白うさぎ 3/5 次の日、きなこは、ちゃんと帰ってきた。 「どうする、ちいちゃんのおばさんにあいにいく?」 三咲は、まだまよっている。ケンはいく気満々、 「茶々…
白うさぎ、2/5 放課後(ほうかご)、三咲(みさき)は、うさぎ小屋のまえに座(すわ)りこんで、じっと見つめていた。 「どうしたの?」 奈美(なみ)がたずねると、 「『ちゃ…
白うさぎ 1/5 三咲(みさき)は四年三組、うさぎ当番。 いつもはにがてな月曜日も、うさぎ当番になってからはまちどおしくて、小学校につくと、まっすぐうさぎ小屋にと…
マリーンと あんこう マリーンとカイトは、もう南のサンゴ礁にいくひつようがなくなった。 用心深く、サメがいなくなったのをたしかめると、これからふたりで暮らす…
マリーンと あんこう 4/5 海の中は、どこまでもはてしなくつづいていた。 深くくぼんだ溝もあれば、小高い山のように起伏した岩礁もある。 どこまでいっても、そ…
マリーンと あんこう マリーンは、もうひとつ大切なことをきいてみた。 「アンコウさん、あたしの仲間をしらない?」 「おまえの仲間? タコの仲間…
マリーンとあんこう アンコウは、いまいましそうに話しだした。 「いいか、水族館と、海は全く違う世界なのだ。 むかし、お前と同じように、水族館でそだてられたとい…
マリーンと あんこう 身体の半分もある大きな顔。 その口をへの字にまげて、なにを考えているのかわからない。 そばを通っただけで飲み込まれてしまいそうなこわい…
ぼくは タコのカイトや まけへんぞ! 大海(おおうみ)水族館の大水槽(だいすいそう)で、ジンベエザメの甚平(じんべい)さんはゆうゆうとおよいでいた。 「甚平さー…
宙船・そらふね 神さまがおりたった高天原(たかまがはら)の、 その岸辺のほとり。 ふたりの子どもがあるいていた。 おとこのこのなまえは「なぎ」。 おんなのこ…
そらと うみ 3/3 ふたりは、壮太(そうた)といっしょに、あっちによばれ、こっちによばれ、ふしぎな話をいっぱいきかされた。 そらは、浴衣(ゆかた)をきた、しかのお…
そらと うみ 2/3 洞窟(どうくつ)をぬけると、草原(くさはら)のむこうに湖がひろがっていた。 山々の雑木林が、まわりをとりかこんでいる。 祭りをたのしむひとたち…
そらと うみ 1/3 海岸線のアスファルト道路がへびのように曲がりくねり、岬の先までのびている。 夏の青空が広がり、岬のがけが、道路のすぐうしろまでせまっていた…
のどか村の甚平さん3/3 次の日、甚平さんは、夢の続きをみるように、昨日の夜のことをおもいだしていました。 ―のどか村は、山の生き物たちの村なんだ。 甚平さんは…
のどか村の甚平さん2/3 やがて、ひと山越えると、遠くから祭囃子(まつりばやし)がきこえてきました。山に囲まれた湖のなかに、そこだけポッカリと草原が開け、古い龍神…
のどか村の 甚平さん 1/3 空家だったじっちゃんの古い家に、大上(おおかみ)甚平(じんべい)さんが、引っ越してきました。 「甚平さん、いる?」 おどろん子が家の…
穴木 好生
2024年5月18日 09:39
白うさぎ 3/5 次の日、きなこは、ちゃんと帰ってきた。「どうする、ちいちゃんのおばさんにあいにいく?」 三咲は、まだまよっている。ケンはいく気満々、「茶々がどうなったかしりたいやろ? だって、白うさぎと一緒にあいにきたんやで。」 奈美と光司はおたがい顔をみあわせていた。「いく?」「いったほうがすっきりするよね。」「じゃあ、おばさんにあって聞いてみる。」 三咲のひとことでき
2024年5月11日 11:33
白うさぎ、2/5 放課後(ほうかご)、三咲(みさき)は、うさぎ小屋のまえに座(すわ)りこんで、じっと見つめていた。「どうしたの?」 奈美(なみ)がたずねると、「『ちゃちゃ』かどうか、たしかめてるの。」「『ちゃちゃ』って?」「ちいちゃんが飼(か)ってたうさぎ。 ほら、身体が茶色で、頭の後ろに少しだけ白い毛がはえてる。 あたし、ちいちゃんの家にお見舞いにいったとき、うさぎを飼(か)っ
2024年5月5日 10:07
白うさぎ 1/5 三咲(みさき)は四年三組、うさぎ当番。 いつもはにがてな月曜日も、うさぎ当番になってからはまちどおしくて、小学校につくと、まっすぐうさぎ小屋にとんでいった。「おはよう。 きなこ、ふうこ、まる。 みんな、げんき?」 クラスで飼(か)っているうさぎ三匹、もってきたキャベツの葉っぱをほうりこむと、さっそくまるとふうこがかじりだした。「あれっ、きなこがいない?」 巣の中
2024年4月28日 09:36
マリーンと あんこう マリーンとカイトは、もう南のサンゴ礁にいくひつようがなくなった。 用心深く、サメがいなくなったのをたしかめると、これからふたりで暮らす、安全な場所をもとめておよいでいった。 やがて、砂地のなかに砦のようにつきでた岩場で、ふたりですむのにちょうどよい大きさの穴をみつけた。「ここを、僕たちの新しいすみかにしよう。」「ここなら、だいじょうぶね。 穴の中からすべてまわり
2024年4月21日 14:08
マリーンと あんこう 4/5 海の中は、どこまでもはてしなくつづいていた。 深くくぼんだ溝もあれば、小高い山のように起伏した岩礁もある。 どこまでいっても、そのさきにはしらない海があった。 海草におおわれた海の林、ごつごつした岩場,色とりどりのサンゴが木のように枝を広げている。 またその先へ行くと、明るい海にテーブルサンゴがおおいつくし、小魚が楽しそうにむれてあそんでいる。―なんて、
2024年4月14日 15:29
マリーンと あんこう マリーンは、もうひとつ大切なことをきいてみた。 「アンコウさん、あたしの仲間をしらない?」「おまえの仲間? タコの仲間をさがしているのか?」 アンコウは、またじろりと、マリーンをにらんだ。「たぶん、いまなら南のサンゴ礁にあつまっておる。」「ほんとう?」 マリーンは、やっと仲間に会うことができる。 早くおよいでいきたくてしかたなかった。 アン
2024年4月7日 10:27
マリーンとあんこう アンコウは、いまいましそうに話しだした。「いいか、水族館と、海は全く違う世界なのだ。 むかし、お前と同じように、水族館でそだてられたという子魚にあったことがある。 子魚たちは、卵からかえって、海で暮らしていける大きさになると、何千、何万という仲間とともに、海に放されたといっておった。」「知ってる。」 マリーンは何度も海にかえすところをみていた。「水族館の飼育員さ
2024年3月31日 16:00
マリーンと あんこう 身体の半分もある大きな顔。 その口をへの字にまげて、なにを考えているのかわからない。 そばを通っただけで飲み込まれてしまいそうなこわい顔。 アンコウは、海の底から、じっと上を泳ぐ魚をにらんでいた。 そのアンコウが、頭の真ん中から、細長くつき出た竿(さお)を振っている。 しかし、アンコウのその竿の先には、かんじんの小魚をおびきよせるた めの疑似(ぎじ)餌(え)が
2024年3月24日 10:22
ぼくは タコのカイトや まけへんぞ! 大海(おおうみ)水族館の大水槽(だいすいそう)で、ジンベエザメの甚平(じんべい)さんはゆうゆうとおよいでいた。「甚平さーん。」「おう、カイト、のりたいんか?」 甚平さんは、ぼくがせがむと、いつもぼくを背中にのせて泳ぎながら、大好きな海の話しをきかせてくれる。 ぼくは、この大海水族館でうまれたタコや。 そやから、いちども海にいったことがないん
2024年3月17日 10:31
宙船・そらふね 神さまがおりたった高天原(たかまがはら)の、 その岸辺のほとり。 ふたりの子どもがあるいていた。 おとこのこのなまえは「なぎ」。 おんなのこのなまえは「なみ」。 夜明けまえの、なみうちぎわ、 風は、まだねむっている、 淡い光だけが、水面(みなも)をてらしていた。「おにいちゃん、あれは?」 なみが、ゆびさした。 なぎは、じっとみる。 金色にかがやき、 遠
2024年3月11日 10:31
そらと うみ 3/3 ふたりは、壮太(そうた)といっしょに、あっちによばれ、こっちによばれ、ふしぎな話をいっぱいきかされた。 そらは、浴衣(ゆかた)をきた、しかのおばあさんにきいた。「ぼくたちも、おおかみの顔になるの?」 しかのおばあさんは、ちょっと首をかたむけて、「なるひともいれば、ならないひともいる。 でも、一年に一度、こんやだけ。 おおかみの顔になりたい?」 と、きいてきた
2024年3月4日 09:48
そらと うみ 2/3 洞窟(どうくつ)をぬけると、草原(くさはら)のむこうに湖がひろがっていた。 山々の雑木林が、まわりをとりかこんでいる。 祭りをたのしむひとたちは、もうはやくからきて楽しんでいる。 みんなおもいおもいに草原(くさはら)にすわり込んで、ワイワイガヤガヤにぎやかにお酒をのんでいる。 笛(ふえ)と小太鼓(こだいこ)にあわせ、輪になっておどっているひとたちもいる。 うみが
2024年2月26日 10:10
そらと うみ 1/3 海岸線のアスファルト道路がへびのように曲がりくねり、岬の先までのびている。 夏の青空が広がり、岬のがけが、道路のすぐうしろまでせまっていた。 そのほんの少しひらけた道沿いに、 ぽつんと、古びたお寺がたっていた。 だれも住んでいない。 海風、山風をうけながら、ひっそりとねむっている。「ついたぞ。」 パパの声で、子どもたちが車から降りてき、おもいきり伸びをした。
2024年2月19日 11:29
のどか村の甚平さん3/3 次の日、甚平さんは、夢の続きをみるように、昨日の夜のことをおもいだしていました。―のどか村は、山の生き物たちの村なんだ。 甚平さんは、自分が場違いな村に迷いこんだ気がしてしかたありません。 これからどうなるのか、自分でもわからず、ぼんやり考えこんでいると、村長とおどろん子が、めずらしくそろってやってきました。 甚平さんは、慌てて起き上がると、二人を迎え入れまし
2024年2月12日 12:09
のどか村の甚平さん2/3 やがて、ひと山越えると、遠くから祭囃子(まつりばやし)がきこえてきました。山に囲まれた湖のなかに、そこだけポッカリと草原が開け、古い龍神様の社が建っていました。 その前で村人が祭りを楽しんでいます。笛や太鼓の音にあわせ踊っている人もいます。お酒を酌み交わし、ごちそうをほうばっています。 ただちょっと、村人の顔と身体つきが、いつもとちがっているのです。 見ると、服
2024年2月6日 16:26
のどか村の 甚平さん 1/3 空家だったじっちゃんの古い家に、大上(おおかみ)甚平(じんべい)さんが、引っ越してきました。「甚平さん、いる?」 おどろん子が家の中をのぞきこんでいます。「いるよ。あがっといで。」 家のおくから、声がとんできます。 おどろん子は、陽あたりのいい縁側にまわりこむと、いつものように、ちょこんと広い縁側に座りました。 甚平さんは、座敷机にむかって、書きも