんは、慌てて起き上がると、二人を迎え入れまし

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もうひとつの物語の世界17,のどか村の甚平さん2/3

もうひとつの物語の世界17,のどか村の甚平さん2/3

のどか村の甚平さん2/3

 やがて、ひと山越えると、遠くから祭囃子(まつりばやし)がきこえてきました。山に囲まれた湖のなかに、そこだけポッカリと草原が開け、古い龍神様の社が建っていました。
 その前で村人が祭りを楽しんでいます。笛や太鼓の音にあわせ踊っている人もいます。お酒を酌み交わし、ごちそうをほうばっています。
 ただちょっと、村人の顔と身体つきが、いつもとちがっているのです。
 見ると、服

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もうひとつの物語の世界 17 のどか村の 甚平さん 1/3

もうひとつの物語の世界 17 のどか村の 甚平さん 1/3

のどか村の 甚平さん 1/3

 
 空家だったじっちゃんの古い家に、大上(おおかみ)甚平(じんべい)さんが、引っ越してきました。
「甚平さん、いる?」
 おどろん子が家の中をのぞきこんでいます。
「いるよ。あがっといで。」
 家のおくから、声がとんできます。
 おどろん子は、陽あたりのいい縁側にまわりこむと、いつものように、ちょこんと広い縁側に座りました。
 甚平さんは、座敷机にむかって、書きも

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